まずは子供に学問への興味を持たせよ
●小学3年生までは好奇心を涵養するだけでいい
子供の成長は3年周期で進む。3歳児までは母親にべったりだし、幼稚園児になれば家族を中心にしつつ友達を作り始めるものだ。それと同じように小学校では、小学1年生から小学3年生までが「好奇心の涵養」であり、小学4年生から小学6年生までは「学問の基礎を固める時期」であるのだ。小学校の時期が6年間からあるといって同じように扱っていてはまともな教育の成果を得ることができないのだ。
小学校といえども、小学3年生までは「遊び半分」「授業半分」であって、小学校高学年のような本格的な授業でなくていいのである。そもそも子供たちにとって長時間座って聞く授業にはついていけないものなのだ。小学3年生までは授業は「25分間授業」でいいのである。25分間勉強させて、5分間休ませれば、最も効果的に授業を行うことができる。この時間内なら、子供たちは集中力を維持してくれるからだ。それなのに小学校では25分以上の授業をやってしまうから、教師が余程、時間のペース配分に気を配らないと、失敗してしまうのだ。
通常、子供たちにいきなり知識を教え込んでも、拒絶反応を示すものだ。学問を学ばせるためには、子供たちの好奇心を刺激し、その後に知識を教え込んでいくと、子供たちはいとも簡単に知識を吸収して行ってくれるのである。よく「詰め込み教育は怪しからん!」と騒いでいる人たちは、子供の頃に小学校の教師から好奇心を刺激されることなく、知識を詰め込まれてしまったからこそ、大人になってから得体の知れない反抗をするようになってしまうのだ。
厄介なのは、子供たちの好奇心が一体いつどこで刺激されるか解らないということなのである。だから教師になるためには、師範学校で教育技術を教え込まれねばならないし、教育現場での経験値が必要となって来るのだ。現在の教育学者の意見のように子供たちの心理を重視していては、まともな授業などできるわけがないのだ。子供の心理など幾らでも変わって行くから、それを重視すれば現場の教師といえども出来るわけがないのだ。
小学校教師の中で、親御さんたちから「あの先生は授業が上手だ」と言われるのは、絶対と言っていいほど、この好奇心の刺激の仕方が巧いのである。子供たちにとっては教師を選択する権利はないので、運不運が常に付き纏うのだ。教育技術の高い教師につけば、勉強熱心な子供になるし、教育技術のない教師につけば学級崩壊で授業どころではなくなってしまうのだ。
●国語算数理科社会は、実は教え易い順
小学校の教科は「国語」「算数」「理科」「社会」と言われるが、実はこれは教え易い順番なのである。そもそも寺子屋では「読み」「書き」「算盤」を教えていたのであって、初等教育では国語と算数こそが中心になるものなのである。近代国家の教育では、科学が発達したので、それに理科と社会を付け足しただけであって、初等教育の基本は今も変わっていないのだ。
国語の場合、漢字の語源を教えると、子供たちは絶対に被りついて来る。漢字というのは文字であっても、絵であり、記号だからだ。漢字の語源をクイズ形式で出してあげると、子供たちは必死になって考え始め、授業が活性化するようになるのだ。子供たちのちゃんとした国語教育を行いたいのなら、白川静氏の辞典を熟読しておいた方がいい。あの辞典はネタの宝庫なのだ。
算数の場合、数学が持つ不思議な法則を教えてあげると、子供たちは興味深々となる。数学の世界はランダムに見えて、或る一定の法則が隠されているので、それが暴かれてしまうと、子供たちの好奇心は刺激されまくるのだ。インドが数学大国になったのも、小学校の教師たちがこの手の授業を展開したからなのであって、だからこそインドの子供たちが数学を得意とするようになったのだ。子供たちにまともな算数の授業をしたいのなら、数学の本を読むのではなく、『数学の歴史』を読んでおくことだ。
理科や社会は国語や算数ができていないと、子供たちの好奇心を刺激することができない。理科や社会を説明するのは、或る一定の国語能力がないといけないし、算数によって論理的思考が鍛えられていなければならないからだ。理科の場合、とにかく子供たちの前で実験をやって子供たちの興味を惹くようにすることだ。社会の場合は、歴史を重点に教えて、歴史上の人物にスポットライトを浴びせるようにすることだ。
