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禅宗の逆説:『迷える者の禅修行』

●お寺の中に仏教がない!?

 オウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こした事件は日本の全ての宗教家たちに戦後最大級の衝撃を与えた。しかし本物の宗教家なら新興宗教団体がサリンを撒いて殺人をしたことに衝撃なんて受けなかったことだろう。オウム真理教は確かに殺人を行ったが、キリスト教が歴史上行って来た大量虐殺に比べれば遥かに少ないものだからだ。

 本当の問題はオウム真理教がそれまでの新興宗教団体と違って、大卒や大学院卒の優秀な若者たちを惹きつけ、しかも彼等や彼女たちが真剣になって宗教活動に取り組んでいた事実であろう。なぜそれほどまでに優秀な若者たちが既成仏教に行かず、オウム真理教に行ってしまったのかといえば、オウム真理教の或る信者がこういったことに凝縮されている。

 「お寺には仏教がなかった。」

 この言葉ほど、日本の仏教界の現実を言い当てたものはないであろう。確かに日本には仏教寺院が沢山あるし、僧侶たちだって大量にいる。本屋に行けば仏教経典や仏教の解説書だって幾らでも売っている。しかし肝腎の仏教がどこにもないのである。仏教を消滅させてしまったのは仏敵によって行われたのはなく、僧侶たち自身によって行われたのである。

 なんでお寺から仏教が消えてしまったのかといえば、僧侶たちが「戒律破り」を行ったからなのである。僧侶というのは出家して、戒律を順守した生活を送るからこそ、僧侶たりえるのである。それが鎌倉時代に親鸞が戒律破りをし始め、その戒律破りを掲げる教団は浄土真宗として成立し、明治維新後は全ての仏教教団が仏教破りをするようになってしまったのである。今からでも遅くはないから、親鸞を仏教界の最大の犯罪者とし、浄土真宗を解散させ、出家せず戒律を順守していない僧侶たち全てから僧侶の資格を没収すべきなのである。

 もう1つの理由は「檀家制度」である。檀家制度は飽くまでも江戸幕府が作った制度なので、明治維新が起こったのなら、この檀家制度も廃棄すべきだったのである。この檀家制度がある限り、仏教は葬式仏教になってしまうのであり、幾ら若い僧侶たちが改革の声を上げてもなんの改革もできないのである。檀家制度は確かにお寺の財政を支えるが、お寺から仏教がなくなってしまうという非常に危険な制度なのである。

 トドメは僧侶の「世襲」である。僧侶が戒律を守らずきちんと出家せず、結婚して子をなし、その子にお寺の住職を継がせようとするから、仏教が益々腐敗して行くのである。仏教は平等を唱える以上、世襲なんて認められないのであって、世襲をしてしまえば僧侶自体が完全に腐りきってしまうことになるのだ。仏教は世襲せず、仏教の中に新鮮な血液を入れ続けて来たからこそ発展して来たのであり、世襲してしまえば新しい人材を拒絶するということになり、仏教それ自体が消滅してしまうものなのである。

●自分が真剣になれば必ず道は開ける

 こういう状況下に於いて国内から仏教を改革できる人材など出て来る訳がない。若い僧侶ほど自分が僧侶として教育されて行く過程の中で、現在の仏教界の状況をそのまま肯定してしまうからだ。だからこの腐敗しきった状況を打破するためには、外国から優秀な人材を引っ張って来るしかないのだ。

 ネルケ無方著『迷える者の禅修行』(新潮社)は日本の仏教界に対して決定的な批判をぶつける最良の書だといっていい。日本の仏教界が根本から腐敗している以上、下手に仏教界の改革を真面目に唱える書物よりも、この手の自分の実践の中から学び、考えた書物の方が効果はあるのである。

   迷える者の禅修行 ドイツ人住職が見た日本仏教

 この本を禅を好きな外国人が興味半分で書いたとは決して思わない方がいい。彼自身、曹洞宗のお寺と臨済宗のお寺の両方で修行し、安泰寺の住職にまでなったからだ。外国人だから特別に優遇されてなったのではなく、自分の実力によって伸し上がって行ったので、きちんとした内容が書かれてあるのだ。

 俺がこの本を読んで感動したのは、彼が「生きる意味を問うことは無意味だ」と悟ったことにある。若者なら必ず人生の意味を問うものだ。しかしそうやって人生の意味を問うても答えが出て来るのではないのだ。彼は過酷な禅修行の中で「自分が生きている!」ことに気付いたのであり、それがこの問題を解決することができてしまったのである。

 俺も大学生の頃には人生の意味を問うていたのだが、或る事件を切っ掛けにこの問題を解決してしまった。それは登山の最中にバテしてしまい、たった30分の山道をヘトヘトになって1時間近くかけて歩かざるを得なくなってしまったのだ。この時、頭の中は真っ白になってしまい、生きる意志だけが自分の体を突き動かしていたのだ。ネルケ無方は俺が大学生の時に悟ったことを、日常生活では悟ることができず、禅修行の中で悟ったのである。

