« 恐怖のファストフード | トップページ | 小説家の禁じ手 »

作家は自分の好き嫌いで決めていい

●漱石と鴎外

 近代日本文学の小説を読む時、夏目漱石と森鴎外という2大文豪のどちらかを好きになることだろう。戦前の近代日本文学ではどの小説家もこの内のどちらかの影響を受けているので、如何なる小説家でも辿っていけば、必ずこの2人に辿り着くのだ。

 俺の場合、中学1年生の時に夏目漱石の本を読んだら、次は芥川龍之介に進み、その後はなぜだか寺田寅彦の随筆を好むようになった。実を言うと、芥川龍之介も寺田寅彦も夏目漱石の友人たちなのであって、源流が好きになれば、下流にいる者たちも好きになるのだ。

 一方、森鴎外は全くダメである。森鴎外の小説を読みたいと思わないし、たとえ読んだとしても面白いとは思わないのだ。自分が大きくなるにつれて、その理由が解ってきた。森鴎外は軍医であり、短眠族だったからだ。軍医として横柄な所があるし、短眠族のためにどこか息詰まる部分を持っているのだ。

 夏目漱石も森鴎外も近代日本を背負って立っていたという点では同じである。しかし夏目漱石は近代日本語の成立に大きな功績を打ち立てたのに対して、森鴎外が古風さながらの文章を平気で書いているのだ。両者の内、どちらかを好きなるかといえば、やはり夏目漱石なのである。

 夏目漱石も森鴎外もどちらも好きという人はいないんじゃないだろうか? もしもいたら、その人物は頭がおかしいと見ていい。小説を読む際は自分の好き嫌いをはっきりさせた方がいいのだ。自分が好きと思える小説家たちを探っていけば、文学に関して新しい発見が続々と出て来るものなのである。

●トルストイとドストエフスキー

 これはロシア文学でも全く同じで、ロシア文学を好む者は、トルストイかドストエフスキーのどちらかを好きになると言われている。両者ともロシア文学を代表する文豪なのであるが、どちらとも好きなるという人はいないのである。

 トルストイが好きな人はトルストイの作品しか読まないし、ドストエフスキーが好きな人はドストエフスキーの作品しか読まないのだ。その理由は簡単で、作風が余りにも違いすぎるからだ。相反するような作風だからこそ、拒絶反応が起こってくるのである。

 トルストイの作風は高い芸術性と明確な執筆が売り物なのだが、その反面、綺麗事を言っているという欠点もある。ドストエフスキーは人間の内面を抉り出すような凄い表現をしながらも、物語構成が滅茶苦茶であるという欠点が存在する。

 文学者になるような人はトルストイの作品が好きな人たちが多い。仕事柄、正確さを要求されるし、職業病として机上の空論を好む傾向があるからだ。それに対して小説家などはドストエフスキーを好む人たちが多い。職業柄、心理描写をしなければならないし、作品自体が未完成品なので、俺ならもっと巧くやれると思ってしまうからだ。

 ロシア文学の小説を読んで、イマイチ解らないというのなら、それはロシア文学に対して自分の好き嫌いがはっきりとしていないからなのである。ロシア文学の中で有名だからという安易な理由で読んでいると、結局、本を読むのではなく、本に読まれてしまうのである。

●自分の好みに合わない作家は断固として拒絶すべし

 小説家に対する好き嫌いは、良いか悪いかではなく、小説を数多く読んでいけば必ず起こるものなのである。だから変な罪悪感を抱かないことだ。好きな者は好き、嫌いな者は嫌いと、はっきりと自分の好き嫌いを明確にしてくことこそが、自分の精神を健康に保つ秘訣なのである。

 俺は数多くの本を読むけど、この人の書いた物はどうしても受け付けないというものがある。俺が高校生の時に「吉本ばなな」がブームになったのだが、俺の姉が吉本ばななの出世作『キッチン』を買っていたので、それを借りて読んだのだが、この本の面白さがさっぱり解らない。

 悔しいのでもう1度読んでみても、やっぱり面白さが解らない。ブームが起こり、人々が「この本面白いよ」と言っている中で、自分だけが「この本つまんないじゃん!」と思うのは、想像以上に苦しいものなのだ。何かどこかが詰まらないわけではないのだ。全部が詰まらないのだから。

 これが海外バージョンになると、もっと厄介な展開になる。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を「好きだ」という人が結構いるので、仕方なくこの本を読んでみたのだが、この本の面白さがさっぱり解らない。逆に「こういう生き方をすれば、人生、袋小路に入るだけじゃん!」と思ってしまい、なんの共感をもすることができないのだ。

 吉本ばななが好きだの、サリンジャーが好きだの言っている人たちが書いた本を読むと、この作者は何を言いたいのか解らないし、思考の甘さや、人生の経験値の少なさが気になってしまい、全く評価を与えることができないのである。

●万人に好かれる作家はいない

 読書のしすぎでノイローゼになる人たちは意外と多い。自分の脳の許容量以上の読書量が問題であると同時に、自分が好きでない作家たちの本を大量に読んでしまったこともノイローゼ発症の原因であるのだ。作家たちの中には自分が受け付けない者が必ずいるのである。

