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笑撃ヒートアップ:『遅ればせながらチャングムブーム』

●いきさつ

 俺はいつも出かける時はバッグの中に文庫本や新書本を入れて置き、電車の中や、待ち合わせの時間の時などに読むようにしている。ハードカバーの本は持ち歩くと重いので、自宅に置いておき、夕食後に読むようにしている。読書はいつも同じ量の本を読めるというものではなく、調子のいい時はそれこそ10冊以上は読んでしまうし、調子の悪い時は1冊すら読めない。でも、平均してみると、1日3冊は読んでいることになる。

 ところが、去年の秋以降、仕事関連の本を多く読まざるを得なくなったために、机の上に常時10冊以上もの本が溜まってしまうようになった。読書スピードを幾ら上げても、読み切れない本が出て来るようになったしまった。そのため、夕食後、食休みをしてから、何がなんでも2時間は読書の時間に充てざるを得ず、集中力を使って読書量を増やして行かねばならぬようになった。

 だが、こういう大事な時に限って、読書の邪魔をする連中が出て来る。その筆頭がうちの母親である。「テレビを見ることが唯一の趣味」と公言して憚らないこの人物は、とにかくテレビを見まくるのだ。朝から晩まで、下手をすると夜中までテレビを見ている。特に俺が「止めて欲しい」と常々言っているのは、夕食後に無目的でダラダラとテレビを見ることなのである。何か視たい番組があるなら、まずは新聞のテレビ欄でそれを確かめてから見ればいいものを、視たい番組がないのに、ガチャガチャとチャンネルを回して、「この番組は詰まらない」「この芸能人は面白くない」と言ってテレビを見るのだ。

 こういうテレビの見方をすると、母親の体から阿呆馬鹿オーラが漂って来て、このオーラを発している本人がまずはバカになり、そのオーラを放っている人物と会話すると、まともに会話が噛み合わず、知的な会話が全くできないことになってしまうのだ。このテレビほど読書の邪魔になるものはないのであって、子供の喚き声とか、隣の家がドタバタしてうるさいとかいうのはそれほど読書の邪魔にならず、読書に集中するためには、なんと言ってもテレビを消してしまうことが最善の策なのだ。

 でも、テレビを消しても、俺が書斎に籠って読書をしていると、テレビをまた付け出すので、なんの効果もないのだ。子供よりもタチが悪いし、かといって、自分の母親であるので、余り強く言うことはできず、こっちの方がストレスが溜まるようになってしまった。そうなると、1日の読書量が減ってしまい、机の上には渦高く本が乗っけられることになり、益々ストレスが溜まるようになってしまった。

●ドラマ紹介

 そこで或る人に相談した所、「テレビを禁止しても、テレビが好きな人はテレビを見てしまうものだ。しかも最近のテレビ番組は質が落ちているから、放っておくと更に下らないテrビ番組を見てしまうよ。こういう時は面白いDVDでも借りて来て、それを見る代わりに、テレビ番組を無目的で見ないようにさせればいい」と教えてくれた。そこで「面白いDVDは何かあるだろうか?」と尋ね回っていた所、そこで出て来た答えが『宮廷女官チャングムの誓い』だったのだ。

 予め言っておくが、我が家では余りDVDを見ない。せいぜいジブリのDVDくらい。そのため世間一般の基準からすると『宮廷女官チャングムの誓い』に出会ったのは物凄く遅いのだが、でもそれでもこのドラマは非常に面白くて、我が家では遅ればせながら≪チャングムブーム≫がやってきたのだ。

 このドラマは韓国では視聴率が最高57%を記録した番組であるが、我が家では視聴率が100%を記録した番組なのだ。要は家族全員で見たってことだ。家族全員が夕食後、居間に集まり、『宮廷女官チャングムの誓い』を見るのだ。この韓国のドラマは日本のドラマと違い、1本の時間が70分間で、しかも、内容が濃いために、ドラマを見ている時は全員が集中して見てしまうのだ。

