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10代だけにしか解らないこと、出来ないこと。 タクロウの『胸懐』

第二弾は中学生と高校生向け

●人間の原点は常に家族!

 音楽家の書いた本は当たりが非常に多い。歌を歌うなり、楽器を演奏すると、脳が巧く刺激されるので、言語能力が高まるのである。逆に言えば音楽家なのに「価値のある会話」をできない人は音楽家としても最低レベルにある人なのである。

 今回紹介する本はこれ

 RAKURO著『胸懐』(幻冬舎)

  胸懐

 音楽家でもクラシックに進む人は、家庭が裕福で、子供の頃から英才教育を受けて音楽家になっていくものだ。しかしロックに進む人は裕福ではないし、普通の教育を受けて、或る時期までは平凡な人というのが多いのだ。それが或る日、ロックに目覚めるのである。

 タクロウも普通の男の子で、ただ少し違っていたのは、彼の家が母子家庭であったということなのである。彼が3歳の時に父親が交通事故で亡くなってしまい、それ以降、タクロウの家族は貧乏の中で過ごすことになる。電気やガスや水道が止めれたというくらいだから、余程貧乏したのである。

 タクロウが一番嫌だったのは、保育園に行って母親が迎えにくる時間が格段に遅かったことなのである。いつも独りぼっちで最後まで残り、一番最後に帰る羽目になるのだ。このため夜に大泣きしたり、朝に腹痛を起こしていたりして、母親を困らせていたのである。

 母親としても子供を2人も女手1つで育てなければならないので大変だったのだろうけど、歌を歌って憂さを晴らしていたのである。それをタクロウが見ていて、音楽がなくても人は生きていけるが、音楽は人を幸せにする力を持っていることに気づくのである。

●才能と技能

 人間の能力には「才能」と「技能」の2種類がある。才能は天性の物で、生まれつき備わっている能力なのである。それに対して技能は後天的な物なのであって、人為的に身につけて行く能力なのである。

 技能であるなら教育を受ければ身につけることができる。しかし才能は教育を不要とするのである。或る日、突然に開花するのである。タクロウも中学生の或る日に突然に作詞の能力に目覚め、それをノートに書き綴って行くことを繰り返すようになるのである。

 その者に才能があるかどうかは、かなり後になって気づくものではない。早くに気づくものなのである。脳の構造からいえば、16歳以前で判明してしまうものなのである。だからこの世に生まれてから、16歳になるまでの時間は非常に大事なのである。

 音楽家の場合、子供の頃から音楽教育を受けても、ただ単に歌唱したり演奏したりするだけで終わってしまう人と、それだけではなく作詞作曲ができて新たな歌を生み出せる人とに分かれる。これが才能と技能との違いなのである。

 音楽家になるならまずは物真似から始めなければならない。それが一番上達を早くするのだ。しかし物真似は大事だけど、物真似だけでは自分の才能を発揮することができなくなる場合もあるということなのである。タクロウは英才教育を受けていなかったからこそ、自分の才能が潰されるということがなかったのである。

●「友情の大切さ」と「友情による疎外」

 ロックバンドは1人ではできない。必ず何人かのメンバーたちを必要とするのだ。その際に重要になってくるのが「友情の大切さ」なのである。ロックバンドの場合、絶対といっていいほど、ロック好きの友達が集まってバンドを作ることになる。

 GLAYの場合も例外ではなく、タクロウを中心に、テル、ヒトシの3人で結成することになる。その1年後にヒサシが入ることになる。全部、タクロウ絡みの友人たちなのである。演奏で呼吸が合うためには、仲が良くないと絶対にできないものなのである。

 しかし高校を卒業すると、ヒトシが脱退してしまう。ヒサシは家族で東京に引越ししてしまう。しかもテルが早々と東京に就職を決めてしまい、函館を去ることになる。タクロウもそれを追いかけるように上京することになるのである。ロックバンドをやった者なら誰もが経験する最初の試練だ。

 GLAYは活動療育を広げるためには上京したのではなく、高校卒業ということで無理矢理に東京に移転したのである。当然に東京の人たちはGLAYを知らないのだから、ライブをやってもお客が入らない。お客が入らないから貧乏になるという悪循環を繰り返すのだ。

 GLAYはバンドとして致命的な問題を抱えており、タクロウとテルとヒサシの3人の友情が固すぎ、外から新たなメンバーが入って行くことができないということだ。このため新たなメンバーを迎えても、すぐに脱退してしまうということを繰り返すのである。だから音楽性が発展していかなかったのである。

 だが函館出身のジロウが入ると、ジロウは巧くGLAYに溶け込み、GLAYの音楽性をも変えて行くことになる。GLAYのファッションが出来上がったのもこの時期であり、ジロウは有名なタイブハウスに出れるように交渉したり、レコード会社にデモテープを送ったりとGLAYをメジャーデビューさせるべく、大活躍することになるのである。

