出世はいつ決まるのか?
●入社時と入社3年以内
会社員であるのに、多くの人たちが知らないのが「出世のシステム」だ。自分が会社の中でどのように出世して行くかで仕事内容が決まるものだし、給料だって決まるのだ。仕事内容がどのこうの、給料がどうのこうの言っても、それは出世のシステムが決めるものなのであって、出世のシステムを知らずしてそれらを論ずるべきではないのだ。
実は、出世のシステムというのはどの会社も非常に似通ったものになっているのだ。
①入社試験
まず新入社員というのは、入社時に「一般職」と「総合職」に選別される。この選別は大企業ほど厳しくなり、中小企業だと曖昧になってくる。総合職というのは「幹部候補生」と言い変えた方が解り易く、この人たちが10年後以降に管理職に成って行くのだ。しかし一般職で入社しても、才能がありさえすれば総合職への変更は可能で、この辺りは非常に融通が効いているのだ。
②入社3年以内
入社3年以内というのはどこの会社でも新入社員を雑用係として使って来るのだが、この時期に新入社員の有能無能を選別して行くことになる。入社試験での得点と、入社3年以内の得点で以て、殆どの出世は決まるものなのである。この時点で優秀と看做された者が出世街道を驀進して行くことになる。
逆に言えば会社を辞めるのなら入社して3年以内ということになる。人間にはその仕事に対して向き不向きがあるので、自分がこの会社には向いていないと思うのなら、早目に退職して、次の会社を探し出すべきなのである。日本では終身雇用ばかりが注目されるのだが、転職する人々も諸外国同様に多く、転職によって成功することも有り得るのだ。但し転職は35歳までであって、それ以降も転職を繰り返すと、会社員としては厳しい扱いを受けることになる。
③転職組も事情は同じ
転職組は中途採用されたからといてt、何かしら不当な差別を受けることはない。転職組も事情は同じなのであって、入社時と入社して3年以内にその能力が明確になり、優秀な社員は出世街道を歩むことになるのだ。転職組で社長にまで上り詰めたという人たちは結構いるものなのである。
既婚女性が結婚退職したり、妊娠や出産を機に退職した場合、育児終了後に再就職して来ることになるのだが、もしもどこかの会社で正社員として採用されたら、そう簡単に転職しない方が無難である。既婚女性の転職は男性の転職よりも緩やかに扱われるものだが、それでも育児終了後に働き出し、矢鱈と転職を繰り返しているのなら、その能力や忠誠度を大いに疑われることになるのだ。
●出世レースは「勝者優勢」「敗者復活」の組み合わせ
どの会社の人事部長も「社員は入社時と入社3年以内で7割方出世が決まる:」と言う。後は人事異動を繰り返し、満遍なく仕事をこなしていくことで、多様な能力を身につけさせて行くのだ。多くの人たちは先に能力を持って来てしまうからこそ、出世のシステムを把握できないのであって、能力というのは後付けなのである。それよりも遥かに大事なのは、自分がこの会社に向いているか向いていないかなのである。
総合職なら2年おきに人事異動が繰り返されるが、出世スピードを余りに気にしない方がいい。出世スピ-ドが速いからといっていっていい訳ではないし、出世スピードは遅いからといって悪い訳でもないのだ。確かに入社時と入社3年以内で「この者は優秀である」と認定された者は出世で優遇されるが、ただそれだけのことだ。
出世が如何に早くても、それは「勝者優勢」でしか過ぎないのだ。出世レースでは早く出世し過ぎた者がこけるという現象が起こって来るのだ。会社員として最も必要なのは組織戦の遣り方をマスターすることなのであって、そのためには「指導術」であったり、「分業の回し方」「根回しの仕方」「社内での人脈」というものがどうしても必要になって来るのだ。出世スピードが余りにも早いとこれらのものをすっ飛ばして出世して行ってしまい、それで自分が管理職になった時に大失敗をやらかしてしまうのだ。
出世レースには左遷が付き物だが、左遷されても真面目に仕事をこなすことだ。左遷は閑職に回されることになるのだが、この閑職ほど実は非常に動き易い部署なのである。しかも上からの命令は殆ど下されないから、結構自由に仕事をすることができるのである。そこで英気を養っておけば、社内の中央で問題があった場合に栄転という形で返り咲くことができるのだ。
出世レースは勝者優勢と敗者復活の組み合わせなので、だから面白いのだ。マスコミは「日本は敗者復活ができない」とほざいているが、どの会社も敗者復活を当たり前のようにやっているのだ。人間というのは一度ドン底に落ちると非常に強くなるので、そのような者を抜擢しない訳がないのだ。
●年功序列であっても能力主義が加味される
日本の会社の殆どは年功序列を採用しているものだが、これは年齢差別ではないのだ。年齢に応じて功績を積み重ねて行かなければならないシステムなのである。だから幾ら高齢であっても、功績を打ち建てることができなければ、平社員のままだ。社員に求められているのは、人事異動の度に確実に功績を打ち建てるということなのである。