 最初は主人公のチャングムばかりを見ていたのだが、ドラマを見て行く内に、主人公ではないハン尚宮がキャラの作りやセリフの良さが光っており、これに魅了されてしまった。敵役のチェ尚宮の悪役ぶりも、ここまで悪役ぶりをやってのけてしまうと、逆にこの悪役をも評価したくなってしまった。

 実際のドラマ制作では、このハン尚宮に人気が出て来てしまったために、ドラマの内容を大いに変えてしまい、そのためにドラマが2倍近く伸びてしまうことになった。そのため、ハン尚宮が出ている所まではいいのだが、ハン尚宮が死んでしまうと、緊張感が抜けてしまい、後半以降、多少だらけてしまったのが難点だ。でも、映画製作に携わったことのある俺にとっては、そういうドラマ作りの仕方が手に取るように見えて来て、その点も面白かった。完璧なドラマを作られるより、制作現場の混乱が伝わってくる不完全なドラマの方が面白いものだ。

 このドラマのお蔭で、俺が抱えていたストレスはなくなり、読書に集中することができるようになり、しかも、以前よりも読書量が増えたぐらいだ。「最近のテレビ番組は面白くないな~」といっている既婚女性には、このドラマをお薦めしたい。特に娘がいるのなら、このドラマを娘と一緒に見ると、いい教育になると思う。この『宮廷女官チャングムの誓い』は俺が今までの人生の中で見て来たドラマの中で最も面白いと思えるドラマだ。

●小説紹介

 この『宮廷女官チャングムの誓い』がなんでこんなに面白いかというと、監督のイ・ビョンフォンと脚本家のキム・ヨンヒョンの二人のコンビが素晴らしかったからなのだ。韓国の歴史に実在した人物であるチャングムを見つけ出したのはイ・ビョンフォンなのだが、これに命を吹き込んだのは、キム・ヨンヒョンなのだ。

 日本の脚本家だと、今活躍している人たちは、丁度、フェミニズムが最も強かった時期に教育を受けてしまった人たちなので、脚本家本人が精神的に自立していないので、全然面白くない脚本ばかり作って来るのだ。これに対してキム・ヨンヒョンはフェミニズムに汚染されていないがゆえに、しっかりとした内容の脚本を作ることができたのだ。脚本の場合、その人の文才も確かに必要だが、それ以前に本人が精神的に自立していないと、面白い脚本は作り出せないものなのだ。

 実際のドラマ制作の現場では週に1回、監督や他のスタッフたちと話し合って、そこでドラマのストーリーを決め、それをもとに大急ぎでキム・ヨンヒョンが脚本化して行ったようだ。1回70分であり、しかも週2回の放送だったので、相当な執筆量になったらしく、「速筆の脚本家に無能な脚本家はいない」という格言通り、出来のいい脚本を作っていったのだ。

 このキム・ヨンヒョンが『宮廷女官チャングムの誓い』の脚本を小説化したのが、キム・ヨンヒョン著『大長今』(角川書店)なので、ドラマを見終わった後は、これを読んで再度ドラマを堪能するのも乙なものである。小説家が独りよがりで書いている小説より非常に面白い小説である。少なくとも、俺は去年日本でベストセラーになった『1Q84』よりも遥かに面白い小説だと評価したぐらいだ。

 ドラマの『宮廷女官チャングムの誓い』は人気が出てしまったために、当初のストーリー展開とはかなり内容が違っており、恐らく当初のストーリーを元にして作られたのが、ユ・ミンジュ著『宮廷女官チャングムの誓い』(竹書房)なので、こちらも読んでみるといい。最初の脚本の方がストーリーの辻褄が合っている。これを読んだ上で、監督や脚本家がどのようにストーリーを変えて行ったかを検証してみるのも、面白い想像が出来て良いと思う。

