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キキは本当に自立したのか?

●物語の中では自立した

 『魔女の宅急便』を読んで疑問に思うのは、「本当にキキは自立したのか?」ということなのである。この物語は「魔女の自立」が主題である。しかも第一巻はそれ自体完結している。その後の作品は第一巻が映画化され、人気が出たから出版した物なのである。キキは両親の元を旅だって修行に出て、1年後には再び両親の元に帰ってくるので、キキが自立したかのどうかの判定を忘れてしまうのだ。

 結論から言ってしまうと、キキは魔女として自立に成功した。

 しかも第一巻で自立したのである。

 これは魔女だから出来る早業で、人間では絶対に無理であろう。現実に存在する魔女ですらも、『魔女の宅急便』に出て来る魔女のように1年間で魔女として自立できるなんてことは絶対にできないのだ。これは飽くまでも小説の中のお話なのであって、現実にはそんな短期間で自立することなどできないのだ。

 作者の角野栄子もその点に気付いたのか、『魔女の宅急便』の第二巻以降、キキは自立しているが、その自立は不十分で、魔女の宅急便の仕事をしながら成長して行くということで物語を進めて行くことになるのだ。キキは完璧に仕事をこなすバリバリのキャリアウーマンではなく、仕事で悩み、失敗し、そこから立ち上がって行くことを繰り返すのである。

 第二巻ではキキ自身が空飛ぶ魔法だけでは魔女として駄目と気付き、母親からくしゃみ薬の作り方という新しい魔法を習うことになる。第三巻ではもう1人の魔女である「ケケ」が登場し、ケケはキキを翻弄しながら、キキ自身が急成長を遂げることになる。第四巻でキキは恋に目覚め、第五巻では「とんぼ」と交際することになる。

 この第五巻はキキの自立にとって非常に重要な巻で、キキは町長さんの結婚を取り持つことになる。町長さんは第一巻でキキを一人前の魔女だと認めた存在である以上、魔女の掟である「もちつもたれつの関係」上、キキは町長さんから認められるだけでなく、キキが町長さんに何かをしなければならないのだ。そうしないともちつもたれつの関係にならないのだ。

 そしてキキは魔女の仕事を通じてきちんと自立を果たしたからこそ、「とんぼ」から愛の告白を受け、結婚を予感させる交際を開始するのである。

  

●娘組と師匠の存在

 キキのような自立の仕方は小説だからこそ有り得るのであって、現実の女の子たちには絶対に起こり得ないのだ。物語の設定がそうなっているからキキは自立したのであって、もしもキキが現実世界の中にやってきたら、キキは自立できないのだ。キキは自立するために或る重要なことが欠けているからだ。

①娘組

 女の子が自立するためには「娘組」の存在が必要である。異性を排除して、女の子たちだけの組織に入り、その組織の中で女性として学ぶべきことを学んでいくのである。キキは魔女として1人で修行に出なければならないので、当然にこの娘組に相当する組織に入っていないのだ。

 女子中学生が気をつけるべきことは、「同じクラスでは娘組にはならない」ということなのである。このためクラスでの友情を優先してしまうと、娘組に相当する組織に入れなくなってしまうのである。部活動で女子だけのクラブならいいのだが、男女混合だと娘組にはならないのだ。

②師匠

 キキにもう1つ足らないのは「師匠の存在」である。『魔女の宅急便』ではキキは師匠を持たず、母親から全てを教えて貰うことになるのだ。現実世界に於いてこの遣り方では駄目なのである。必ず自分の親以外の年上の人を師匠にし、その師匠から指導を受けることで成長していかなければならないのだ。

 女の子の場合、師匠は女性でも男性でも構わない。しかし男の子の場合は、師匠は男性でなければならないのである。これが師匠に於ける男女の性差なのである。逆に言えば女性は男性よりも自立のチャンスが2倍も多いということなのである。但し言っておくが、学校の教師は師匠になりにくい。

