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子宮損傷者たちを救済するために必要な「体外受精型代理出産」

●対戦競技と採点競技

昨日は呆然ですよ。

鈴木桂治選手が、男子柔道100kg級でまさかの初戦敗退。

しかも、技らしい技を繰り出せず、これは事実上の秒殺って奴ですよ。

鈴木桂治選手は、試合前に「完璧な出来」と自負していたがゆえに、この完敗は本人も呆然自失だった。

それに対して、体操の内村航平選手は、鞍馬で失敗したのに、その後、盛り返して、なんと準優勝で銀メダル獲得!

内村航平選手、準優勝おめでとう!

俺は昨日、この2つの競技の結果のために、「対戦競技」と「採点競技」の違いについて考え込んでしまった。

対戦競技の場合、対戦者がいるので、選手本人がいくら試合前に練習を積み重ねても、自分の出来が完璧だとは決して思ってはいけないのだ。試合で対戦者がどうのような手を繰り出してくるかは、試合で戦ってみなければ解らないのだ。

この点が、今回、鈴木桂治選手に抜けていたのだ。

一方、採点競技の場合、自分の演技を審判員に採点してもらうので、試合前に練習を積み重ねても、試合ではそれ以上のものが出来るわけがないので、冷静沈着に演技を行い、たとえ試合中にミスを犯しても、気持ちを切り替えて、練習通りにやればいいのだ。そうすればメダルを獲得することはできるのだ。

それゆえ、メダルを獲得したとしても、練習通りに出来たという、達成感の方が嬉しく、今回の内村航平選手のような飄々とした感情表現になるしかないのだ。

対戦競技は自分がどんなに強くとも、自分が完璧と思えば負けるし、採点競技は自分がどんなに巧くても、練習において実力を上げていかなかったら負けるのだ。

スポーツは本当に学ぶべきことがたくさんあるね。

●代理出産の対象者

さて、今回は「体外受精型代理出産」についてである。

日本産婦人科学会が否定してきた「体外受精型代理出産」は、実は子宮に問題がある不妊症の女性にとっては必要不可欠な制度なのである。

不妊症の女性たちにとっては、不妊治療の最後の手段と思われているが、代理出産はすべての不妊症の女性たちのために行われるものではなくて、実はごく一握りの限定された不妊症の女性たちのためにだけ必要な制度なのである。

体外受精型代理出産の対象者は、次の条件を満たさなければならなないのだ。

①夫の精子が正常でなんら問題がないこと。

②妻が事故や病気で子宮を損傷して、排卵しても妊娠が不可能になってしまった女性であること。

つまり不妊症の女性の中で、卵巣から卵子は排出されても、事故や病気で子宮が損傷していて、受精卵が子宮に着床できない女性だけなのである。

俺はこういう女性を「子宮損傷者」といっている。

事故で子宮を失うというのは解るが、病気で子宮が損傷するというのは、子宮筋腫や子宮癌で子宮を切除してしまったり、子宮筋腫や子宮癌のために子宮内膜が厚くならず、受精卵が子宮に着床できない状態に置かれているのだ。

こういう女性たちにだけのみ、体外受精型代理出産が必要となるのである。

●体外受精型代理出産の成功率

不妊治療を受け、最後の手段として代理出産を選択しようと考えている女性たちにはショックかもしれないが、代理出産の対象者は「子宮損傷者」だけなのである。

子宮損傷者たちは、子宮が駄目になったからこそ、妊娠ができないのである。そういう女性たちに救済手段を施すことは、倫理的な態度といえるのだ。

しかし、子宮が損傷していないにも拘わらず、不妊治療が失敗し続けているからという理由だけで、代理出産を選択するということは、本人に卵巣と子宮がある以上、不妊治療で不妊症の障害となっているものを取り除けばいいのであって、それを怠って、代理出産を選択するということは、非倫理的な態度といえるのだ。

代理出産がなぜこれほどまでに揉めに揉めてしまったかというと、不妊症患者たちがまともに不妊治療を行わないで、安易に代理出産を望んだり、また選択してしまったということにも、その原因があるのだ。

