母親との会話こそが子供の脳を発達させる
●基本的言語体系は一人の人間によって宿される
赤ちゃんは成長して行くと「喃語」を喋り、「単語」を喋り、それが「二語文」「三吾文」となって、やっと会話を喋れるようになる。その間に、基本的言語体系がしっかりと脳の中に入ってしまうことになる。赤ちゃんの方は一言一言話していくが、赤ちゃんの脳は母親の会話を聞きながら、言語能力を鍛えていくのだ。
不思議なことに、言葉を覚えることに挫折する赤ちゃんというものはないものだ。赤ちゃんとしては母親ときちんとコミュニケーションを取らない限り、まともに生きていくことができないから、言葉を覚えるのも一生懸命になって覚えて行くものだ。母親の方も我が子が言葉を覚えてくれるのが楽しいから、我が子が言い間違えても、優しく受け止めてあげることができるのである。
学生が外国語の習得に失敗してしまうのは、基本的言語体系を無視して、単語だけを覚えようとするからなのである。人間は会話を中心に言語を覚えて行くものなのであって、単語を中心に覚えて行くものではないのである。外国語を覚えて行く場合は、赤ちゃんが言い間違えをするように、自分も多少の言い間違えをしても構わないのであって、それよりも外国語を喋れる人と会話をした方が手っ取り早く覚えることができるのである。
基本的言語体系は、その民族に共通するのが「文法」というものだが、個人レベルで独自性のあるものが「喋りの癖」というものだ。文法ということなら、日本人であるなら同じ日本語を話しているので、どの赤ちゃんの頭の中にも入って行くが、喋りの癖ということでは、その母親の喋りの癖がそのまま赤ちゃんの脳の中に入って来るのだ。
どの人間も喋りの癖を持っているものだが、殆どの場合、その喋りの癖は自分の母親から相続して来たものなのである。「なんでこの人はこういう喋り方をするのか?」と思っていると、その母親を見ると全く同じ喋り方をしていることに気付いた時は、非常に驚くものだ。赤ちゃんという時期に、母親が最も赤ちゃんと接している以上、母親の喋りの癖が赤ちゃんの喋りの癖になってしまうのだ。
●母親と父親の違い
基本的言語体系というのは、一人の人間によって宿されるものだ。それは母親以外にいないものだ。幼い時に母親からしっかりと育てられると、基本的言語体系がしっかりと頭の中に入って来るので、非常に高度な思考や豊かな会話をすることが可能になる。それに対して幼い時に母親を失ってしまうと、基本的言語体系がしっかりと頭の中に入って来ないので、その者の言っていることが良く解らないのだ。
我が子の頭を良くしたい場合、早期教育を施そうとしたり、偏差値の高い私立学校に入れたりしようとするが、そういうことは飽くまでも技術的なことなのであって、知能の発達の基本となるのは、飽くまでも母親との関係の中に存在しているのだ。我が子に基本的言語体系がしっかりと頭の中に入るまで、母親は我が子を手放してはならないのだ。言葉を覚えてくれるのは、2歳か3歳頃までには出来るが、自分の意思表示をしっかりとし、相手の意見をきちんと汲み取ることができるようになるまでは、やはり12歳辺りまでかかるものなのである。
乳幼児がちゃんとした言葉を覚える量は、教えた人の愛情量に比例する。赤ちゃんに最も言葉を覚えさせることができるのは、母親こそが筆頭なのである。母親こそが我が子に最も多くの愛情を持っているがゆえに、我が子は母親の言葉を中心に覚えて行くのだ。父親はその家の家長ではあっても、赤ちゃんが言葉を覚える作業では、母親に次ぐ存在であって、どうやっても母親に並ぶことはできないし、母親を凌駕することもできないのだ。
歴史を紐解いてみると、歴史上の偉大なる人物たちは、全てといっていいくらい母親の深い愛情のもとに育って来たことを知る筈だ。母親からしっかりとした言語体系を相続することができたからこそ、この世を正確に把握することができて、伸し上がって行くことができたのである。
幼い時は母親を失った人物は気をつけるべきであって、その者が一体何を言っているのか非常に解りにくいものだ。母親から虐待されて育って来た人物とか、逆に母親を憎んでいる人物とかは、自分の本心をなかなか言わないし、言っていることと行動が一致してこないものだ。また、幾らちゃんとした家庭で育ってきても、その者が大人になってもマザコンであっては、無責任な人物になり、大きな仕事を成し遂げることはできないことだろう。