③ライバル

 女の子が自立していくためには、仲間の存在が不可欠であるが、ライバルの存在も不可欠なのである。自分にライバルがいると、自分の闘争本能に火がつき、早くに上達して行くことができるのである。自立していく時間を短縮するためにはライバルを持ってしまった方がいいのである。

 キキにとってライバルらしい存在は「ケケ」である。ケケは年下の魔女なのに、キキはケケにライバル意識を燃やしてしまい、それがキキを成長させることになるのだ。ケケが登場してくる第三巻は『魔女の宅急便』の中でも圧巻ともいうべき巻なので、じっくりと読んでおいた方がいい。この巻をきちんと理解していないと、その後の展開もきちんと理解することはできないのだ。

●一人前になるのは10年という歳月を必要とする

 俺は常々「桃栗3年、柿8年、技術10年、学問30年」と言っている。桃や栗は3年で実をつけ、柿は8年で実をつける。それに対して人間は10年かけて技術を物にしてくるし、学問に至っては30年かけてやっと一人前の物を作ることができるようになるのだ。人間の心身というのは時間をかけて成長するようにできているのだ。

 女性が自立していくためには10年という歳月を必ず必要とする。10年以下の時間で自立しようとすれば、相当に無理をしてしまうし、下手をすると自分が自立して行く過程でギブアップしてしまうことになるのだ。幾ら小説とはいえ、キキのように1年で自立することは有り得ない。だからこそ作者の角野栄子はその後、シリーズ化して、キキが本当に自立するまでの物語を書いたのである。

 女の子にとって、恐らく親からの自立は中学生の時から始まる。

 しかし女の子が実際に社会に出るのは、18歳以降なのである。

 ここにこそ「落とし穴」があるのである。

 高卒や短大卒は就職してから10年経てば、自分が仕事で一人前になり、しかも丁度結婚適齢期内で結婚することができる。ところが大卒の場合、女性は結婚適齢期が終わる頃にやっと仕事で一人前になるのであって、結婚が非常にヤバくなるのである。女性が進学したり就職したりする時は、必ず結婚から逆算して考えるようにすることだ。

 冷静に世間を見回してみて、自立していない女性たちは圧倒的に大卒の女性たちが多いのだ。大学に進学してしまったために、社会に出る時期が遅れてしまい、仕事で一人前になる前に結婚してしまったり、結婚を拒否することにエネルギーを取られてしまって、仕事で一人前になることができなかったのである。

 女性が大学に進学した場合、大学で勉強だけをしていればいいのではないのだ。学生の頃からアルバイトをし、早くに社会に進出してしまうことだ。女性の体は19歳で成長のピークに達しており、それなのに中学や高校のように大学で勉強する必要性はないのだ。大学で幾ら勉強しても、女性として自立して行く方法は教えてくれないものなのである。

●キキの凄い所

 キキの凄い所は、10歳で魔女になることを決意し、その後、箒で空を飛ぶ魔法の訓練をし、13歳で修行に出ているということなのである。しかもキキは22歳で結婚しているので、丁度10年かけて魔女として自立して行ったことになるのだ。キキは結婚する前までに魔女として一人前になっていたということなのであり、だからこそ幸せな結婚をすることができたのである。

 この10歳というのが非常に曲者なのである。10歳というのは子供が親に服従できる最後の時期なのである。10歳までならどんな子供も親の言うことを素直に聞くのだ。これ以降になってしまうと、子供は親の言うことを聞かなくなってしまうのだ。それゆえ自分の夢を設定するなら、10歳の時が一番いいのである。自分が素直になっているので、自分に最も相応しい夢を見つけ出すことができるのである。

 キキは13歳で魔法の修行に出た以上、キキの最終学歴は「小卒」だということになる。恐ろしいまでの低学歴なのだ。しかし低学歴だからこそ、キキは他の如何なる女の子たちよりも社会に出て行くことができ、キキは22歳になる頃には、正確に言うと「とんぼ」と交際を始めた20歳の時点で自立してしまったのである。