人事異動は2年おきに行われるので、新たな部署に行った場合、その部署での仕事を早くに覚えてしまい、次の人事異動が起こる前に何かしらの手柄を立てておくべきなのである。時間は非常に限られているのであって、チンタラと仕事をこなしていると、なんの功績をも打ち建てることができず、次の人事異動が行われてしまうのだ。
年功序列は或る意味、能力主義で補強されているのだ。人事異動の度に能力をアップさせつづけなければならないという考え方なのである。能力がアップしたのなら、何かしらの功績を打ち建てることができる筈だという考え方になっているのだ。これはアメリカのような成果主義ではなく、ただ単に成果を打ち建てればいいだろうとは考えないのだ。日本の会社の社長たちが常に口にするのは「適材適所」で明らかに能力重視なのだ。能力がありさえすれな成果なんて幾らでも作れると考えているのだ。
日本の会社の中で≪出世の秘訣≫があるとするなら、それは「常に変化し続け能力を上げて行くこと」なのである。人事異動の度に自分を変化させ、能力を向上させて行けばいいのだ。人事異動に不満を思ったり、新たな部署で能力を上げて来ないというのは、出世を放棄したと看做されて仕舞うものなのである。
既婚女性の場合、結婚⇁妊娠⇁出産の流れでは明らかに出世スピードが遅くなるので、時短勤務が終わるまでは絶対に無理をしないことだ。この間は左遷されても仕方がない時期なのであって、それならこの期間を使って新たな能力を身につけるべきであって、そうやって出世して行く遣り方を取るべきなのである。男性社員たちは結婚しようが子供ができようが猛スピードで出世街道を突き進んで行くが、決してそれに歩調を合わせてはならないし、嫉妬もしてはならないのだ。もしも既婚女性が男性社員と同じペースで進んで行ったら、結婚生活が崩壊するのは火を見るよりも明らかなことなのである。
●異常な人事が行われるようになると、会社は破滅して行く
会社員なら解ると思うが、管理職の出世は大体、本人の能力どおりに進んで行く。人事部は充分に調査した上で人事異動を決めて来るので、自分の能力を遥かに超える部署には決して送られないものだ。人事異動では多少問題はあったとしても、大概は穏当なものになるものである。
しかし会社で或る出来事が起こり始めると、社内の人事異動は異常なものになってしまう。おかしな人事は必ず社内で噂になるものであって、出世できなかった者たちの不満が蓄積されて行くことになるのだ。異常な人事が当たり前のように行われると、会社は必ず破滅して行くことになる。
①閨閥
社長の息子や娘、それに親戚や娘婿など、この手の閨閥が幅を利かして来ると、人事異動が異常化して来る。中小企業なら閨閥があっても仕方がないが、株式市場に上場した企業では閨閥を徐々に廃止して行った方がいいのだ。創業者の子孫がいつまでも社長に居座っているようであるなら、その会社の経営は悪化して行くことになるのだ。トヨタ自動車では創業者の子孫が社長に返り咲いたら、リコール問題が発生し、それで大損害を被ってしまったのだ。
②天下り
天下りも会社の経営を狂わせるものである。普通、天下りというと高級官僚が天下って来るということを考えてしまうものであるが、高級官僚がコネを使って自分の息子や娘を入社させるというのも、天下りの1つなのだ。JALがおかしくなってしまったのは、まさにこれを遣り続けたからこそであって、高級官僚の娘たちをスチュワーデスとして採用しなければならなかったからこそ、いつまで経ってもちゃんとしたサービスができなかったのである。
③三田会
世間では殆ど知られていないが、会社の経営を完璧に狂わすものに「三田会」がある。三田会とは慶応大学の卒業生たちが作る組織のことであって、その会社に慶応大学卒のOBやOGがいたら三田会が結成され、そこで情報が遣り取りされるようになり、社内に於いて社長を生み出すことを仕出かすのだ。
東京電力が福島第一原発の事故であれほど醜態を晒したのは、東京電力の上層部が三田会に乗っ取られ、順当な人事が行われなかったからなのである。明らかに社長としては不適格な人材である清水正孝が慶応大学出身という理由だけで抜擢されたのである。大震災直前には夫婦同伴で奈良に観光旅行に行き、そのために大震災が発生したら東京の本社に戻るのが遅れ、しかも2度に亘って入院し、辞職が決まった時には今回の原発事故が自分の責任であるとは言わず、東京電力の風土を問題にしていたのがら、もう完全に飽きれてしまう。自分が社長なんだから権力を最大限行使すれば、たとえ原発事故が起こってもそれを処理できるものなのである。
「閨閥」「天下り」「三田会」は会社にとって「死の病」みたいなもので、もしも自分が勤めている会社がこの死の病に冒されていたら、余り出世に拘らないことだ。そんな会社では出世して行ったとしても、能力ある者が馬鹿を見ることになるからだ。それよりもとっとと転職してしまい、自分の能力を発揮できる会社を探し出した方がいいのだ。自分に能力がありさえすれば、日本の会社なら出世して行くことは可能なのだ。
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