第十一節 お腹の中の赤ちゃんの骨を強くしたければ、カルシウムとマグネシウムのコンビを忘れないことだ
●日本人はなぜカシウム不足になるのか?
日本人はカルシウムの必要摂取量を満たしたことがない。当然、妊婦たちもカルシウムの必要摂取量を満たしていないのだから、そのため生まれてくる赤ちゃんもカルシム不足の状態で生まれてきてしまう。それどころか、出産を終えた母親が、骨粗鬆状態に陥ってしまい、二人目を妊娠することが困難になってしまうのだ。
なぜ、日本人がカルシウム不足になるかといえば、日本列島が主に火山灰質であるために、土壌に含まれているカルシウム分が少なく、それゆえに、そこで取れる農作物にカルシウムが少なく、どうしても、カルシム不足に陥ってしまうのだ。農作物は地球上どこでも同じだろうと思っている人は、火山のあるイタリアの農作物と、火山のないドイツの農作物を食べ比べてみればいい。火山があるとないとでは、農作物の成分量がまるっきり変わってしまうのだ。
日本人のカルシウム不足を救ったのは、明治維新後から飲まれるようになった牛乳なのだが、この牛乳を分解できる酵素は誰でも12歳までしかなく、しかも、牛乳を飲んでこなかった日本人には、この酵素がない人たちが大勢いるのだ。それゆえ、カルシウム不足だからといって、誰に対しても牛乳を飲ますのではなく、酵素のある人は、牛乳は12歳まで、それ以降はヨーグルトに切り替えなければならないのだ。酵素のない人には、牛乳を飲まさなくてもいいのだ。12歳をすぎても牛乳を飲ましていると、それを処理できないために、体が血中にカルシウムがありすぎると錯覚して、カルシウムを強制的に体外に排出してしまうのだ。牛乳を飲んでいる人に限って骨折するのは、このためなのだ。
妊娠したらといって牛乳を飲んでも、必ずしもカルシウムを増やすことに貢献しないのだ。カルシウムには天敵が存在していて、それが「体脂肪」だ。体に脂肪が多目にあると、カルシウムは吸収されなくなってしまうのだ。女性はただでさえ脂肪が多いし、その上に脂肪を大量に含んでいる牛乳を飲んでしまえば、カルシウムは吸収されなくなってしまうのだ。
それともう一つ、日本人がカルシウム不足になる原因に、「リン」の多い食事をしているということがあげられる。カルシウムはリンと共同して骨を形成していくのだが、このカルシウムとリンの割合は、2:1にならなければならないのだが、リンを多目に摂取してしまうと、リンに対してカルシウムが不足するという事態になってしまうのだ。通常の食事をしていれば、リンは足りているのだ。しかし、コンビニの弁当だとか、清涼飲料水だとか、スナック菓子とか、ファストフードやファミリーレストランの食事には、保存料としてリンが使用されているために、これらの食べ物を食べると、リンが過剰になり、リンとカアルシウムのバランスが崩れ、カルシウム不足に陥ってしまうのだ。
●カルシウムを多く含んでいる食品
だから、妊婦はカルシウムが必要だからといって牛乳を飲むべきではないし、リンを含んでいる外食を可能な限り避けることだ。もしも、牛乳でカルシウムを補給したいなら、自宅で牛乳をヨーグルトに変えればいいのだ。そのほんのちょっとの手間で牛乳の持つ危険性を防げるのだ。妊娠中は可能な限り手作りの食事に拘って食べていくことだ。食べ物というのは、すぐに腐り始めるものであり、なかなか腐らないということは、誰かがインチキをしているということなのだ。
カルシウムを大量に含んでいる食品は何も牛乳だけではないのだ。カルシウムを多く含んでいる食品は、「エンドウ豆」「ゴマ」「ヒジキ」「油揚げ」「高野豆腐」「切干大根」「メザシ」「シラス」「桜エビ」「ワカサギ」などである。日本に昔からある食品であり、これでちゃんとカルシムを摂取できるのだ。なぜ、和食ではご飯に「擦りゴマ」をかけるのか、なぜ味噌汁に油揚げを使うのか、なぜ豆腐や大根を干したりするのか、これらはすべてカルシウム分の少ない土壌で暮らす日本人の知恵だったのだ。
魚料理を食べる時も、魚の骨を可能な限り食べてしまうことだ。味噌汁を作る時は煮干しを多目に入れて、そして食事の際に、その煮干しを食べてしまうことだ。サンマの骨は柔らかいから、サンマを焼いたら、ちゃんと食べられるのだ。シャケも鍋で煮込んだら、骨まで食べられる柔らかさになるのだ。それ以外にも、魚を下ろした時は、その余った骨を捨てないで、油で揚げてしまい、その魚の骨をオヤツ代わりにして食べればいいのだ。
スープを作る際も、骨つきの肉を買ってきて、それをニンニクと生姜と長ネギを入れて煮込んで、カルシウムが濃厚に入っているスープを作るべきだろう。これだけイタリア料理やフランス料理が日本人の家庭に普及したというのに、スープの作り方をちゃんとマスターしていないのだ。骨つきの肉からスープを作るというのは、スープ作りの基本中の基本なのだ。
妊娠中に背中の痛みや、腰痛になるような女性は、カルシウム不足が原因である。体内のカルシウムが不足しているために、背中や腰に痛みを発生させて、本人に知らせているのだ。背中の痛みも、腰痛も、湿布をした所で、決して治らないのだ。地道にカルシウムの入った食事をしていくことだ。