 人間は全知全能ではないから、万人に好かれる作家などいないのだ。その作家がどんなに真面目に作品を作っても、それを好む者たちが出てくると同時に、それを嫌う者たちが出て来るものなのである。それでいいのである。本とはそういうものなのであって、それをどうのこうの弄くってはならないのだ。

 自分の知的生活を充実させたいのなら、自分の好きな作家の本だけを読むようにしよう。これに尽きるのだ。自分が嫌いな作家の本を読んでも、被害を被るのは自分なのである。悪いのは自分が嫌いな本を読んでいる自分なのであって、絶対に他人のせいではないのだ。

 家族の場合、親が好き嫌いを明確にしていないと、確実に子供も曖昧な態度を取るようになる。このため子供は無理して自分の嫌いな作家の本を読むようになり、それで自分の精神を傷めてしまい、精神病を発症してしまうのである。

 だからこそ、善良で温和な夫婦が生み育てた子供が、10代や20代や30代で精神病患者になり、青春時代の貴重な時間を精神病院の中で過ごす羽目になるのだ。子供が精神病を発症した場合、子供だけの責任ではないのだ。その親がかなりの割合で責任を持っているものなのである。そのことを絶対に忘れてはならないのである。

Portrait.Of.Pirates ワンピース STRONG EDITION トニートニー・チョッパーVer.2 Toy Portrait.Of.Pirates ワンピース STRONG EDITION トニートニー・チョッパーVer.2 

販売元:メガハウス
発売日:2010/08/25

Amazon.co.jpで詳細を確認する

|

« 恐怖のファストフード | トップページ | 小説家の禁じ手 »

おすすめサイト」カテゴリの記事

学問・資格」カテゴリの記事

心と体」カテゴリの記事

恋愛」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

育児」カテゴリの記事

趣味」カテゴリの記事

子育て」カテゴリの記事

教育」カテゴリの記事

結婚」カテゴリの記事

家計」カテゴリの記事

妊娠 妊婦 子育て 育児」カテゴリの記事

コメント

タマティー様、いつもお世話になっています。
昨日で妊娠40週を迎えました。まだ産まれる気がしなくて赤ちゃん大丈夫なのかなと、ふと考えてしまいます。
過去の記事を拝見させて頂いて、葉酸が足りていないのかもしれないと思いました。
葉酸が不足しているので予定日が過ぎても産まれてこないのでしょうか。。。
なんだか気になり質問させて頂きました。
いつも質問ばかりしてお手数おかけしています><
今回もアドバイスを頂けると幸いです。

投稿: ひろこ | 2012年5月 2日 (水) 11時43分

 ひろこさん、足りないのは、葉酸ではなく、脳みそじゃ!
 5月6日が満月だから、出産はその前後じゃないの。
 それを逃すと5月21日の新月までお預けです。
 
 大体、「おしるし」は来たのかな?

 出産予定日は「医者の予定」であって、「胎児の本当の出産日」じゃないですからね。
 出産予定日には絶対に拘らないことです。

 「月の力」を巧く活用するためには、天日塩の摂取は絶対に欠かせないですよ。
 天日塩湯でも飲んで、塩分不足が絶対に起こらないようにすることです。
 それと塩分とバランスを取るためにカリウムが必要です。
 「柑橘類」とか「バナナ」にはカリウムが含まれているから、朝の内に摂取しておくことですよ。

 それから陣痛が来たら、飯をしっかりと食べるようにすることです。
 特に穀物を多く食べておくと、出産時のパワーの出方が全然違いますよ。

投稿: タマティー | 2012年5月 2日 (水) 16時53分

アドバイスいただきありがとうございます。
2週間前にピンクぽいおりものが出ていました。
もうそろそろ破水するのかなと覚悟していましたが、それから何も起こっていません。
破水したら病院に行く前に食べていくものは、穀物である玄米ご飯を食べると良いでしょうか?
出産予定日を気にし過ぎないようにしたいと思います。

投稿: ひろこ | 2012年5月 3日 (木) 16時09分

 ひろこさん、「おしるし」が出たのなら、安全でしょう。
 「おしるし」は正しい妊婦生活を送ったことの「証」ですからね。

 穀物ならなんでもいいですよ。
 玄米ご飯もいいし、麺類でもいいですよ。
 
 まあ、満月の夜に向けて、せっせと運動するんですな。
 体を動かしていれば、自然と陣痛が来ますよ。

投稿: タマティー | 2012年5月 3日 (木) 17時21分

タマティーさまありがとうございます。

アドバイスを頂いたので、精神的に少し出来ました。

せっせと体を動かして、出産前には是非穀物を食べてから病院に行こうと思います。
いつもありがとうございます。

投稿: ひろこ | 2012年5月 5日 (土) 21時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 作家は自分の好き嫌いで決めていい:

« 恐怖のファストフード | トップページ | 小説家の禁じ手 »