作家は顔で判断していい
●国語の教科書の怪
中学生や高校生の時、国語の教科書をパラパラと読んで、作家の顔を見比べた経験というのは誰にもある筈だ。作品を読み比べることも確かに大事なのだが、それ以上に作者の顔を見比べることも大事なのだ。なぜなら作品を読んでいるだけでは解らない情報を多数くれるからだ。
はっきりと言ってしまうと、面白い作品を書いている作家は「いい顔」をしているものだ。夏目漱石や芥川龍之介などは実に味わい深い顔をしているものだ。逆に詰まらない作品を書いている作家は詰まらない顔をしているものだ。志賀直哉や正岡子規などは明らかに顔に迷いが出ているのだ。
国語の教科書には国文学に詳しい俺でも知らない作家の作品が時折掲載されることがあるのだが、国語の教科書に掲載されるのだから、その作品の出来はそこそこいいのだ。しかしその作家の顔がダメなのである。締まっていないのである。だからこそ、その作家は売れなかったといっていいのだ。
作家の顔というのはいい顔になるというのは外国に目を転じても同じことだ、ロシア文学の二大文豪のトルストイとドストエフウスキーもやはりいい顔をしている。『レ・ミゼラブル』の作者のユゴーはフランス人にしては重厚感溢れる顔になっているし、『若きヴェルテルの悩み』の作者のゲーテはドイツ人にしては端正な顔つきになっているのだ。
ヘミングウェイは若い頃は格好いい顔つきだったのに、アル中になってしまったために顔がグニャグニャになってしまったので、彼の後期の作品は全部ダメである。小説家には禁酒が当たり前というルールを守れない者は幾ら才能があっても自滅してしまうものなのである。
●いい本を書く作家はいい顔をしている
小説家は必ずしも美男美女である必要性はない。大体、美男美女は小説家にはならない筈だ。若い頃から文学が好きで、大人になってから小説を書こうなどという人物は美男美女ではなく、普通の顔の持ち主か、それ以下の持ち主であろう。
小説家はどんなに努力しても美男美女にならないが、小説家としていい作品を作っていれば、いずれいい顔にはなるものなのである。小説を書き上げるためには1日や2日でできるものではないのだ。1冊の単行本を出そうとすれば、最低でも1ヶ月間は書き続けなければならないのだ。
その間、ずっとその小説について考え続けているのであって、自然と自分の顔がそれらしい顔つきになってくるものなのである。いわば小説家のいい顔というのは、長年の「思考の産物」なのであって、小説家として考えれば考えるほどいい顔つきになってくるのである。
小説家としての鋭さは必ず顔に表れてくる。例えば司馬遼太郎などは他人と会話する時、相手の顔を凝視する癖があったのだが、そうやって凝視されると誰もがビビるほどの眼光の鋭さを持っていたのである。歴史小説を散々書きまくり、歴史上の英雄たちの生死を見まくっていれば、当然に眼光が鋭くなるものなのである。
もしも小説家が曖昧な顔をしていれば、その小説家は曖昧な作品を書きまくっているということなのである。自分が専門的に小説家の仕事をしているのに、曖昧な顔つきになるということは絶対に有り得ないのだ。小説家は或る意味「職人」なのである。小説の職人であればこそ、顔に切れ味を持たせねばならないのである。
●醜男醜女枠
ところが文学界の中には必ず醜男醜女がいるのである。そんな連中、本来なら淘汰される筈なのである。それなのになぜだか生き残ってくるのである。文学界には「醜男醜女枠」があると思っていた方がいいのだ。醜男醜女の小説家が作る作品に対して或る一定の需要が存在するということなのである。
俺が知る限りでは「井上ひさし」「田辺聖子」「吉本ばなな」こそ醜男醜女枠に収まる小説家たちである。俺は今まで様々な人たちに出会ってきたが、これほど酷い顔の持ち主には会ったことがない。いつも「早く消えてくれればいいのに」と思っているのだが、この連中はなぜだかしぶとく生き続けるのだ。
顔が醜いのだから、小説も大したことはないだろうと思っていたら、案の定その通りで、作品は粗悪品なのである。簡単に言ってしまえば、「奥行きがない」のである。ただ表面をなぞって書いているだけなので、読み終わった後の感動というものが全く起こらないのである。
この手の小説家が許せないのは、「人間としての謙虚さがない」ということなのである。自分自身は醜男醜女なのだから。謙虚になって生きればいいものを、なぜだか傲慢になるのだ。そのため作品に出て来る登場人物たちの言動が傲慢になり、俺としてはどうしても許せないのである。
人間は美しい物を追い求め、醜い物を排除しようとする感情があるから、自分の容姿が美しければ莫大な利益を得ることだろうが、自分の容姿が醜ければ損害を受けることはしても、利益を得ることはない。そのためその怨念というべき物を持つ連中は必ず世の中にいるのであって、そういう人達がこの手の粗悪品を求めてしまうのである。
●いい本を読んでいる人はいい顔になってくる
本というのは全部が全部いい本ではないのだ。本は大別して「良書」と「悪書」の2つが存在するものなのである。良書は簡単に生まれて来るものではないのだ。その作者が必死になって考え抜き、コツコツと努力し続けたからこそ、良書になったのである。一方、悪書を生み出すのは簡単なことだ。その作者が適当に考え、適当に書けば、それで悪書は出来上がってくるのである。
幾ら自分が読者だからといって、本を何も選別することなく買って読むべきではないのだ。読者だからこそ良書を追い求めなければならないのだ。人生は戸の隙間を白馬が駆け抜けていくほど短いものなのである。限れた人生の中で悪書を読んでいる閑などないのである。
読者が良書を読んでいけば、必ず「いい顔」に9なってくるものなのである。その作者が考え抜いたことを僅かな料金を支払えば簡単に得られるのだから、それを知れば感動があるし、それを知った上で自分が更なる行動を起こせばいいのである。
逆に言うなら、読者が悪い顔をしている人は悪書を読んでいるということなのである。この手の人たちは意外と多い。本屋に行っても図書館に行っても、必ず悪い顔をしている人たちがいるものだ。本だからといって無闇に読んでいると、どうしても悪書に引き摺られてしまうものなのである。
ではどうやって良書と悪書を判別していけばいいのかといえば、それは作者の顔で判断していいのだ。中学生や高校生の時にやっていたことを大人になってからもすべきなのである。中学生や高校生の時にやっていたことを大人になってからやらなくなるからこそ、まんまと悪書に騙されてしまうのである。
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コメント
タマティーさま、お久しぶりです。
毎朝ブログを拝見しておりましたが、子どもが幼稚園に通い始めたので、コメントが出来ませんでした。
ところで、今回のブログを見て、中学・高校時代と国語の教科書の作者の顔写真に落書きをしていたことを思い出しました
やはり、顔の良い作者の顔には落書きはしませんでした(笑)
投稿: ジプシー | 2012年4月18日 (水) 21時55分
ジプシーさんも落書きしていたんですね。
時折、落書きが異様に巧い奴がいて、落書きが芸術の領域に達する者もいるんですよ。
夏目漱石は写真のまんまで、普段から気難しい人だったみたいです。
芥川龍之介は写真とは違い、結構、好青年だったらしいんです。
三島由紀夫は写真に格好良く写っていますけど、ワキガだったらしいんです。
まあ、名作を書いている作家たちはみんないい顔をしていますよ。
投稿: タマティー | 2012年4月19日 (木) 07時09分