 さすがに現代社会では小卒で生きて行くことはできない。義務教育のために中学に行かなければならないし、それでも飽き足らず高校や短大や大学へと進学するのである。それだけ現代社会は高度な知識や技術を要求しているのだが、その反面、下手をすると自立して行く機会を失ってしまうというリスクがあることを決して忘れてはならないのだ。

 自分の偏差値を気にして、どの学校やどの大学へ行けばいいのかと悩むべきではないのだ。そんなことは大事なことではないのだ。それよりも自分が一体何をしたいのか明確にすべきなのである。自分に夢がしっかりとあれば、自分の進むべき道はしっかりと切り開かれるのであって、その夢はいずれ実現してしまうものなのである。たとえその夢が実現できなくても、その夢に準じた何かを掴むことができるものなのである。

●学校や大学にいては自立できない

 自立は学校や大学の外で行われるものなのである。如何なる女性であっても、学校や大学から出て行かない限り自立して行くことはできないのである。そして女性が仕事で一人前になるには約10年という歳月が必要なのである。しかし女性は結婚することになる。だから結婚から逆算して仕事を前倒しで進めて行くべきなのである。男女平等を唱えて男性たちと同じペースで仕事をしていれば、女性は自立することができなくなってしまうのだ。

 女の子であるなら、女性の大学教授が書いた本は眉唾物で読むべきなのである。というのは女性の大学教授は大学に進学しただけでなく、その後、大学院に進学した訳であり、女性として自立できなかった可能性が高くなってしまうのだ。もしも大学院博士課程を修了したのなら、社会に出て一人前になるのは38歳である。結婚適齢期はもうとっくに過ぎているのだ。

 女性の大学教授はフェミニズムに洗脳される確率は非常に高いのである。なぜなら大学教授になるために女性として自立する機会を完全に失ってしまったからなのである。

 「女性の自立」が叫ばれる中で、女子中学生たちがやっていたのは、女性の大学教授が書いた本を読むのではなく、小説や漫画を読むことだったのである。なぜなら小説や漫画を読むことで自分の想像力を逞しくし、学校オンリーの生活にならないようにしていたのである。女性が自立していくためには、学校生活にどっぷりと漬からないことの方が大事なのである。

 中学校の勉強は落ち零れない程度に付き合って行けばいいのである。それよりも運動部に入って部活動に精を出し、コーチや監督の言うことで優れたことがあるなら素直に聞いておいた方がいいのだ。そして出来ることなら自分がライバルを持って、その人物と切磋琢磨した方がいいのである。

 中学校でこういうことをやっておけば、3年間で相当に実力がつくものなのである。その後、高校や大学に行こうが、自分に実力があるために、早くに社会に出て自立して行くことができるようになるのだ。自分がどのように生きたとしても、現代社会は多くの知識や技術を必要としているために、女性たちに無理を強いていることを絶対に忘れてはならないのである。

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コメント

タマティー様、十歳の娘がいる私にとって極めてタイムリーな記事でした。魔女の宅急便はさら~と読んだだけで、そんなに深い読み方をしたことがありませんでした。改めて親子で読みなおします。女性の自立についてですが、確かにわたしは結婚十年目で三人目出産をして初めて実母から自立した実感が湧きました。娘はそんな回り道をしないで済むように、今から夢を応援し、女友達やライバルと青春を謳歌してしっかり幸せをつかんでもらいたいです

投稿: smilelarch | 2012年1月17日 (火) 09時11分

 smilelarchさん、女性は赤ちゃんを3人産んで、やっと母親として一人前ですよ。
 子供が1人や2人だと、どうしても母親としては未熟ですよ。
 娘さんには結婚して赤ちゃんを3人産むことの大切さを教えた方がいいです。
 経験者の言葉なら説得力がありますからね。

 

