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老害を防ぐための特別桃源郷

●高齢化社会では老害が深刻な問題になる

 昔から「不老長寿」というのは人々にとって理想とすべきものであった。人間はこの世に生まれた以上、必ず死ぬのであって、肉体的に成長し続けるのは19歳までで、それ以降はどうやっても老化して行くし、いずれは死ぬのだ。人間の宿命として定められた「老化」や「死」に対して、それらとは全く正反対の不老長寿を望むのも、人間の欲望の1つの現れなのである。

 明治維新以降、日本人の寿命は着実に上昇していった。

 幕藩体制を潰して、全国的な統一政府を作り、国内に平和と繁栄を齎したことと、鎖国をやめて開国し、貿易を活発にしたことで経済が豊かになり、国民の食生活が向上したこと、更には上下水道が完備されて、綺麗な水が供給され、汚水がきちんと処理されるようになったからなのである。時代の流れが解っていれば、平均寿命の上昇は決して医学の進歩によるものではないということが解る筈だ。

 平均寿命の上昇は理想の実現ではあっても、その反面、弊害も出て来るのだ。

 その代表例が「老害」である。

 高齢化社会では老害のために社会そのものが駄目になっていく可能性があるのだ。老人が個人レベルでは働くなら定年退職などせず、死ぬまで働き続けても別に構わない。しかし会社という組織になればそうはいかず、老齢の社員たちが定年退職してくれるからこそ、社内で新陳代謝が起こり、活性化していくことができるのである。

 如何なる会社であっても、80歳以上の者が会社のトップに居続けることは絶対に無理がある。会社の経営陣には、一応「70歳定年制」を基本とすべきであって、状況に応じて変化したとしても70代のどこかで退職させるべきなのである。白髪の老人が会長として留まっていると、会社はなんの改革も施されなくなり、確実に競争に負けてしまうことになるのだ。

 若い社員たちにしてみれば、会社の経営陣が高齢化してしまうと、それに反比例する形で自分たちの給料が上がって行かなくなってしまうのである。当然に年齢の高い社員の方が給料はいい訳だから、実際に現場で働いている社員たちの給料が上がらないという深刻な弊害が発生してしまうのである。

●そこで特別桃源郷

 この老害を止めるためには、会社の経営者たちは80歳を超えて代表取締役や取締役の地位に就いてはならないと法律で禁じる措置を取るべきなのである。老害を引き起こしているのは会社の経営者たちなのであって、これに対して自浄作用を求めるのには無理があるというものなのだ。

 もう1つは退職する経営者たちに対して退職金や年金を手厚くし、退職しても生活に困らないようにさせるべきなのである。実際の問題として、退職金や年金が少ないからこそ、老齢の経営者たちがいつまでも会社の上部に居座ってしまうのである。累進課税式所得税でごっそりと税金に持っていかれてしまうと、僅かな金額しか残らないものなのである。

 最終手段としては、80歳を超えた経営者を逮捕し、刑務所に行くのではなく、「特設桃源郷」に行って貰うようにすべきなのである。特設桃源郷では酒池肉林の毎日が約束され、お酒は飲み放題、豪華な料理も食べ放題。お爺ちゃんたちには若い女性を宛がい、セックスはし放題。男性が考えうる欲望を全て満たしてあげるのだ。

 これなら老害を垂れ流している白髪の老人たちも喜んで行ってくれることだろう。

 実はこの特別桃源郷、既に中国共産党が実行に移しており、党内で老齢になった幹部たちを特別桃源郷に送り込んでしまい、党内で不要な権力闘争が起こらないようにしているのだ。だからこそ中国共産党では若返りが進み、日本の政界から見れば若い男性が国務院総理に就任してきて、斬新な政策を打って来ることが可能になっているのだ。

 日本の政界のようにどんなに「改革!」「改革!」という言葉を連呼しても、70代や80代の政治家ではもう無理なのである。こういう人々は抵抗勢力にしかならないのであって、改革潰しに走るものなのである。それゆえいつまでも政治家として働き続けるなら、即刻逮捕し、特別桃源郷送りにしてしまい、政界の若返りを図るべきなのである。

