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「神の恩寵」としての妊娠 ~赤ちゃんは神様からの授かり物~

【一生懸命に頑張っているのに】

不妊症患者の人たちは、不妊治療を散々受けた挙句に、「一生懸命に頑張っているのに、どうして妊娠できないの?」という疑問を持ってしまうのだが、今回は「一生懸命に頑張っても、一生懸命に頑張るがゆえに、逆に妊娠できなくなる」という話をします。

【赤ちゃんは作るものなのか、授かるものなのか?】

昔の日本人たちは子作りに際して、「赤ちゃんを作る」という考えと、「赤ちゃんを授かる」という考えを持っていた。

「赤ちゃんを作る」という考えは、男と女がセックスすれば、当然に妊娠できるという考え方である。

ほとんどの夫婦たちはこの考えに立脚している。

不妊症患者たちは、通常のセックスでは妊娠できないから、不妊治療を受けて、赤ちゃんを作ろうという考え方に立脚している。

これに対して、「赤ちゃんを授かる」という考え方は、深い宗教心に支えられて、「赤ちゃんは神様からの授かり物」だという考えである。

昭和憲法体制下では、平気で「自分は無宗教」と名乗ってくる人たちが大勢いるので、こういう赤ちゃんは神様からの授かり物という考え方は、古臭く、見捨てられてしまった考え方になっている。

【自律神経から見た妊娠】

ところが、自律神経のメカニズムから見た場合、「赤ちゃんを作る」という考え方よりも、「赤ちゃんを授かる」という考え方の方が、遥かに妊娠をもたらしてしまう可能性が高いのだ。

「赤ちゃんを作ろう」と思いながらセックスすると、自律神経は交感神経にシフトするので、頭は興奮し、体は緊張し、体温は低下し、受精卵は子宮に着床しようとしなくなってしまうのだ。

不妊症の夫婦が、赤ちゃんを作ろうと、一生懸命にセックスするのに、赤ちゃんを妊娠できないのは、こういう自律神経のメカニズムがあるからなのだ。

不妊症の夫婦が、通常のセックスで妊娠できないからといって、不妊治療を受けると、自律神経はより交感神経にシフトしてしまうので、いくら不妊治療をやろううとも、妊娠できなくなってしまうのだ。

通常、簡単に妊娠してしまった夫婦でも、赤ちゃんを作ろうと、しゃかりきになって妊娠させようとした夫婦ってのは、余りいないだろう。

それよりも、寧ろ、夫婦で気楽にセックスして、赤ちゃんができてしまったというのが、ほとんどではないだろうか?

妊娠したいのなら、赤ちゃんを作ろうと思うよりも、赤ちゃんは神様からの授かり物という考えに立脚したほうが、妊娠しやすいのだ。

この考え方を持つと、自律神経は副交感神経にシフトするので、頭は冷静になり、体はリラックスでき、体温が上昇するので、受精卵が子宮に着床しやすくなるのだ。

ところが、現代人たちは、いとも簡単に妊娠できる、この考え方を捨て、妊娠の確率の低い、赤ちゃんを作ろうと考えに固執してしまっているのだ。

実は、これには現代人の「労働観」というものが大きく作用しているのだ。

【近代以前の労働観】

近代以前の人間たちは、とかく働かなかった。

というのも、労働に従事するのは、奴隷であり、庶民であり、王侯貴族たちは労働しないものだという考え方を持っていたからだ。

王侯貴族が働かないものだから、庶民や奴隷たちも真剣には働かなかった。古代ローマ帝国の庶民たちの労働時間は、午前中だけであり、午後は大浴場に行って汗を流したり、読書をしたりと、優雅な1日を過ごしていたのだ。

奴隷たちも、仕事には対してすぐ手抜きをし、目を離せば脱走してしまうのだった。

ヨーロッパにキリスト教が広まると、もっとひどい状況になった。仕事いうものは、仕事に問題があれば改善策を施して、業績をアップさせていくものだが、キリスト教徒たちは仕事で何か問題があると、教会の神父の所にいって懺悔するだけで、改善策を施そうとしなくなってしまったのだ。

古代ローマではあれだけ燦然と光り輝いた地中海文明が、キリスト教の布教と共にピタリと消えてしまったのだ。

我々は学校でヨーロッパ中心の世界史を習ってしまい、さぞかしヨーロッパが昔から繁栄していたように思われているが、ヨーロッパ人たちがキリスト教を信仰して以来、ヨーロッパは貧乏であり続けたのだった。ヨーロッパよりもイスラム諸国やインドや中国の方が遥かに豊かだったのだ。

ヨーロッパが豊かになり始めたのは、イギリスが清朝中国にアヘン戦争で勝利して以来からなのだ。

【啓蒙思想が作り変えた労働観】

ヨーロッパ諸国が豊かになり始めたのは、フリーメーソンたちが啓蒙思想によって、反キリスト教運動を展開して、キリスト教の影響を脱したからなのだ。

フリーメーソンの登場によって、ヨーロッパ人たちの労働観が一変してしまったのだ。

ジョン・ロックは『市民政府論』において、私有財産の絶対性の根拠を「労働」に置いたし、アダム・スミスは『国富論』において「労働」の協業と分業による富の増大を説いて、労働に対して、理論的正当性を与えたのだった。