理科や社会の授業は手抜きしようとすえば幾らでもできるものだ。理科の実験を準備するというのは、放課後に教師が残って準備をしなければならないので、そういう熱心な教師がいてくれるのならいいのだが、殆どの教師たちは職員会議がどうのこうの、組合活動がどうのこうので、やろうとしないのだ。社会に関しては、書物を大量に読まないと話にならないので、自宅に書斎や書庫がないような教師だと幾ら聞いても詰まらない授業しかしないものなのである。
●この時期に成績表を重視するのは危険である
母親としてはこの時期に成績表を重視するのは非常に危険である。子供の好奇心の有る無しを成績表につけることができないものだからだ。子供はいつどこで好奇心を持って来るのか解らないからだ。成績表に一喜一憂しないで、とにかく日々学校でどんな授業を受けたのか聞いてみることだ。母親なら大概のことが解って来るようになる筈だ。
子供の好奇心を刺激するのは何も教師だけができるわけではない。母親だって充分にできるのだから、自宅で子供の勉強に付き合い、適時アドバイスを与えて、子供の好奇心を刺激して行くことだ。子供には子供部屋で勉強させるのではなく、居間で勉強させれば、母親は家事をこなしながら、子供の勉強を見ることができるようになるのだ。
特に国語と算数は初等教育の基本なので、ここで躓かないようにすることだ。国語の場合、子供といえども母国語を話せてしまうので、ズル賢い子供に限って、国語の勉強を馬鹿にして来るのだ。国語の書き取りには付き合い、間違っていたら、必ず訂正することだ。子供は平気で言い間違いをして来るので、間違えて覚えてしまうと、いつまでも覚え続けてしまうのだ。
算数の場合、どんなに頭の悪い母親でも小学校の算数ならついていけるので、自分でも是非ともやってみることだ。小学校の算数をやってみると、簡単なことを子供に教えるのが如何に難しいかが解って来るからだ。「九九」に関しては徹底的に教え込み、出来ればそれ以上の掛け算を暗記させてしまうことだ。
休日には家族揃って博物館や遺跡に行って遊べば、子供たちに理科や社会の課外授業をやっているのと同じことになる。特に博物館には子供たち用のプログラムが用意されているので、それを巧く利用することだ。専門家が面白い話を聞かしてくれるので、それによって好奇心が刺激されるのだ。
●基礎的知識を問答無用で教え込むことも必要
小学生なら好奇心を刺激されることも必要であるが、基礎的知識を問答無用で教え込まれることも必要なのである。基礎的知識を知っていない限り、高度な教育を展開して行くことは不可能になってしまうからだ。卵が先か、鶏が先かの議論になってしまうが、好奇心を刺激しつつも、知識を詰め込んでいくべきなのである。
小学生に知識を詰め込むというのは、解り易く言えば落ち零れないようにするためになのである。基礎的知識を詰め込まないからこそ、授業に付いていけなくなり、教師の話が珍紛漢紛になってしまうのだ。小学生だから留年することなどないが、小学6年生になっても、読み書きや計算がきちんとできない子供は幾らでもいるものなのである。
子供の脳は新鮮でこの時期なら幾らでも記憶することができる時期なのである。それゆえこの時期に子供を遊ばせておくだけでは、簡単に記憶できてしまう時期を失ってしまうのである。中学や高校で落ち零れてしまう生徒たちというのは、小学校できちんと記憶をしてこなかったからこそ、中学や高校の授業についていけなくなってしまっただけなのである。
だから、母親は子供たちに執拗に「読み書き」や「計算」を教えて行くことが大事なのだ。それと同時に好奇心を刺激されれば、知識をバキュームのように吸い込んでいくので、好奇心を刺激するような教え方をしていくべきなのである。全てを教えてはならないということなのである。
子供が物心がつくまでに好奇心を刺激しておけば、後は自分が勝手にやって行ってくれるようになるのだ。女の子なら初潮前には物心がつくし、男の子なら遅くとも小学5年生までには物心がつくものだ。その時期までに母親が子供の好奇心を刺激して、子供に便窮する習慣を身につけさせておけば、後は自発的に勉強し出してくれるようになるのだ。
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