●日本の時代劇には大いに問題があり

 俺がこの『宮廷女官チャングムの誓い』を見終わった後、日本の時代劇の程度の低さを問題視してしまった。韓国の時代劇はこれほど面白いのに、日本の時代劇は本当に詰まらない。人間は勧善懲悪を好むものだが、それを形式的にやられてもなんとも面白くないものなのd。主人公に正義があるからそれでいいのではなく、主人公といえども悲惨な目に遭ったり、悪役もただ単に悪いのではなく、その悪を行う理由が明確にされないと、ただ単に主人公が正義の名のもとに悪役を虐殺している物語になってしまうものなのである。

 そういった点では、『水戸黄門』は本当に詰まらないドラマだ。俺は子供の頃からこのドラマを知っているが、このドラマの基本的なストーリーがイマイチ解らない。水戸黄門は隠居しているのであって、なんの役職についていないし、なんの権限もないのだ。それなのに単なる旅人だというのに、訪問先で悪事を暴いて、その悪役の家に不法侵入して、乱暴狼藉を働いているのである。犯罪を犯しているのは、なんの権限もなく私的な裁きを行っている水戸黄門の方なのである。

 しかも、クライマックスシーンの戦闘シーンは、どう考えても合理的な行動になっていない。水戸黄門御一行が数人で100人近い敵を相手にしても、実際の戦闘では敵は無傷で、水戸黄門御一行の方が全滅するだけなのだ。時代劇を作る前に、基本的な軍事学を学んでからにしろと言いたい。嘘だと思うなら、役者たちに真剣を持たして、実際に戦ってみればいいのだ。自分たちが作っているドラマが如何にインチキなものかが解ることだろう。

 日本のドラマの最高峰はNHKの大河ドラマなのだが、1本あたり45分であり、しかもオープニング曲が長いので、ドラマ自体はもっと短くなる。そのくせ無駄なシーンが多いので、集中力を維持しながら見ていられないのだ。『宮廷女官チャングムの誓い』を見ていた時、このワクワク感は一体なんなんじゃ~と思っていたのだが、『宮廷女官チャングムの誓い』は大河ドラマよりも時間が長いのに、遥かに内容が濃いし、視聴者を飽きさせない工夫が至る所にあって、それに嵌ってしまったのだ。

 時期的に『天地人』との放送に重なった時に見てしまったために、『天地人』の過剰な演出や、無駄なシーンが矢鱈と目についてしまった。『天地人』の製作スタッフたちはもっと原作を大事にして、原作の面白さをきちんと引き出して欲しかった。役者は妻夫木聡と常盤貴子と一流の役者を使っていたので、余りにも勿体なかったような気がする。特に、あのドラマの演出家は演出家としてやってはならない演出を多々やっていて、逆に視聴者の人気を削いでしまったような気がする。演出というものは、それが視聴者にバレないように行うものであって、視聴者が違和感を抱くほど露骨な演出は絶対にやるべきではないのだ。そういう演出を演出家がして来たのなら、監督は絶対に制止すべきなのである。

●監督と脚本家

 この『宮廷女官チャングムの誓い』はドラマ製作は一体どのようにやればいいのかということに関しては非常に参考になるのだ。俺が映画製作に携わっていた時、映画は「監督が男性で脚本家が女性」というのが最高の組み合わせではないかと思うようになった。というのは、脳科学的に見て、映像に拘るのは男性が得意であり、巧い脚本を書いて来るのは女性の方が得意だからだ。男女双方の脳の違いを巧く活用すれば、最高の映画を作ることが出来る訳だ。『宮廷女官チャングムの誓い』は監督が男性のイ・ビョンフォンであり、脚本家が女性のキム・ヨンヒョンということで、最高の組み合わせでドラマを製作して行ったのだ。

 特に監督のイ・ビョンフォンは監督として基本がしっかりと出来ているのだ。素人の人たちにすぐには解らないが、プロの目から見た時、監督しての遣り方が映画の王道を行っているので、ドラマが映画のようになるのである。日本のドラマのように、ドラマをドラマとして作っているのに慣れていると、このドラマの作りを見せられると、非常にいい出来に見えてしまうのだ。