●編集者との出会いは運不運

 この本は結構内容が深い癖に、俺に言わせると辛うじて合格点を与える程度の本なのである。なんでそうなってしまったのかというと、ネルケ無方が書いた文章を、新潮社新書編集部の人が滅茶苦茶に切り刻んでしまったからなのだ。ネルケ無方本人が大事だと思った文章をもバッサリと切ってしまったので、読者としてはイマイチなのだ。著者本人は本物の人間なのに、碌でもない編集者によって面白みが半減してしまったのだ。

 作家にとって編集者との出会いは運不運で決まるものだ。最初から腕のいい編集者に出会える者もいれば、最初から最悪の編集者に出会ってしまう者もいるのだ。ネルケ無方は運が悪かったというべきであり、最悪の編集者に出会ったことが、自分の本の価値を大いに下げてしまったのだ。

 三輪明宏さんが『紫の履歴書』を書いた時、編集者が原稿の手直しを行ったのだが、三輪明宏さんはカンカンになって怒鳴り込んで来て、原稿をそのままの形で出版するように迫ったのである。そうやって原稿の良さを守り通し、あの名作といえる本を生み出したのである。ネルケ無方は自分が外国人だから日本語の文章の間違いを指摘されるのではないかと自分が思っていたからこそ、こういう悲惨な目に遭ってしまったのだ。

 書籍の編集者がすべきことは、著者の書いた文章に手を入れることではないのだ。本の題名と本の内容を決めることなのである。誤字脱字をチェックしたり、文法上の間違いを指摘するのは校閲部の仕事であって、編集部の仕事ではないのだ。本というものは、題名と内容で全て決まってしまうのであり、そこにこそ全エネルギーを投入すべきなのである。

 ネルケ無方は外国出身だし、日本語の書物としては初めての書物なので、別に日本語が下手糞であっても構わないのだ。寧ろ日本語が下手糞であった方が好感を持てるものなのである。大事なことはネルケ無方がこの世に言いたいことなのであって、それがダイレクトに伝わってくればそれで充分なのである。

●「内部社会の法理」の限界

 日本国内でも禅に憧れる若者たちもいるし、外国人でも禅に憧れる若者たちもいることであろう。禅というものは若者が抱える「青春の悩み」を巧く解決してくれる何かがあるのだ。青春時代を遊びで浪費してしまうより、禅寺の中で禅修行をして昇華してしまった方が、自分の人生に莫大な利益を与えることであろう。

 しかし禅寺で禅修行をした若者たちの殆どが禅寺に失望して去って行ってしまうのである。その理由は簡単で禅寺に於いて修行システムがきちんと整備されていないからなのである。曹洞宗も臨済宗も鎌倉時代から存在する以上、修行システムを改善し続けるべきなのであって、如何に効果的に禅修行を構築して行けばいいのだ。それをしないからこそ、多くの若者たちが脱落して行くことになるのである。

 現在の禅寺では僧侶たちの最低限の権利さえ無視した行為が平然と行われているのである。特に先輩の僧侶が後輩の僧侶に行う「イジメ」がひどいのであって、これでは僧侶たちがまともに修行すらできないのだ。これを禅寺が自発的に改革しても、その改革は絶対に成功しないのだ。外部の機関がチェックしない限り、禅寺の異常な行為を根絶することはできないのだ。

 法学では「内部社会の法理」というのがあって、禅寺のような組織で問題が発生した場合、その組織の自発的な解決に任せるというものなのであるが、イジメが起こっている以上、内部社会の法理では限界があるのである。例えば学校でイジメを解決しようとしても、結局、先生たちは何もせず、イジメられた生徒が自殺しなければならなくなってしまうように、腐った組織はきちんとした改革ができないものなのである。イジメが起こっている組織には、最早、「自治能力はなし!」と看做すべきであって、まずは弁護士からなる外部機関が介入し、それでも解決できないなら警察が介入すべきなのである。

 禅宗は曹洞宗も臨済宗も禅修行だけが修行と看做すのではなく、生活も修行と看做すのである。だったら修行だけしていればいいのではなく、その修行に合理性を持たせ、マニュアル化して行けばいいのである。「質の高い修行こそ、優れた僧侶を作る」のであって、この視点が抜けてしまえば、幾ら修行をしたとしても碌でもない人間しか生まれ来なくなってしまうものなのである。

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コメント

こんばんは(^-^*)/タマティーさん
13日ー16日で坂東三十三観音の栃木・茨城辺りを回ってきました。千葉に行くのは12月かな〜

その間、考えてました。
『生きる意味』生きるって何だろう?と。
さらに、お寺では、いかにもご利益を謳い物品の販売や、ご祈祷…。なんだか胡散臭さを感じつつ、そんな私は罰当たりだから子供ができないのだ…と咄嗟に自分を戒め神仏に媚びを売る(>_<)
観音様は女性なのか男性なのか?女性なら、子供を生み育てたい気持ちを分かって力になって下さるかな〜?