●マグネシウムを多く含んでいる食品
カルシウムはリンと共同して赤ちゃんの骨を作っていくのだが、これにマグネシウムがないと骨を形成してくれないのだ。マグネシウムは、カルシウムの天敵である脂肪を燃焼させ、骨の中のカルシウムが正常に維持されるために効果を発揮するのだ。いくらカルシウムを大量に摂取しても、ちゃんとマグネシウムを摂取していないと、カルシウムが血管内に付着してしまい、心筋梗塞を起こしてしまうのだ。カルシウムを大量に摂取している妊婦に不整脈の女性が多いのは、マグネシウム不足になっているからである。
マグネシウムを多く含んでいる食品は、「いちじく」「アーモンド」「ナッツ」「バナナ」「大豆」「ゴマ」「昆布」「海苔」「ヒジキ」「ワカメ」「桜エビ」などである。「いちじく」には大量にマグネシウムを含まれおり、安産の守護神である鬼子母神の好物が「いちじく」というのには、ちゃんとした理由があるのだ。「リンゴ人参ジュース」にバナナを含ませているのは、便秘を解消するだけでなく、マグネシウムを補給するためでもあるのだ。
妊娠中にマタニティーブルーになったりするが、これはマグネシウムが不足したからなのである。マグネシウムは鬱病を予防する効果があるので、マグネシウムが不足すると、鬱状態になってしまうのだ。妊娠中は赤ちゃんのためにマグネシムが大量に使用されてしまうので、体内にマグネシウムの少ない女性は、どうしてもマグネシウム不足に陥ってしまうのだ。
マグネシウムの天敵は「アルコール」で、妊娠前に飲酒歴のある女性は、マグネシウム不足に陥っていると思っていた方がいい。こういう女性は料理を作る際は、可能な限り料理酒を使用しないことだ。マグネシウム不足をこれ以上進行させない努力をしておくべきだろう。料理酒を使用しなくても、ちゃんと美味しい料理は作れるのだ。
赤ちゃんの骨を作るためにカルシウムのことには気にしても、なかなかマグネシムのことは気にしない傾向がある。カルシウムはマグネシウムがあるからこそ、骨を維持できるのである。いくらカルシウムを大量に取っても、マグネシウムが不足すると、出産後に虫歯で悩まされることになるのだ。子供を産んだ母親に、虫歯になったりする女性が多いが、これはマグネシウム不足によるものである。マグネシウムが不足すると、歯の中のカルシウムが溶けだして、虫歯になってしまうのだ。
●隠れキャラ「ボロン」
赤ちゃんの骨を丈夫にするためには、「カルシウム」がありさえすればいいのではないのだ。「カルシウム」と「リン」のバランスが取れていなければならないし、骨の維持のためには「マグネシウム」だって必要なのだ。そして骨を成長させ、維持するには、「ビタミンD」だって必要なのだ。ただ、通常の食事でリンの必要量は満たしているし、ビタミンDは日光に当たれば自分の体内で作り出すことができるから、問題にならないだけなのだ。だから、カルシウムばかりに目を囚われて、マグネシウムに目を向けないと、丈夫な骨を作り出せないのだ。
赤ちゃんに丈夫な骨を作ってあげたいなら、もう一つ「ボロン」という栄養素に着目しよう。ボロンという栄養素は、妊婦の骨からカルシウムが流出するのを防いでくれるのだ。特に高齢出産の女性には必要不可欠で、このボロンがないと、自分の骨からカルシウムが流出してしまい、出産後に骨粗鬆症になってしまうのだ。若くても細身の女性は、もともとがカルシウムが少ないので、どうしても赤ちゃんは母親の骨からカルシウムを引っ張ってこようとしてしまうのだ。そのためボロンがなければ、骨折しやすい体になってしまうのだ。
妊娠になって骨粗鬆症になったり、骨折したくないないなら、きちんとボロンという栄養素を摂取しよう。ボロンが入っている食品には、「リンゴ」「ブドウ」「レーズン」などがる。これらはすべて北方で取れる食品で、北方に住む女性たちに骨の太い女性が多数いるのはこのためである。また、高齢出産の率が多いのも、やはり北方に住む女性たちである。ボロンのお蔭で、高齢になっても妊娠や出産が可能になるのだ。
健康や医学を考える時、何か一つのものを取り出して、それによって健康に効果があるというわけにはいかないのだ。人間の体は複雑にできており、様々なものが共同して、人間の健康を形成しているのだ。ココアが健康にいいとか、納豆が健康にいいとか、バナナが健康にいいとか、それによってブームが起こるのだが、確かにそれらは健康に良くても、それはある程度までなのだ。それだけ健康を維持できるわけがないのだ。人間の体はそんな単純には作られていないのだ。
いくら牛乳が赤ちゃんに丈夫な骨を作るためにいいからといって、牛乳ばかり飲んでいたら、今度は牛乳の持つ弊害が現われてくるのだ。それどころか、カルシウムばかり摂取しても、骨は形成されないのだ。人間の健康は、その人がバランスをとっているからこそ、健康を維持できるのである。だから、何か一つだけを取ってを取っていたら、そのバランスを崩してしまうのだ。自分のお腹の中の赤ちゃんに、丈夫な骨を作ってあげたいなら、まず自分が健康のバランスに気づき、うまくバランスを取っていくことなのだ。
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