 それと、脚本家のキム・ヨンヒョンも、脚本家としての基本がしっかりと出来ている。脚本家は独りよがりの脚本を書いて来てはならず、監督の意向を充分に反映させつつ、如何にそのキャラ作りをして行くかなのである。脚本家にとって大事なことは、自分を無にするべきであって、下手に自分の意見を出してしまうと、視聴者には受けないものなのである。日本のドラマが不調に陥って行ったのは、脚本家の女性たちがフェミニズムに汚染されてしまい、そのイデオロギーによって脚本を書いてきたからなのである。プロレタリア文学に文学としての名作がないのと同じように、イデオロギーに基づいてドラマを作ると、碌でもない作品しか作れなくなってしまうのだ。

 因みに、監督と脚本家の組み合わせでは、監督も脚本家も男性というのが、二番手につけることになる。この組み合わせは当たった時は大成功を収めるが、ハズレた時に駄作しか作れなくなってしまうのである。日本でもアメリカでも、名作が続出した黄金期は監督も脚本家も男性の組み合わせが殆どだったが、黄金期が過ぎ去り、駄作を連発するようになった時も、監督も脚本家も男性という組み合わせだったのだ。

 三番手につけるのが、監督が女性で脚本家が男性という組み合わせだろう。そして最悪の組み合わせが監督も脚本家も女性という組み合わせだ。俺は女性が監督になっている映画やドラマに警戒している。時折、女性が監督になっている映画やドラマを面白いからと他人から薦められて、それを見た時、面白いと思えた作品は一つもなかったからだ。男性の監督に比べて、女性の監督はソフトな取り方をして来るので、優しい感じを受けてしまうのだが、良く見てみると、監督としての基本がしっかりとできないために、駄作にしかならないのだ。

 監督の仕事というのは、映像を取ることだけが仕事でではないのだ。監督の仕事は撮影が最も大事な仕事なのでなく、実は撮って来た映像を切り捨てるということが、最も大事な仕事なのである。優れた監督という者は、この映像の切り捨てを惜しまず、容赦することなくして来るものなのである。黒沢明にしても、宮崎駿にしても、これをやったからこそ名作を作れたのであって、これができなければ、いい映画にはならないのだ。女性の監督が「あのシーンは削るべきだった」というような意見は一度とも聞いたことがない。イ・ビョンフォン監督は、あれだけ出来のいいドラマを作りながら、「削れるシーンはもっとあった」と後悔の念を述べているのだ。レベルが違いすぎるのだ。

 女性が監督になった場合、まさにこここそが最大の盲点なのであって、映画製作に対して全て自分の意向を反映させるのではなく、編集担当のスタッフに優秀な男性を迎えて、削れるシーンは削るべきだろう。ピンク映画にしても、アダルトビデオにしても、斜陽化して行ったのは、女性が監督に成り始めた時からなのである。最近の日本映画は女性が監督になっている作品が多いので、充分に注意しておくことであろう。

●主演女優は美人であることが絶対条件!

 『宮廷女官チャングムの誓い』の魅力は、なんといっても主人公のチャングムを熱演した「イ・ヨンエ」の魅力が大きく貢献している。このイ・ヨンエは美人ではあるが、女優のくせに結構太っているのだ。俺としてはこのふっくらした頬っぺが堪らない魅力として写ったものである。女優は必ずしも痩せている必要性はない。体重が或る程度ないと映像化した時に、映像にインパクトが出て来なくなってしまうのだ。

 イ・ヨンエの演技力はそれほど高い訳ではないが、彼女は一生懸命に仕事に取り組んでおり、その一生懸命さが映像から伝わって来て、これがまたドラマを見ている人たちの支持を受けてしまったのである。主演女優は美人であることは当たり前なのだ。美人の上に、何かそれ以上のことをするからこそ、その魅力が開花し、そのドラマが物凄くいいものになるのである。