実は胡散臭っ!と少し思ったけど、毎日願かけると願いが叶う…を信じて(藁にもすがる思い)お守り授かってきました。『願いが叶った方がお礼参りによくくる』『9年子供ができず悩んだ方が妊娠した』につられました(^^ゞ

実は今週期、未だかつてない美しい低温期をすぎ、高温期!と思いきや有り得ない酷いガタガタ&ついに5日も早く生理きました
病院で検査をお願いしました。先生には『年齢も高いし妊娠はほぼ無理。周期24日が出てくるのは閉経の始まり。検査結果にショック受けると思うよ』って言われました。今月も来月も計算して仕事入れてたのに超ガッカリ…排卵日頃に仕事入ってるから次はチャンス活かせず時間ないのに…
旦那は『♪運も実力〜♪』って訳分からんし
『諦めんくていいだよ!また頑張ろっ』と慰めてくれる旦那のためにも、前向きになれる秘策あれば是非ご教示お願いしますm(._.)m
私に足りないのは、信じて待つ力・諦めず待つ力・前向きな気持ち・プラス思考・忍耐力でしょうか?
タマティーさん、どうかお願いします。

投稿: はぐまろ | 2011年9月17日 (土) 21時39分

 はぐまろさんね、はぐまろさん自身に何か足りないから妊娠できないのではなく、何か過剰な部分があるから妊娠できんのですよ。

 その過剰な部分というのは、「頑張り過ぎている」ことですよ。

 不妊症の女性たちによくあるパターンなのですが、妊娠することを焦る余りに、夫のことをきちんと配慮していなかったり、家事が疎かになっていたり、趣味を何1つ持っていなかったりするわけですよ。
 こうなると自律神経が交感神経にシフトしっ放しになるから、幾ら不妊治療を受けても、妊娠できなくなってしまうんです。

 たまにはね、妊娠のことなど忘れて、夫婦でパッコンパッコンしてしまうべきですよ。
 いつも大脳辺縁系ばかり使っているから、妊娠を司る脳幹が巧く機能していないんですよ。
 だから「12時間耐久メイクラブ」をやるべし!
 朝起きたらパッコンパッコン!
 お昼になってもパッコンパッコン!
 夕方になってもパッコンパッコン!
 まあ、せいぜい休憩は昼食の時だけで後はひたすらやりまくればいいんですよ。

 大体、はぐまろさんはまだまだ新婚な訳だから、休日を1日丸丸潰して、そういうことに費やしてもいいんじゃないかな?
 こういうのは赤ちゃんが生まれたらさすがにできんですからね。
 今の内、夫婦二人だけでできることは全て遣り尽くしておかないとね。
 はぐまろさんが旦那さんと夫婦の会話がイマイチ噛み合っていないのも、夫婦としてすべきことをきちんとしていないことがあるからなんだと思うよ。

投稿: タマティー | 2011年9月18日 (日) 06時42分

タマティーさん、お返事ありがとうございます
旦那に話したら『朝から晩までは無理だ〜』って笑ってました。そう、うちは淡泊夫婦なので数日に1回を月一がやっとなんです(>_<)

趣味ですが、先生に見込んで頂いてる書道は『私がしっかりしてる内に免許を取って!(私の母にも取らすよう話してる)』と言われてるので、先生の期待に応えたいと力み、ピアノはプロにはなれないけど本当に上手くなりたいので真剣…
ってことで趣味でリラックスするどころか、交感神経バリバリ働きっぱなし?!なんでしょうか…
両方とも、調子いいと充足感で満たされ気持ちいいのですが…←これが自己満足ってヤツ?

いづれ、本当に子供を諦めざるを得ない日がくるかも。私以外にも子供を授かれず、年齢を重ねても苦しんでいる人は沢山いるのです。愛の天使タマティーさん、そんな世界の人達を済って下さる記事を待ってます。(←1年後のはぐまろ)

投稿: はぐまろ | 2011年9月18日 (日) 22時11分

 はぐまろさん、回数が足りんのじゃ~!
 12時間耐久メイクラブが不可能なら、休日の前夜に1発、休日の朝に1発、休日の夜に1発、せめてそれくらいはやった方がいいです。
 旦那さんはスタミナがなさそうなので、ニンニク料理を作って、意図的にセックスをしたくなるように仕向けるべきですよ。

 それと、はぐまろさんはそんなに習字が巧いんですか!?
 字が綺麗だと、人生で本当に得ですよ。
 字が綺麗だけで性格がいいって言われますからね。
 タマティーなんか悪筆なので、字に関して他人から褒められたことなんて1度もないですからね。
 先生の言うように免許は今の内に取っておいた方がいいですよ。
 後後、何かのチャンスを齎すこともあり得ますからね。

 因みに自律神経のことはご心配なく。
 趣味は基本的にリラックスするものなので、交感神経にシフトしても、すぐさま副交感神経に戻るようになるんです。
 趣味が1つだけでなく、2つもあるんだから、夫婦関係で揉めても、趣味で息抜きができれば、夫婦関係は改善していくんじゃないかな?

投稿: タマティー天使 | 2011年9月19日 (月) 06時55分

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