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タマティーのお勧め本『ダークヒストリー図説イギリス王室史』

●非常に読み応えのある一冊

 俺はイギリスの歴史がさっぱり解らない。

 イギリスの歴史の本を幾ら読んでも曖昧な理解しかできないのだ。それもその筈、イギリスの歴史には英雄豪傑がなかなか出て来ないので、歴史の登場人物たちに魅力を感じるということがないのだ。この点、フランスにはナポレオンがあり、ドイツにはヒトラーがあり、ロシアにはスターリンがいるので、その独裁者を手掛かりに歴史を解明して行くことが可能なのだ。

 それともう一つ、イギリスは君主制の国家なので、歴史学者が王室を無視して、イギリスの政治を論じても、イギリスの歴史が全く解らなくなってしまうのだ。例えて言うなら、日本史を解らせるのに、皇室抜きで論じたら全く解らなくなるように、イギリスも王室抜きで歴史を論じたらさっぱりと解らなくなってしまうと同じように。

 そうやって俺がイギリスの歴史に悪戦苦闘している中、これさえ読めばイギリス史を理解できる本が現れました。それが『ダークヒストリー図説イギリス王室史』なのである。イギリス王室の表の歴史を見せるのはなく、イギリス王室の裏の歴史を見せることで、逆にイギリス王室の歴史がきちんと理解できてしまうのだ。

ダークヒストリー 図説 イギリス王室史

 この本が有難いのは、王室の系図を載せていることだ。イギリス王室のことを扱った本の中には系図を載せていない本もあるので、非常に不便をしてしまうものなのである。系図を見ないと、イギリス王室のことなど解る訳がないのだ。それと王族たちの肖像画が掲載されているので、その肖像画を見ることでなんとなくその人物のことを理解することができるのである。

 定価は4500円と値段が張るが、これ1冊あればイギリス王室の歴史が解るので、非常に有益なのである。イギリス王室のことを論じた本は沢山あるが、それらを読んでもなかなかイギリス王室のことが理解できないのだ。それよりも値段は張るが、最もレベルの高い本を読んでしまった方が、無駄な労力と時間とお金を削減できるので、非常に有難いのだ。

●題名に問題あり

 『ダークヒストリー』の著者はブレンダ・ラルフ・ルイスというイギリス人で、イギリスの新聞で王室担当の記者を経験した後、作家になったという経歴を持つ。日本でもそうだが皇室担当の新聞記者というのは皇族たちを相手にしている内に新聞記者自身、気品が高くなってしまい、しかも皇室のことを知らなければならなくなるので、非常に勉強熱心になる。そのためにいい文章を書くし、レベルの高い本も書けるのものなのである。因みに、新聞記者の中で最も柄が悪く、勉強しないのは政治部の新聞記者たちだと思う。

 イギリス人の作家の中でも文章能力は非常に巧い。無駄な文章を全て削ぎ落して、論旨が明解な文章を書き連ねて来る。しかも系図や肖像画やコラムがあるので、読みながら様々な寄り道ができるのである。後は翻訳者の腕次第で日本での作品の良し悪しが決まるが、翻訳者の「高尾菜つこ」さんはきちんと翻訳の仕事をこなしたと思う。

 しかし問題がある。しかも題名にこそ問題があるのだ!

 原題は『A DARK HISTRY:THE KINGS AND QUEENS OF ENGLAND』なのである。直訳すると、『暗黒の歴史;イギリスの国王たちと女王たち』となる。イギリスの本では『A DARK HISTRY』がバ~ンとでかく書かれ、その下に副題がつくので、イギリス人ならその表紙を見れば、この本が一体何について書かれているか一発で理解することができる。アルファベットはかなり空間を食うので、題名自体をコンパクトにする必要性があるのだ。

 ところが日本語版だと、『ダークヒストリー図説イギリス王室史』なのである。これでは著者の意図した物と、翻訳者が翻訳した題名とでは、全く異なってしまうのだ。著者はイギリス王室の暗黒史を述べたのであって、イギリス王室の歴史をストレートに述べた訳ではないのだ。また「ダークヒストリー」の「ヒストリー」と、「イギリス王室史」の「史」がダブっているので、非常に無駄なのである。更に「図説」という言葉は原書の題名にはないものなのであり、これも余計なのである。

 こういう場合、『イギリス王室暗黒史』と翻訳してしてしまえば、日本の読者たちに一発で理解させることができる。大体、長すぎる題名の本は売れないものなのである。原書の題名を直訳してはならないし、余計な日本語もつけてはならないのだ。原書の題名を踏まえて、その真意に沿うように日本語に翻訳しないと、いい翻訳とはいえないのだ。この辺りの能力は英語ができるとかいう問題なのではなく、翻訳者としてのセンスの問題なのである。

●監修者は本当に必要だったのか?