 それゆえ、主演女優が美人でないというのは、問題外なのである。実名を言ってしまうと、「中谷美紀」は問題外の代表例であろう。彼女はそもそもブスだし、体が貧相すぎるのだ。顔のことは百歩譲っても、体が余りに貧相なために、彼女の出て来るシーンにインパクトが出て来ないのだ。そして何より、彼女はいつも緊張しすぎているので、見ている方が疲れてしまうのだ。主演女優なのに、緊張し過ぎているのであれば、演技力どうのこうのではないのである。よく女優たちが舞台を経験すると、演技力がついたと言い出すのは、演劇で鍛えると度胸がつき、舞台を数多く踏むと、緊張しなくなるからなのである。

 主演女優が美人であっても、演技が下手なら駄目なのである。「藤原紀香」はその典型例であろう。彼女は演技力はゼロといっても過言ではない。それに身長が高すぎるのだ。実物を見ると、身長はそれほど高いのではないのに、物凄く大きく見えてしまうのだ。こういう女性は格闘技番組や音楽番組の司会者などに向いているのであって、女優には向かないものなのである。

 人間には嫉妬心があるから、主演女優が美人でそれだけが突出して来ると、それに対して反感を持ってしまうのだ。そこで主演女優を巧く補完する形で、熟女女優を配置し、視聴者の嫉妬心を緩和すべきなのである。『宮廷女官チャングムの誓い』が非常に面白いと感じるのは、ハン尚宮役をやったヤン・ミギョンの存在なのである。ドラマの前半は、イ・ヨンエとヤン・ミギョンの2トップで引っ張っていて、これがために視聴者は惹きつけられてしまったのである。ハン尚宮への人気が高まったからこそ、ドラマは2倍近く延ばされた訳だし、ハン尚宮が死んでからの後半は多少ダラケてしまうのである。

 熟女女優は脇役で光るべし。これ以外に生きる方法はないのだ。『篤姫』が面白かったのは、篤姫役の宮﨑あおいと、幾島役の松坂慶子がいたからこそなのであ。特に松坂慶子はきちんと原作を読みこんで、原作の幾島を巧く表現しているのだ。原作でも矢張り幾島が出て来てから面白くなっているので、ここで躓いたら、ドラマは台無しになってしまうものなのである。

 日本には熟女女優で演技が異常に巧い女優が少なすぎるのだ。それがドラマや映画の質を落としているのだ。熟女女優になった場合、女優業だけで生活して行くのは不可能だと考えておいた方がいい。脇役のギャラなどたかが知れているからだ。タレントとして活躍して、生活費を稼ぎ出さねばならないのだ。ヤン・ミギョンも女優だけをやっているのではなく、バラエティー番組の司会者などをしているのだ。俺が女優の高畑淳子をバラエティー番組で見て面白いと思っていたら、女優を遣らしてもやっぱり巧いのである。女優というのは、そういうものなのである。女優だからといって、余り女優業に真面目になりすぎないことだ。

●ドラマを引き立てる音楽

 『宮廷女官チャングムの誓い』の魅力が一層増す所は、音楽の使い方が非常に巧いのである。このドラマを見終わった時、サウンドトラックのCDを欲しくなったくらいだ。時代劇の場合、荘厳さを出すためには、クラシックを使っていかざるを得なくなるが、時代劇なら伝統音楽を使うのは当たり前なのである。

 このことは、大河ドラマに於いては、完璧なまでに抜け落ちている点だ。日本の時代劇なら、天皇や公家が出て来るシーンには雅楽を使うべきだし、武士が出て来るシーンには状況に応じて琵琶や三味線を使って、巧く演出をしていくことは必要だろう。但し、昔のままの音楽を出してしまうと、現在では通用しないので、現代風に作曲して、巧くドラマに挿入して行くべきなのである。

 大河ドラマで違和感を感じる点は、歌詞つきの曲を挿入して来ないということなのである。『宮廷女官チャングムの誓い』だと歌詞付きの曲がいいシーンになると何度も挿入して来るので、それが場面を盛り上げて来ることになるのである。ただ単に曲を流していてはそうはならないのである。