いくら不妊症に悩んでいるからと言って、代理出産に異常な望みを抱くべきではないのだ。まずは、自分がやるべきことをやるべきなのだ。

では、なぜ通常の不妊症の女性たちまで巻き込んで、これほどまで代理出産への関心が高まっているのかといえば、体外受精型代理出産の成功率の高さに原因があるのだ。

体外受精型代理出産の場合、成功率はなんと「70%」である。

通常の体外受精では、成功率は平均「22%」であり、最高でも「25%」である。それに比べれば、体外受精型代理出産の成功率は異様な数値なのである。

それほど不妊症の女性たちの子宮は衰えているのであり、受精卵を健康な女性の子宮に移植すれば、「70%」という高い確率で妊娠できるのだ。

だからこそ、不妊治療で失敗し続ける不妊症の女性たちが、自分が本来的には受ける必要のない代理出産に異常なまでの関心を持つのである。

●代理母の条件

代理母は女性であるなら誰でもいいというわけではない。

代理母になるためには、以下の条件を満たすべきであろう。

①代理母は既婚女性であり、出産経験があり、夫婦が円満で、健全な育児を営んでいること。

②子宮の機能が羨ましいほどに活発であること。

③代理母になることに対して、自発的な自分の自由な意思表示をし、その代理出産に夫の同意を得ていること。

④性病や感染病に罹っておらず、健康的な女性であること。

⑤代理出産後、最低でも生後6ヵ月間は赤ちゃんを母乳で育てられること。

これは離乳食病を防ぐためである。

●代理出産契約の仕方

代理出産は、代理出産を行う前に、「代理出産契約」を締結して、未然にトラブルを防ぐべきだろう。

代理母にとっては、他人の子といえども、自分が妊娠している以上、どう心変わりをしてくるか解らないからだ。

代理出産契約の内容は口約束にすべきではなく、すべて文書化されるべきであろう。

①代理出産依頼人の夫婦、代理母、代理母の夫、治療を行う医療チームのすべての医師、代理出産が本当に必要であるかを審査する医師、これらすべての名前と現住所を記すこと。

②代理母に対する謝礼金の金額。

③代理出産で生まれた赤ちゃんの引き渡し日時。

④代理出産依頼人の女性の、代理出産が必要であるという正当な医学的根拠。

最低でもこれらのことを盛り込んだ上で、代理出産契約書を登記所で登記しておくべきだろう。

登記所で登記させるようにすれば、代理母が心変わりしても、その心変わりは無効であると主張できるからだ。

●代理出産で生まれた子供に対する権利の保障

代理出産は、あくまでも不妊症の夫婦の都合で行われるので、代理出産で生まれた子供に対する権利をどう保障していくかが問題となる。

最低でも以下の権利は保障されて然るべきであろう。

①自分は代理出産で生まれたと説明される権利

②代理母の現住所をいつでも知ることができ、いつでも会いにいくことができる権利

③代理出産が本当に必要だったか、当時の医療情報を知ることができる権利。

こういう権利を子供に保障しておけば、代理出産で生まれた子供も、精神的に歪んだりはしないことだろう。

また、将来生まれてくる子供の権利を保障しておけば、医者たちは無暗に代理出産を行わなくなることだろう。即ち、違法な代理出産を防ぐことができるようになるのだ。

●代理母制度は国民投票できめるべき

現在、日本では体外受精型代理出産は認められていないが、このような法的枠組みを整えていけば、体外受精型代理出産は合法的且つ倫理的な治療法として、法的に保障されることであろう。

日本産婦人科学会が、体外受精型代理出産を否定し続けてきたために、向井亜紀のように、卵子を排出できるのに、子宮がないために妊娠できない女性たちを放置して、絶望の淵へと追いやっているのだ。

向井亜紀が突き付けた問題は、実は日本産婦人科学会の矛盾点を突いたのである。

代理母問題がこれほどまでに揉めに揉めたのは、この代理母問題は医者だけで決めるべきことではないからだ。

人間がどのように生まれ、そして生まれてきた人間を、どのようにして日本国民として受け入れるということは、医者たちだけで決めるべきことではなく、政治家が主導権を発揮して、法律家や学者やジャーナリスト、一般庶民、そして何より不妊症の夫婦の意見を聞いて、議論を決着していくべきなのである。

代理母制度が、非配偶者間人工授精のように成し崩し的に認められてしまえば、非配偶者間人工授精の時と同じように、不妊症とは一切関係ない人々によって悪用される可能性が高いのだ。

事実、現在、日本で非合法な形で代理出産を行っている医者や不妊症の夫婦は、やはり体外受精型代理出産の条件を満たしていない条件下で行われているのだ。

こういう非合法且つ非倫理的な代理出産が闇治療で行われ続けてしまえば、いつの日か、代理出産が法的に完全に禁止されるようになってしまい、本当に代理出産を必要としている不妊症の夫婦が、代理出産を行えなくなってしまうのだ。

不妊症で苦しむ不妊症患者たちが、いくら代理出産を望んだとしても、「代理母制度は悪用される可能が高い」ということを決して忘れるべきではないだろう。

体外受精型代理出産は、非配偶者間人工授精と同じ道を辿る可能性があるのだ。

代理出産を本当に望む不妊症の夫婦は団結して、法的枠組みを整えるよう法務省に請願すべきだろうし、政治家たちは代理出産を本当に必要とする不妊症の夫婦たちの意をくんで、法律案を可決していくべきであろう。

そして、できれば、こういう日本国民にとって重大な影響を及ぼす問題は、国民投票で国民の賛否を問うべきであろう。

そうすれば、代理出産で生まれた子供たちも、差別されることなく、日本国民として生存することができるであろう。

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