  『ダークヒストリー』の内容が良かったために、非常に勢いよく読み進めてしまった。読んでいると読み応え十分だし、イギリス王室の歴史が現代にまで繋がり、しかもイギリス王室が抱えている問題が決して解消された訳ではなく、王制の存亡を揺るがすような時限爆弾を抱えたまま存続し続けているということを読者たちに知らせるのである。

 ところが本文を読み終えた後の監修者の解説が解説になっていないのである。監修者の樺山紘一氏はイギリス王室のスキャンダルの歴史が、イギリス人の王室スキャンダル嗜好を生み出し、それが推理小説を生み出して行ったかのようなピント外れの解説になっているのである。

 日本の文学者の中には政治と文学を結びつけて論じる者がいるものだが、日本なら平安時代までなら政治と文学は密着していたが、それ以降は政治と文学は距離を置いているものなのである。イギリスでの中世までなら政治と文学は密着していたが、近代以降は文学は政治から離れ、一人歩きをして行ったものなのである。

 確かに推理小説の母国はイギリスであるが、なぜイギリスで推理小説が発達したかといえば、イギリスでは近代国家の中で一番早く「法の支配」を確立させ、しかも近代的な警察制度をいち早く整えたからなのである。それとイギリスが覇権国家として繁栄し、イギリス人たち自身が暇だったということなのである。だからこそ日本だって、法治国家を整え、司法制度が完備され、経済的に繁栄すれば推理小説が盛んに読まれるようになったのである。王室のスキャンダルと推理小説にはなんの関係もないのである。

 通常なら、こんなピント外れの解説を書いて来るのなら、編集者が「これは解説になっていませんよ!」と突き返すものだし、編集者が見逃しても発行人が気付いて遣り直しを命ずるものなのである。このダブルチェックが機能しなかったのである。理由はこの樺山紘一氏が東京大学大学院卒で、しかも東京大学の教授だったからなのである。こういう所で学歴社会の弊害が如実に出て来るのである。

 俺としては『ダークヒストリー』の翻訳を担当した高尾菜つこさんの感想が聞きたかった。というのは高尾菜つこさんは、『アメリカのイスラエルパワー』『「帝国アメリカ」の真の支配者は誰か』など政治関連の翻訳書を多数出しているからだ。彼女が翻訳をした後に、どのような感想を持ったのか、それを『ダークヒストリー』の最後に入れた方が出来栄えがかなり違ったと思う。

●無為自然こそ最高の政治

 『ダークヒストリー』を読んでつくづく思うのは、国家元首というのは「無為自然」に徹するべきであるということなのである。イギリスは現在でこそ大国だし、嘗ては覇権国家でもあったのだが、実をいうと中世ヨーロッパでは非常に貧しい小国にすぎなかったのだ。だからこそ国王たちが必死に働いて国家を強くして行ったのである。

 国家元首として本当に仕事をやったのは女王エリザベス1世までなのである。それ以降は国王や女王たちは大した仕事をしていないし、それどころか仕事をしなければしないほど、家臣たちが育ってきて、政府はきちんと機能し始め、イギリスが繁栄するようになってしまったのである。

 確かにイギリス王室はスキャンダルまみれだったかもしれない。しかし国王や女王たちがスキャンダルの対応に追われているために、公務に充分なエネルギーを注ぐことができず、結果的に家臣たちが仕事をやらねばならず、そのために優秀な人材たちが育って来たのである。

 国家元首は国民の第一人者なのだから、国民の中で誰よりも働いてくれなければならないと思っている人々は非常に多いものだ。しかし国家元首が仕事に追われるのは、貧しい小国のやるべきことであって、豊かになり始めた国家がすべきことではないし、増してや大国がすべきことではないのだ。

 イギリス王室史の中でもイギリスが豊かになり始めたのに、政治に手を出す国王たちがいた。だが国王が政治に手を出すと反乱が起こり、革命が発生してしまったりと、国王の意図することと全く正反対の結果になってしまったのである。そういう失敗を多数積み重ねて行って、イギリス王室は国王や女王として何をすべきかを探り当てて行ったのだと思う。