●40代で社長になれるシステムを作る

 会社というものは、創業者の時期は社長の独裁で進めて行き、会社が大規模化していくと、必ず「会長」と「社長」に分離していく。会長は会社の経営全般を統括し、社長は会社経営の執行を行うのである。経営全般はそんなに変化がないから、老齢の者が会長になっても別に構わない。

 しかし社長が老齢の者であったら非常に困るのである。

 社長は40代の者がなるべきであって、社内で有能な者に社長を任せ、その者に全力疾走をさせるべきなのである。社長として走り続けることができる期間はせいぜい「5年」なのであって、5年ごとに社長を交代させておけばいいのである。こうすれば脂の乗り切った時期に社長になれる者が続出してくるので、会社は大いに発展していくことができるようになるのだ。

 50代の者が社長になっても別に構わないが、体力が落ちているので、どうしても動きが遅くなってしまうのである。60代では赤信号であり、もう全力疾走できるだけの体力がないのだ。70代では体力そのものがなくなっているので、社長の仕事をこなすのに困難を極めてしまうのである。

 アメリカの大企業の場合、会長は老人であっても、社長は40代の若い男性が就いているものだ。そうやって若手を起用しているからこそ、「老人の知恵」と「若手の体力」を巧く融合させることができ、会社を発展させることができるのである。株式会社なら、恐らくこのアメリカ方式を採用して行かなければならないのである。

 社員に対して若い内に社長を経験させることは様々なメリットが有り過ぎるのだ。まず社長を経験させたことで会社の経営が解り、頓珍漢な意見を言わなくなるということだ。もう1つは「元社長」という肩書を持つことができ、それによって社長にはこなせない重要な仕事を与えることができるということだ。そして元社長の誰かをいずれ会長に就任させていけばいいのである。

●老人としての役割はそれまでの役割とは違う

 人間というものは、若い時の役割と、老人になってからの役割は全然違うものだ。若い内なら働きまくればいい。しかし老人になったら会社を後継者たちに相続させて行くという大事な大事な仕事が待っているのである。早い段階から会社の後継者たちを育てて行き、充分な経験値を積ましてから、会長職を譲るようにしていかなければならないのだ。

 これに成功する企業は少なく、寧ろ失敗している企業の方が圧倒的に多いのだ。

 まず会社の後継者たちの育成は既に社員が入社した時点から始まっているのだ。新入社員を総合職と一般職に分け、総合職の者を管理職にして行き、その後、取締役に就任させ、社長に就任させるのである。総合職の者が必ずしも優秀とは限らないのであって、一般職の者でも優秀なら管理職に抜擢し、社長に成れるルートを確保しておかなければならないのだ。出世コースに柔軟性がないのなら、いずれ必ず人材が枯渇してくるものなのである。

 次に会社の後継者たちには徹底して教育を施していかなければならないということだ。会長本人が自分の体験談を話したり、経営理念や経営計画書を徹底して教え込み、定期的に研修を受けさせたり、勉強会やセミナーを開いたりして、会社の後継者として教育をし続けなければならないのである。教育の凄さはまともなことを教えれば会社は大成功するし、間違ったことを教えれば会社が倒産してしまうものなのである。

 そして最後の難関が実際に誰を後継者にするかということなのだ。会社を経営していれば、自分が期待していた人物が会長になる前に早死にしてしまったり、スキャンダルを起こして失脚したりするものなのである。会長になるためには実力だけではなく、「運」や「ツキ」というものが必要になってくるので、実力はあっても運やツキのない人物では会長に就任できないものなのである。

 会長職を譲ったのなら、潔く会社経営から退き、後は悠々自適の毎日を過ごすべきなのである。自分が退職したのに会社経営のことに口を出していれば、会社の経営を悪化させることになるものなのである。「後のことは任したぞ!」と言い切ることができなければ、自分の晩年を汚すことになってしまうものなのである。

 年を取ってくれば、「最近の若者たちは~」と言いたくなるものだ。しかし若者が駄目なのではなく、もうそういうことを言って来る老人たちこそが駄目なのである。自分自身、老いを感じたのなら、早目に引退すべきなのである。自分がすべきことをやって早々と引退するからこそ、晩年を全うすることができるようになるのである。

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