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急がば回れの経済学 ~経済学者とエコミノミスト~

●経済学を理解せずして株式投資をするな

 株式投資をするなら、日本の経済全体がどのような動きをするのか科学的に理解しておかなければならない。科学的な裏付けのない株式投資は、それがどんなに成功したとしてもまぐれ当たりにしかすぎないのだ。日本の経済は、「次はこうなる」「次はどのような産業が発展する」と科学的な言葉で言えるからこそ、株式投資を安全に行って行くことができるようになるのだ。

 ところが日本人は誰もが経済学をまもともに学んでいないのだ。日本では戦前、社会主義の悪影響をモロに受けてしまったために、経済学と言えば社会主義の観点から述べた似非学問でしかなくなってしまったのだ。だからこそ学校や大学で幾ら経済学を勉強したとしても、その学術水準は先進国の経済学とは比べ物にならないほど低レベルにあるのだ。

 このため経済学を学ばずして株式投資をする投資家たちが跡を絶えないのであるが、そのようなことは株式市場が大きくなった現在では非常に危険であって、外国の機関投資家たちのいい餌食になってしまうのである。日本の経済学者たちがまともに経済学の研究をして来なかったツケは投資家たちにまで及んでいるのだ。

 株式投資に急ぐ者としては経済学を悠長に学んでいられないと思うが、経済学をきちんと学べばこれほど株式投資に役立つことはないのだ。なんせ日本経済の全体の動きが解るようになるので、どこの企業に投資すれば大儲けを狙うことができると簡単に解ってしまうのである。

 かといって経済学者の意見を鵜呑みにするようなことがあってはならない。経済学者は科学的に経済を研究しているだけであって、現場に疎いのである。そこで登場して来るのがエコノミストたちなのであって、経済学者たちとエコノミストたちの双方の意見を聞くことで、株式投資を安全な形で行って行くようにすべきなのである。

●一流の経済学者

 まず経済学を勉強したいのなら、経済学の古典の最高峰であるアダム・スミスの『国富論』を読んでしまうことだ。学生の頃なら難しいと思ってしまうものだが、自分が大人になってから読むと、アダム・スミスは決して難しいことを言っておらず、平易な語り口で経済を研究していることが解るのである。

 『国富論』は『聖書』と同じく、超有名であるのにまともに読まれていない書物であるのだ。殆どの経済学者たちは『国富論』をきちんと読まずに経済の研究をやっているとしか思えないのだ。経済学は『国富論』こそが原点なのであって、この書物から余りにも逸脱するような意見はどう考えても怪しいものなのである。

 一方、現在の経済学を知りたければ、N・グレゴリー・マンキューの『マンキュー経済学』(東洋経済新報社)を必ず読むようにすることだ。この本に関しては必ず読めと言いたいほど重要な書物であるのだ。この本は彼自身の大学の講義から出て来た書物なので、大学の講義を受けるような感覚で読み進めて行くことができるのである。マクロ編とミクロ編の2つがあるので、じっくりと読み進めて行くことだ。

 マンキューは経済学の定義を簡単な言葉で言い表している。「経済学とは限られた資源を管理するための学問である」と。日本の経済学者だと貧富の格差を解消するために経済学の研究を行っているから、だからこそまともな研究成果が出て来ないのである。経済資源という物はどれも有限な物ばかりなのである。その少ない経済資源を管理するからこそ経済を安定的に発展させて行くことができるようになるのだ。

 もしもあなたが大学で経済学を学んだのなら、自分の本棚から昔使った経済学の本を引っ張り出して、『マンキュー経済学』と読み比べて欲しい。如何に日本の経済学者たちがまともに経済学を研究せず、外国のいいとこ取りをしながら、滅茶苦茶な意見を言っているかが解るものだ。経済学者たちの知的レベルの低さが、日本経済の悪影響を与えていることを解っていないのだ。

●一流のエコノミスト

 経済学者たちが理論経済学を担当するなら、エコノミストたちは実践経済学を担当することになる。実践経済学はその性質上、大学で教えることができない学問なのである。エコノミストは経済の現場にいるからこそ、的確な情報を伝えて行くことができるのである。このため投資家たちは大学で経済学を勉強しなくても、エコノミストたちのお世話になるのである。