●平時に国家元首が働きまくると国民は貧乏するもの

 冷静になって世界を見回してみると、国家元首が一生懸命に働きまくっている国家ほど逆に国民が貧しくなってしまうと言う奇妙な逆説が存在している。例えば北朝鮮なんかは格好の代表例で、北朝鮮労働党総書記の金正日は本当によく働きまくっている。北朝鮮の政治を全て支配し、軍隊を統率し、農地や工場を視察して指導を行い、テレビ局に行けばテレビ番組にまで注文をつけて来るのである。

 ところがそれで北朝鮮の人民はどうなったかというと、世界で最も貧しいといわれるくらいに極貧になってしまい、その日の食料にすら事欠き、餓死者が続出するようになってしまったのである。嘗て平壌の市民たちが言っていたのが、「金正日が酒を飲むなり、女とやりまくるのは別に構わないんだ。だが真面目に政治をやろうとした時が一番恐ろしいんだ。」ということなのである。確かに金正日が働きまくれば働きまくるほど、北朝鮮の人民は政治のために被害を被り、貧しくなってしまうのだ。

 でもこれは社会主義という非合理的な経済システムを持つ国家だから起こった悲劇だと割り切ってしまうこともできる。しかしこれが社会主義とは関係なく、寧ろ社会主義に敵対した国家で、現在は覇権国家であるアメリカ合衆国も同じような悲劇が起こっているとしたらどうであろう?

 アメリカ合衆国大統領も北朝鮮労働党総書記と同様に分刻みのスケジュールに追われ、非常によく働いている。しかし大統領が動けば動くほど、アメリカ合衆国の国力が低下して行き、アメリカ人たちの生活水準は徐々に低下して行っているのである。アメリカ合衆国の大統領は口が達者だから、常に巧い言葉を並べ立てているものだ。だがそれでもアメリカ人たちが貧しくなることを防げないのだ。

 理由は簡単なのである。

 大統領が働きするぎるから、国民の誰もが大統領に頼ってしまい、自分たちが自助努力をすることで豊かになっていこうという気概が消滅してしまったのである。国民が貧乏だからといって政府が常に経済政策を打ち出していれば、国民が自分で出来るものですから政府に頼ってしまい、誰も真剣になって貧困退治に取り組まなくなってしまったのである。

●王室は国民の最高の教育材料

 これに対してイギリスでは、国王も女王たちも国民の貧困には関心がなかった。ただ唯一の例外がエリザベス1世で、この女王の時に救貧法を制定し、貧乏人たちの救済に当たった。しかしそれ以外は国民の貧困など知ったことではなく、国王も女王も放置していたのである。

 それでイギリス王室が一体何をやっていたかというと、浮気に不倫に同性愛、陰謀に謀略、暗殺に虐殺と自分たちの欲望の赴くまま、好き勝手なことをやっていたのである。スキャンダルまみれの王室があったればこそ、イギリス人たちはそれを貴重な反面教師として自分の道徳を正しただろうし、自助努力に燃えて自らの労働で豊かになって行き、政府に頼ることなどしなくなったのである。

 イギリスの政治史上、輝かしい功績である「議会」や「枢密院」や「内閣制度」も、国王が真面目に政治を取り組んだから生まれて来たものではなく、国王が真面目にやらなかったからこそ生まれて来たものなのだ。例えば議会は国王が国民に重税を課したからこそ、それを国民が阻止するために生まれたものだし、枢密院はヘンリー8世が妻と離婚したいがために作ったものだし。内閣制度はドイツからやってきて英語が話せないジョージ1世がいたからこそできたものなのである。

 日本では大正デモクラシーの頃から議会制民主主義を日本にも定着させようと躍起になったが、そういうことでは優れた政治システムを生み出すことはできないものなのである。事実、大正デモクラシーは軍部に政権を譲り渡すことで自滅してしまったではないか!? 戦後、自民党も民主党も議会制民主主義に対してなんの疑問の持たなかった。しかし、その結果起こったことは、常に日本国民が政治の貧困に悩まされるという事態だったのである。

 政治システムを整えて行く時、外国で成功しているからといってその政治システムをそのまま取り入れることは非常に危険なことなのである。政治システムというのは、その国の歴史が偶然に生み出していったものなのであり、その歴史から切り離されて、その政治システムだけを用いるということはできないものなのである。