イギリスがヨーロッパの一小国から覇権を獲得できたのも、これらの啓蒙思想家たちの功績に負う所が多いのだ。

フリーメーソン運動はヨーロッパ各地に飛び火して、フランスではフランス革命を引き起こしたし、ドイツではドイツ統一へ主導的な役割を果たしたのだった。アメリカではアメリカ合衆国を建国させるという偉業をも成し遂げたのだった。

啓蒙思想によって、労働に積極的な位置づけがされると、ヨーロッパ人たちは、それまでの受動的な態度から能動的な態度へと変身して、人間の力だけで物事の問題を解決していこうという考え方に変わっていったのだ。

【日本での労働観の転換】

日本でも近代以前には人々が働かなかったという点では、ヨーロッパと大して変わりなかった。

日本では仏教が信仰されたので、僧侶たちは出家すれば、一切の労働をしなかったのだ。そのため、日本では世俗の人たちが僧侶たちの生活費や宗教活動費を負担せざるをえなく、日本はヨーロッパよりも遥かに貧乏であったのだ。

江戸時代がもっとも仏教が深く浸透した時代なのだが、その江戸時代に「復古神道」が起こり、本居宣長はこの世のすべては「神のお計らい」であると看做し、人間は神の摂理に服従するべきことを説き、それをうけて大国隆正が我々が神の前ですべきことは「労働」であると説いて、労働に積極的な意味を与えたのだ。

明治維新の廃仏毀釈後、日本は爆発的な発展を見せるのだが、それは労働を否定する仏教の影響を脱したからなのだ。

明治維新は「富国強兵」「殖産興業」「文明開化」をスローガンに掲げたが、これらはすべて復古神道家たちが作った用語なのだ。

現代の日本人は勤勉にして勤労だが、近代以前の日本人はそうではなかったのだ。

【絶対自力と絶対他力】

実をいうと、労働を肯定する思想は、労働を否定する思想から生まれるのだ。

だが一旦労働が肯定されると、日本だろうが、アメリカだろうが、ヨーロッパだろうが、問題があれば、人間の力で解決していこうという考え方してしまうのだ。

不妊治療もこの能動型思想の延長なのだ。

近代人は不妊症に苦しんでいるのなら、人間の力で、正確には医者の力でなのだが、不妊症を克服してしまおうという考え方を普通に持ってしまう。

しかし、この考え方は、不妊治療では圧倒的に失敗しているのである。不妊治療を行う医者も積極的だし、不妊症患者たちも積極的なのになぜか失敗するのだ。それなのになんとかして、赤ちゃんを作ろうと必死になっているのだ。

能動型思想は、どうやら人間を増上慢にさせてしまうのだ。

この世には、「絶対自力」と「絶対他力」という二つの大きな力がある。

絶対自力とは、人間の力でなんとか処理して生きていこうという考え方だが、絶対他力は神様に任して生きていこうという考え方だ。

この絶対自力と絶対他力は相反する考え方だが、この矛盾した考えは人間が本来的に持っているものなのだ。

神様に任せる所は神様に任せるべきだが、人間で処理できるものは、人間の力で処理していくべきなのだ。

人間の力で処理できるからといって、神の奇跡を排除してはならないし、神の奇跡に期待するからといって、人間の力を排除してはならないだろう。

絶対自力だけでは、人間はおかしくなるし、かといって浄土真宗のように絶対他力だけを説いたなら、これも異常であろう。

絶対自力で突き進んでも、人間の力ではどうしようもないものに対しては、絶対他力に任せるべきだし、絶対他力に委ねたとしても、人間の力で処理すべきものは、人間の力で処理すべきだろう。

「絶対自力即絶対他力」だし、「絶対他力即絶対自力」なのだ。

昔の人たちは、「人事を尽くして天命を待つ」と言ったものだが、「天命を受ける者は人事を尽くす」ことだろう。

【赤ちゃんは神様からの授かり物】

現代の我々が忘れてしまったのは、まさにこれなのだ。

不妊治療を一生懸命にやって妊娠できなかったら、それ以上、不妊治療をしゃかりきになって治療しようとするのではなく、神様に委ねて、神様のお計らいに期待するということを完全に忘れてしまっているのだ。

無宗教を名乗る人たちは、いずれは人間を神様扱いにするのである。

不妊症患者たちなら、不妊治療を行っている医者が神様なのだろう。

神様は全知全能かもしれないが、医者は全知全能ではないのだ。知識も能力も有限である医者に、すべてを任してしまうというのは、異常きわまりない行為なのだ。

確かに人間の積極的な力の行使によって、文明は発展してきた。しかし、人間の力だけを信じきれば、人間は傲慢にならざるをえないのだ。そこには神様の奇跡が絶対に働かない死の境地なのだ。

人間の力で赤ちゃんが授からないのなら、その人間の力の行使をやめ、神様に我が身を委ねることこそ必要なのではないか?

そういうふうに神様の前で謙虚になった時、赤ちゃんを授かることだってありうるのだ。

我々が忘れてしまったのは、「神の恩寵」としての妊娠ということなのである。「神の恩寵」を忘れてしまったがゆえに、不妊治療という地獄のような苦しみを味わう羽目に陥っているのだ。

人間の力で「赤ちゃんを作ろう」としているからこそ、逆に赤ちゃんができなくなっているのだ。

自分の力でよくあろうとする努力を捨て去り、神にすべてを委ねることによって、逆に新たなる命を見出すことができるのだ。

不妊治療を何度受けても妊娠できなかったら、是非とも「赤ちゃんは神様の授かり物」なのだという考え方を持っていただきたい。

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