 実際問題として、音楽というのは才能が左右する世界なので、日頃から音楽家を囲っていないと、出来のいい音楽家が育ってこないのである。NHKが莫大な資金を投入して、交響楽団を維持し続けているのは、そうでもしなければ出来のいい音楽を使えなくなってしまうからなのである、民放のドラマがイマイチなのは、交響楽団を自前で作り上げていないからなのである。

、音楽家の現実は、音楽大学を出て、海外留学の経験があっても、食えないのが現実なのである。音楽というのは豊かでない限り生まれて来ないので、音楽家が貧乏になってしまえばいい音楽は生まれて来ないものなのである。経費削減だからといって、音楽への経費を削減するのではなく、音楽家にはきちんとお金を支払って、音楽家を育てて行って欲しいものである。

●ドラマに笑いは必要!

 『宮廷女官チャングムの誓い』は、要は主人公が宮廷内の陰謀に巻き込まれ、その復讐を果たして行くという物語なので、この物語をそのまま作り上げていけば、深刻な内容のドラマになってしまうものだ。しかし、このドラマには笑いが多数含まれているので、深刻さが軽減し、視聴者には息をつける暇が出て来るのである、

 カン・ドックが毎回笑わしてくれるので、俺はドラマを見ている内にカン・ドックが出て来るだけで笑うようになってしまった。それとミン尚宮とチャンイの遣り取りがいつも笑えるので、シリアスのシーンでも一息つけるのだ。ドラマにユーモアを入れるということは、監督にユーモアのセンスがないと出来ないので、監督のイ・ビョンフォンにはユーモアのセンスがあるのだろう。

 日本のドラマはシリアスなシ-ンばっかりで笑いがないので、見ていると息が詰まってしまうのだ。シリアスなシーンに対して笑いを入れないと、シリアスのシーンがより深刻さを増して来ないのである。解り易い例を上げるなら、激辛の料理ばかり食べていると辛さに鈍感になっていまうのと同じことだ。日本のドラマがよりシリアスな作品を作っても、視聴者の方が鈍感になってしまったのは、笑いを軽視しすぎてしまったからだ。

 『宮廷女官チャングムの誓い』は1本辺り70分という長さがあるのに、内容が非常に濃い癖に、あっという間に時間が過ぎ去ってしまうのは、シリアスなシーンと笑いのシーンが巧みに織り合わさっており、緩急のバランスが取れているので、視聴者が疲労しなくて済むようになっているのだ。

 民放のドラマだとCMの時間があるために、笑いを入れる必要性が必ずしもないのだが、NHKのようにCMがない番組だと笑いを入れることは絶対に必要なのである。NHKはお堅いことでは評判なものだが、NHKだからこそ笑いを入れて、ドラマに緩急をつけて、視聴者を疲労させないことが必要となって来るのである。、

●多チャンネル化と視聴率の低下

 日本では「最近のドラマは面白くない」という意見は根強いものだ。どのドラマの低視聴率を記録し、いい作品というのも滅多に出会えない状況になったしまった。しかし、テレビ局が多チャンネル化し、人々の趣味が多様化すれば、視聴率が落ちるのは当然なのである。この変化は世界ではアメリカで最初に起こったことだし、日本もそれに続いて起こるようになった。経済的に豊かになれば、みんなが同じ番組を見るということはなくなるものなのである。

 だからこそ、製作側はそういう状況下でしっかりとしたいい作品を作り、視聴者を楽しませるべきだったのである。ところが、アメリカでも日本でもまともな作品を作ろうとせず、奇を衒う作品ばかり作るようになってしまった。このために視聴者の感性も貧困化し、更に粗悪な作品しか作って来ないという深刻な状況になってしまったのである。

 日本のドラマ業界がより深刻なのは、アメリカですら全国ネットは三つのテレビ局しかないのに、日本はアメリカの経済力の半分しかないのに、全国ネットのテレビ局は5つもあるという構造的な問題を抱えているということなのである。恒常的な過当競争のために番組の質が落ちて当然なのである。