 日本だって律令制度は唐王朝の律令制度を真似て作ったが、結局、機能しなかった。それよりも摂関政治の方が機能したし、鎌倉幕府の執権政治の方が機能したのである。外国に憧れることなく、自国の現実を直視し、その現実の中から生み出されていった政治システムこそが機能するものなのである。

●イギリス王室を手本とする勿れ

 日本には「イギリス王室は世界に存在する王室の中でも最も素晴らしい王室だから、日本の皇室もイギリス王室を手本として学ぶべきである。」という意見が多数存在する。この考え方は根本的に間違っている。『ダークヒストリー』を読むと、とてもではないが日本の皇室はイギリス王室を手本としてはならないことが解る。

①帝王学が貧困

 まずイギリス王室には大した帝王学が存在していないということである。日本なら『書経』『史記』『論語』『大学』『中庸』『貞観政要』、『古事記』『日本書紀』『日本外史』などがあって、皇族の方々はこれらの書物を読むことが義務であり、自然と帝王学が身に就くのである。ところがイギリスにはこれらに相当する書物がないのである。

②イギリス国教会があるために、国王や女王が宗教に拘束されない

 イギリスでは国王や女王がイギリス国教会の首長であるために、宗教に拘束されないという異常な環境が存在するのだ。だからこそ王室がスキャンダルまみれになっても、宗教家がそれを批判して来ないという状況を生み出してしまったのである。日本では天皇は皇室神道を独自にやっていても、神社神道を支配している訳ではないので、常に神社神道の側から批判を受ける存在なのである。だから皇族の方々が余りにも道徳に悖る行為を行って来ないのである。

③国王が一夫一婦制を行うのは無理がある

 イギリスではキリスト教を受け入れてしまっために、一夫一婦制を取るのだが、国王が一夫一婦制を取るのは無理があるのである。どの国王を見ても愛人を作るもだし、事実上の一夫多妻制の結婚を行っているものなのである。一夫一婦制に取りつかれて、愛人を作るのが悪いと考えるのではなく、寧ろ愛人の存在を肯定し、正室に男子が恵まれない時は、側室が産んだ男子を王位継承者に迎えるというような柔軟な態度を取るべきなのである。

 もう一つ付け加えるのなら、イギリスの食事が悪すぎるのである。恐らく肉食過剰になっているために、どうしても凶暴な子供が育ってきてしまうのである。肉をそんなに沢山食べるのなら、野菜も大量に取らねば、正常な感覚を持った子供が育って来ないものなのである。そして定期的は断食をやって、肉食で疲れた内臓を休ませる必要性があるのである。

●結局、伝統的な皇室を貫く方が巧く行く

 イギリス王室にはイギリス王室なりの歴史があるし、日本の皇室には日本の皇室なりの歴史があるのだ。『ダークヒストリー』が面白いのは、イギリス王室は外国の王室に影響されることなく、自分たちの遣り方を貫いてしまったことこそにあるのだ。だからこそスキャンダルまみれではあっても、登場人物たちが非常に魅力的で面白いのである。

 日本の皇室はイギリス王室よりも古く、大体2千年の歴史を持つものである。それゆえ皇室には様々な古臭い制度を多数持っているものである。それは進歩を絶対的価値と看做す人々からは嫌われてしまい、そのような古臭い制度を捨て去るべきだという意見が強硬的に主張されるものだ。

 しかし皇室から古臭い制度を取り払ってしまったら、一体何が残ると言うだ。天皇と皇后が剥き出しになって存在していても、なんの有難味もないのだ。天皇や皇后だからこそ偉いのではなく、皇室が古臭い制度を守り通しているからこそ、天皇も皇后も光り輝くのである。

 皇室の行事が古臭いと思われていても、皇室の昔ながらの遣り方を貫けば、いずれそれを支持する人々が出て来て、結果的に莫大な利益を得ることができるのである。新しい物は一時的に人気を得ることができるが、人々は新しい物に飽きるのも早いのである。そのような不安定な物に皇室は立脚すべきではないのだ。

 『ダークヒストリー』を読むと、イギリス王室の面白さが解って来るし、逆に日本の皇室の有難さも解って来る。良書というものは、ただ単に知識を読者に与えるのではなく、その読者に様々なことを考えさせるものなのである。だからこそ是非とも『ダークヒストリー』を買って読んでみて、自分なりに考えを張り巡らしてみることだ。その考えがどのようなものであれ、この本の定価以上の利益を確実に得られるものなのである。

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