●祖父母というクッション
なんでこのような格差が出て来るのかといえば、我々は同じ現実を見ている筈なのに、その現実を頭の中で言語処理して把握して来るからだ。例えば、「お金」があったとする。もしも自分の母親がお金に苦労し、否定的な考えを持っていれば、その子もお金を否定的に見て来るものなのである。もしも自分の母親がお金に苦労しても、お金に対して肯定的な考えを持っていれば、その子もお金を肯定的に捉えて来るものなのである。一方はお金を否定的に見ているのだから、その後の人生でお金で苦労するし、もう一方はお金を肯定的に見ているのだから、その後の人生で裕福になっていってしまうのである。
一人の人間によって基本的言語体系がしっかりと頭の中に入って来る以上、一人の人間だけが子供を育てることは逆にいえば非常に危険なのである。もしもその母親が間違った考えを持っていれば、その子はその間違った考えを教え込まれてしまい、それを修正する機会を失ってしまうからだ。
自分の家に両親が揃っていれば、自分の母親といえども、自分の父親からその意見を覆されることもある姿を見ることができるので、自然と母親の間違った意見を否定して行くことができ、正しい物の見方ができるようになるのだ。大事なことは正しい物の見方を身につけることであって、誰かの意見を鵜呑みにすることではないのだ。
祖父母がいると、子供は温和になると言われている。自分の両親だけではなく、その祖父母によって喋りかけられれば、子供は親の意見が絶対に正しいものではないということが解り、違う考え方も存在するのだということに気付くものだ。しかも祖父母は両親よりも人生経験が豊富だから、生きていく上で様々なことを学んでいくことができるであろう。
祖父母というクッションがないと、どうしても思考が硬直し易いので、核家族で育って来た人々というのは、大抵が狭い考えも持ち主たちだ。政治家が「社会保障の充実」を叫べば、それに追従してしまい、それによってどのような弊害が出て来るかを見極めることができないのだ。「貧富の格差があることは怪しからん!」「男女の性差があることは怪しからん!」と騒いでいる人たちも、やはり核家族出身の人たちであろう。
●ママ友との交友
人生を生きて来れば解るが、誰かが強硬になって主張して来る意見というものは、大抵が間違っているものだ。正しい意見であるなら、すんなりと受け入れられてしまうものだし、もしもその正しい意見が社会の常識に反していても、その論理をしっかりと組み立てていけば、いずれは正しい意見の方が常識になってしまうものだ。叫ばなければならないような意見は、まずは退けるのが無難なのである。
この世には冷静に考えれば、その論理構成が破綻しているのに、なぜかその間違った意見を強硬になって主張して来る者たちというものは必ず存在するものだ。そういう者たちは大抵が親から一方的に意見を押し付けられる育てられ方をしてきたために、自分が大きくなってから、他人に一方的に自分の意見を押しつければ通ってしまうと思い込んでい売るのだ。
母親は我が子の脳に基本的言語体系を入れてしまう特権を持ちつつも、自分の意見だけを押し通す育て方をしてはならないのである。時には母親の意見に従って貰わねばならぬが、時には子供の意見も受け入れて、意思疎通がきちんと果たされるようにしなければならないのだ。そうしないとまともな子供に育って来ないのだ。
母親がママ友たちと仲良くするというのも、育児にとっては非常に大切なことなのだ。ママ友との交友は我が子に他の子と遊ぶ機会を与えるだけではないのだ。母親たちが育児の喜びを共有する大事な機会なのである。育児をしていれば、何かしらの悩みを抱えるのは当たり前であって、その悩みを信用できる人に話すからこそ、自分のストレスが軽減されるのである。もしもその悩みの解決策を得られたのなら、更にラッキーなことなのである。
子供というのは、勝手に言語を覚えて行くのではない。母親が深い愛情を持って喋りかけるからこそ言葉を覚えて行くのである。もしも我が子を頭のいい子に育てたいのなら、自宅でしっかりと話しかけていくことだ。それと同時に家の外に出て、祖父母に会わしたり、ママ友と遊んで、この世には様々な考え方があることを、我が子に教えて行くことだ。そうすれば、我が子は高い知能を持つことができるようになるものなのだ。
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