 日本のエコノミストの筆頭は「高橋亀吉」である。というか高橋亀吉が出て来たことで、日本で実践経済学が生まれたといっていいのだ。まずは彼の処女作の『経済学の実際知識』(白揚社)を読み、その後『私の実践経済学』(東洋経済新報社)でも読んでみることだ。難しいことは何1つ言っていないので、素人でも実践経済学が解るようになっているのだ。

 高橋亀吉が凄いのは、『日本近近代形成史』を書き現わし、日本の経済の発展の歴史を実践経済学の立場から研究しているということだ。経済学者も日本の経済史を研究しているが、これほど出来のいい経済史は他にないのだ。エコノミストだからこそ、イデオロギーに惑わされず、きちんとして経済史を書くことができたのである。

 現在活躍しているエコノミストたちの中で最も優れた人物は「長谷川慶太郎」である。長谷川慶太郎は大量に本を書いているので、自分が気に入った本をどんどん読んで行けばいい。例えば『アメリカの警告』(東洋経済新報社)ではアメリカの覇権は100年続くと喝破しており、ということは今後、デフレは100年間続くということなのである。

 それゆえ現在、政府が行っているデフレ対策なんて絶対に成功しないのであり、政府がデフレ対策をすればするほど日本国民は逆に貧しくなってしまうのだ。デフレが物価が下がって行くことだから、日本国民は所得が増加しなくても、安い値段で商品を買えることができるので、豊かな生活を実現できるのである。エコノミストの意見を無視すると、政府といえども余りにも愚劣な政策を取ってしまい、その被害が全国民に及んでしまうことになるのだ。

●理論経済学も実践経済学も自国の経済から生まれて来るもの

 理論経済学も実践経済学も自国の経済の中から生まれて来たものなのである。日本では理論経済学が悲惨で、実践経済学が発展しているのは、経済学者たちは外国の理論を鵜呑みにして日本経済を研究したのに対して、エコノミストたちは日本経済の実態を直視することで日本経済を研究して行ったからなのである。

 確かに理論経済学ではその経済理論の中に普遍性を持つものがあるから、外国生まれの経済理論でも、日本国内に当て嵌めることができる。しかしなぜか外国の理論を日本に当て嵌めても巧く行かないのだ。経済自体が普遍性を持っていないので、どうしてもその国独自の動きをしてしまうのである。

 例えば戦前は社会主義に理論を使って国家総動員体制を築き上げてのだが、その基本法となった「国家総動員法」を制定してから、日本経済は制定時よりも経済が成長したことはないのだ。しかも戦争で国民が大損害を受けたので、日本国民は塗炭の苦しみを背負うことになってしまったのである。日本が経済成長を開始するのは、国家総動員法を廃止してからなのである。

 戦後でも小泉純一郎内閣で「竹中平蔵」を登用し、アメリカの経済学を鵜呑みにして経済改革を進めたのだが、結局、デフレ不況を悪化させただけなのである。折角、小泉純一郎首相は郵政民営化に大成功したというのに、竹中平蔵のために自民党の支持者たちを大量に失ってしまったのだ。

 軍部や自民党よりも恐ろしいのは民主党であり、民主党には経済学の意見が何も取り入れられていないのだ。経済学が解っていないからこそ、馬鹿の1つ覚えの如く「デフレ不況の脱却!」を唱えているのだ。このため予算を組んでも単なる税金のばら撒きになってしまい、日本経済に対してなんの効果もないことを繰り返しているのである。日本経済の3分の1は政府の予算で動いているために、ここが経済的に効果のないことをやっていれば、経済は低迷して景気は悪化し、当然に日本国民が貧しくなってしまうのである。

 日本は経済学者のレベルが先進国の中で一番低いという事実を知っておいた方がいい。その反面、エコノミストたちのレベルは非常に高いのであって、日本のビジネスマンたちが経済学者の意見を聞かず、エコノミストたちの意見を聞いたからこそ、日本経済は発展して来たのである。特に経済学的無知は政治家たちが作る経済政策を最悪なものにするのであって、絶対に政治家たちの景気対策には期待しない方がいいのだ。株式投資をしているのに、「政府の景気対策はなっておらん!」と怒り出すようでは、自分の株式投資で失敗してしまうことになるのだ。

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