投稿: タマティー | 2012年1月17日 (火) 18時40分

タマティーさん

リクエストにお答えいただいたのに 気づくのが遅くなってしまってすみませんでした。

「魔女の宅急便シリーズ」ですね。 確か、何度か図書館で借りていたのを記憶していますが その内容について語り合ったきおくもなければ 私は読んでないので早速手に入れます:happy02]

中学は落ちぶれない程度で部活動に励み 親以外の師匠をもち
やりたいことを明確にして突き進む。
確かに理想ですが 今の中学生は両極端で 勉強ができる子とできない子に二分されていて中間層がないと聞いております。

塾などで勉強をやる子はできる。 やらない子はできないと。。。

娘は歌って踊れる学校の先生になるので 中学からは塾に行く予定です。
部活に塾に舞台レッスン・・・。 たぶん相当ハードだと思います。
とっても良く寝る子なので 睡眠時間の減少も心配です。
でも、中学時代は覚悟を決めてやらせるしかないかな。と思っているのです。
早咲きなので研究など時間のかかる事はやらせないほうがいいとのアドバイスもしっかり受け止めた上での判断なんです

マンガ大好き。 暇があるとワンピースを読むかお絵描きか踊るかの娘ですが 卒業までに「魔女の宅急便」二人で読みますね

そうそう、マスターードシードデトックス  かなり前にタマティーさんのブログのコメントを書かれた方のローフードのブログで紹介されていたものです。 有機マスタードシードを一日大匙二杯食べるという ごくシンプルな方法ですが効果てきめんです

いつもありがとうございます

投稿: けろりん | 2012年1月18日 (水) 21時28分

 けろりんさん、遅すぎッ!

 『魔女の宅急便』は文章が物凄く巧いので、熟読するにはいい本ですよ
 童話作家に少女文学を書かせると、意外や意外、非常にできのいい物を作って来るんですな。

 母子で『魔女の宅急便』を読んだ時、娘は魔法のことしか関心がないけど、母親の方はキキと周囲の人たちの人間関係に関心が行くと思います。
 特に第二巻はジーンと感動するようなシーンが連発ですよ。

 二極化は今に始まったことではなく、昔からそうでしたよ。
 タマティーが通っていた小学校では、駅から近い方に住む人たちは塾などに行けたのですが、駅から遠い方に住んでいた人たちは塾に行けなかったんですよ。
 大体、塾自体がないですからね。
 タマティーの家は駅から遠かったので、親に頼みこんでやっとのことで塾に行かせて貰ったんですよ。
 今から考えるとあれが人生の最大の転機になりましたね。

 ただ、学校に行きながら、塾に行かなければならないのは、明らかに矛盾していますよね。
 学校が教育機関としての機能を果たしていないってことなんだから。
 学校も塾みたいな授業をやってくれれば、誰も塾に行かなくて済むのに。
 理想的なことを言えば、学校は午前中だけにし、午後はスポーツクラブで運動した方がいいんですよ。
 こうすれば子供達は早寝早起きすることができるから、子供達の能力は物凄く伸びる筈ですよ。 

投稿: タマティー | 2012年1月19日 (木) 06時59分

タマティーさん

本当に! 
幸か不幸か、我が家からの徒歩圏内には塾が乱立していて 学校側も塾に頼り切っているのが現実みたいです。

高校進学の進路決定も塾で行い、学校へは報告のみらしいです。(今はどこでもそうなのでしょうか?)

タマティーさん理想の午前中学校、午後スポーツをさせるような環境だったらきっとわが娘は アイドルになれるのに・・。

親としては、勉強わからない→嫌い→やらない→学校つまらないOR悪いお友達と夜遊び楽しい
になるのが恐ろしいので まともな高校に入れるためにやっぱり塾ですかね、、。

勉強、勉強いうよりも もっと生活力をつけてもらいたいのが本音なんですが 親が変わって子供も変わる。を合言葉に頑張っています
 
今週のキキのお話も楽しく読ませていただいてます。
最近はみなさんのコメントも多くて併せて楽しみです

いつもありがとうございます

投稿: けろりん | 2012年1月19日 (木) 22時39分

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