 韓国は人口が少ないゆえに、テレビ市場の大きさが丁度いいのである。韓国の市場が出来のいいドラマを作り易い状況なのであり、韓国のドラマは外国に持って行っても絶対に売れるレベルに達してしまったのだ。特に民族的に近い関係にある日本に持って来れば、確実に売れることだろう。要は、日本のドラマが低迷している間に、韓国のドラマの質が日本を上回ってしまったのでる。経済力の大きさが必ずしも国民に貢献するとは限らないものなのである。

 日本のドラマ製作者たちは、視聴率ではなく、ドラマの質に拘るべきだろう。しかし、マニアック路線を取るな。マニアに受けても、逆に質が落ちてしまうものなのである。マニア以外の人々を惹きつけるからこそ、いいドラマができるのである。日本のドラマは日本だけで見られるのではなく、東アジアや東南アジアにも輸出されるものなのである。その自覚をきちんと持ってドラマ作りに励むべきなのである。

 『宮廷女官チャングムの誓い』はこのドラマ自体が面白いし、日本と韓国を比較すると色々なものが見えて来るので、是非とも見て欲しい作品である。テレビを詰まらないと言いながら見るより、そういう番組を見る続けるのではなく、出来のいいドラマを見て、人生を豊かにして行った方がいいのだ。このドラマは夫婦が一緒でも、家族が一緒でも安心して見られる作品なので、夫婦や家族で見ると、物凄くいい影響が出て来ると思う。

 最後に、『宮廷女官チャングムの誓い』を作ってくれた、イ・ビョンフォン監督と脚本家のキム・ヨンヒョン、主演女優のイ・ヨンエ、素晴らしい演技をしてくれたヤン・ミギョン、それからその他の製作関係者たちに感謝の意を捧げたいと思う。本当に有難う!

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コメント

こんにちは。タマティー様はいろんな分野にお詳しいんですね!いつもびっくりさせられます。

私はテレビはほとんど観ません。観る暇がないと言った方がいいのかもしれませんが。もともとあまり好きなほうでもありません。

夫と観るなら楽しいですけどね!私はついついコメントを入れてしまったり、大笑い、大泣きをしてしまうので、頼むから黙ってくれと夫のほうは迷惑そうです(笑)


チャングムの誓い、テレビでやってましたよね?観たことはないんですが‥
そんなにおもしろいとすすめられると観たくなりました!
監督と脚本家の男女の組み合わせで出来が違うんですね!考えたこともなかったです。

投稿: smile | 2010年1月 5日 (火) 23時09分

 「smile」さんに聖母の称号を贈りたいと思います!good

 母親のテレビ好きには本当に悩まされていますよ。
 或る億万長者の方から「仕事ができるようになると、テレビを見なくなるようになるよ」と言われたことがあるのですが、それを聞いた時は「そうなのかな~」と思っていたけど、いざ自分の仕事が順調に進み始めると、本能にテレビを見なくなるもんなんですね。
 smileさんの旦那さんも仕事が巧く行っているんじゃないかな? テレビを見ない理由はsmileさんの行動にあるかもしれないけど、テレビを見ないと、幾らでも仕事ができるようになりますからね。

 『チャングム』は最初、NHKで放送されたんですけど、この時期は、タマティーは癌の研究を遣りまくっていた頃で、テレビを見れる状況ではなかったんです。
 去年、TBSで再放送したみたいですけど、昼間に放送していたので、タマティーは見れませんよ。
 そのため、DVDを借りて来て見ました。
 これがメチャクチャ面白くてね。
 久々に、いい物を見させてくれましたよ。