●チャンスは1度きり

 ジロウの活動が功を奏したのだか、XのヨシキがGLAYを知ることになったのである。ヨシキはエクスタシーレコードというインディーズレーベルを持ってたので、GLAYを自分のレコード会社からデビューさせようとしたのである。

 ヨシキはわざわざGLAYのライブに足を運び、ライブの後にタクロウに声をかけ、「もし時間があったら、うちの事務所まで来ないか?」と言う。そしてデビューの話がトントン拍子で進むのである。ちなみにこの当時、GLAYは観客動員数が150名程度の小さなアマチュアバンドだったのである、

 つくづくこの世では、チャンスは一度きりなのであるということが解る。チャンスはそう何度も巡ってこないのである。ジロウを新たなメンバーに加えてGLAYに変化が起こり、ジロウの活躍によってヨシキがGLAYを知ることになり、そしてデビューしてしまったのである。

 GLAYはロックバンドブームの最後の時期に出て来たバンドなのである。この後、ロックバンドブームが去り、ロックバンドの大量死が発生するのである。もしもあのままアマチュアバンドとして続けていたら、GLAYだって貧乏のためにギブアップしてしまったのである。

 GLAYはチャンスを掴んで巧くデビューした。だからといって売れまくったわけではないのだ。ヒット曲に恵まれなかったのである、しかもロックバンドブームは去りつつあるのだ。しかしデビュー3年目にしてやっとヒット曲を出せたのである。これもあの時にデビューしていたからこそできたことなのである。

●タクロウの思想の問題点

 タクロウはGLAYといロックバンドを率いるアーティストであって、哲学者ではない。自分の思考を突き詰めてまで考えたことはないのだ。しかしそれでも人間である以上、何かしらの思想を持つものなのである。

 タクロウは子供の頃に「永遠なんてない」ということを悟ってしまう。切っ掛けは母親が自分といつまでも一緒に寝てくれないからだった。母子家庭ゆえの愛情不足がタクロウに永遠というものは人間が作り上げたフィクションであると思い込ませてしまったのである。

 少しでも宗教のことを知ってる人なら、「この思想は仏教だな」ということが解ることであろう。物事に執着するからこそ煩悩が生じるのであって、全ての物は変化していくと思えば不幸はなくなるのである。

 タクロウはデビューしてからアイスランドで撮影を行い、その荒涼たる景色を見て、「生きて行くことは、愛することであり、愛されることである」という人生の真理を悟ってしまうのである。この思想は言わずと知れたきりスト教に基づくものである。

 しかしタクロウの意見を鵜呑みにしてはならな、タクロウはこの時期、タクロウを支えてくれた恋人と別れた時期なのである。しかもこの女性がいたからこそタクロウは名曲を書けたのに、タクロウの方から振ってしまうのである。

 つくづく愛を人生の真理に置く人は、「恋人を愛し切れなかった」という経歴を持つ連中だということが非常に良く解る。恋愛に於いて愛は必要だけど、それだけではない筈だ。お金も必要だし、厳しさも必要だし、幸福感というのも必要なのである。

 GLAYが日本で爆発的にヒットしたのは、タクロウの思想が仏教をベースにキリスト教を加味したものだったからかもしれない。しかしそういう思想は無理があるのであり、いずれは破綻してしまうものなのである。仏教の教義からすれば、愛は執着の1つなのである。キリスト教の教義からすれば、永遠は存在するものなのである。

 タクロウの著書『胸懐』はその中には素晴らしい言葉も多数書かれてある。しかし思想的には問題点が多すぎるのだ。それをどう読み解いていくかは、本人の読解力次第なのである。鵜呑みにするようではダメなのである。自分がしっかりと考えて読まねばならないのである。

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コメント

タマティーさま
ブログ復活おめでとうございます。

GLAYは私が高校1年の時に流行りました。
歌詞と曲はTAKUROさんがつくることがほとんどですね。
『生きてく強さ』でも「生きてく強さを重ね合わせ愛に生きる」と言っていますし、GLAYの曲で歌詞に『愛』がでてくることが多いと思います。
余計なお世話ですが、TERUさんもTAKUROさんもいわゆる『そうこうの妻』と別れてしまいましたよね…

投稿: 明子 | 2012年8月 2日 (木) 07時00分

 明子さん、有難うございます。
 猛暑のために関係者一同、汗だくですよ。

 ロックバンドは当たれば運気が急上昇していくので、どうしても「糟糠の妻」とは別れる運命にありますよ。
 タクロウの場合、『胸懐』を読むと、その理由が良く解りますよ。
 自分自身は成長しているのに、彼女の方が成長してこないなら、別れるしかないですからね。

 ロックバンドをやるのなら、家庭的な幸せなど求めず、出来る限り名曲を作るようにしないとね。

 ただその反面、「運命の人」と本来なら結ばれる筈のに、音楽のために別れてしまうので、そのために自分自身に何かしらの災厄が起こってしまうんです。

投稿: タマティー | 2012年8月 2日 (木) 07時17分

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