 もう5年も前になる話だけど、アマティーが映画製作の手伝いをしていた時、北野武監督のスタッフの方と話をすることがあったんです。
 彼が言うのは、「たけしさんは映画祭に出すことを目的として映画を作っている」といっていたので、「俺はそれでは駄目なんだ」と言ってしまったことがあるんです。
 たけしさんは映像のテクニックが物凄く巧くて、世界でもトップレベルの映像を撮って来るんです。しかし、ストーリー展開がイマイチなために、観客を惹きつけられないんです。
 「そこで出来のいい女性の脚本家を引っ張って来たらどうか?」と助言したことがあるんです。
 自分が映画製作をやってみて、映画監督と脚本家の組み合わせこそ、映画の成功を左右するものだと、痛いほど解ったからなんです。
 男性の脳と女性の脳は違うふうに出来ており、それを巧く組み合わせると、非常に出来のいい作品が出来るのではないかと思うようになったんです。
 その後、脳科学の本を読んでみると、男性脳と女性脳の違いが科学的に分析されており、「これだッ!」と飛び上がるほどの感動を覚えたことがあります。
 男女の性差を如実に出してしまうと、男女の優劣ばかりに目が行ってしまうのですが、そうではなく、男性も女性も完璧な生き物ではないということなんです。互いに不完全だからこそ、その欠点を巧く補って行くことが大事なんです。そうすれば、非常に出来のいい物を作り上げて行くことができるようになるんです。
 NHKの大河ドラマは監督が男性で脚本家が女性というのが主流になっています。NHKも何十年もやってきて、これがベストな組み合わせだと思うようになったのでしょう。
 その点に気づくことができれば、一流の観察眼を持つことができるようになり、映画やドラマを見る時も良い作品に出会えるようになると思います。

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投稿: タマティー | 2010年1月 6日 (水) 06時58分

タマティー様
あけましておめでとうございます。新年早々、お返事を頂いたのに遅くなってしまいすみませんでした。
息子は昨年の11月に一人で立つようになり、今はジタンダを踏んで歩く素振りをしています。生まれたときは寝ていることしかできなかったのに、この成長スピードには驚かされます。
チャングムはゆきねこもハマりました。親戚の子どもが「オナラ、オーナラ…」と歌っていてインパクトありますよね~。
今年もタマティー様のますますのご活躍をお祈り致します。

投稿: ゆきねこ | 2010年1月 6日 (水) 09時37分

 「ゆきねこ」さん、赤ちゃんが一人立ちできてよかったですね!happy01

 恐らく赤ちゃんの後追い攻撃を食らっていると思いますが、それにしても、赤ちゃんって寝ているのに、どうして母親がいなくなったことに気付くんでろうか?
 これって赤ちゃんの能力の中でも凄い能力ですよ。
 大人になってしまうと、この能力は消えてしまいかすからね。
 なんかこの点で気付いたことがったら、教えて下さいね。

 『チャングム』を見てつくづく思ったのは、NHKの大河ドラマをは放送時間が短いってことです。
 『チャングム』は1本辺り70分なのに、大河ドラマは1本辺り45分ですからね。しかも、『チャングム』は週2回の放送だったので、その点も驚かされました。
 要は日本のドラマの製作陣は休み過ぎなんですよ。
 大河ドラマの主役は週4日拘束なのですが、それだと少なすぎるんですよ。週6日拘束でもいいんですよ。それぐらい拘束しておけば、自然といい出来の作品も出来ると思います。
 せめて1回辺り60分にすれば、脇役たちに回せる時間も確保できるので、内容の濃い作品になると思います。
 『坂の上の雲』の出来がいいのは、原作もさることながら、放送時間が長いからですよ。
 それにしても福山雅治は運がいい男ですよ。
 これで木村拓哉との争いに決着がつくことでしょう。
 余程、脚本の質が悪くなければ、高い視聴率を維持できると思います。
 
 それから今年はゆきねこさんにとって第二子妊娠の年になると思います。
 出産はないと思うけど、今年の後半になったら妊娠すると思います。
 まあ、夫婦としてやるべきことをやっていないと妊娠できませんが、あんまりやらないってのは、体に毒だと思います。
 多分、旦那さんの方に原因があるんだろうけど。
 こういうことは他人が言っても仕様がないしね。
 雲の上では次の赤ちゃんが順番を待ってますので、日々の生活をだらけずにきちんと育児をして下さいね。

 今年ももっともっといいことがゆきねこさんに起こりますように!

happy01heart04happy01heart04happy01

投稿: タマティー | 2010年1月 7日 (木) 06時19分

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