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「母親からの寵愛」を巡る争い

●やっぱり猫が好き!

 人間がこの世に於いて生きて行くためには、何かしらの動物の命を奪うという罪深いことをしなければならない。そうでなければ自分の命を保てないのだ。肉食を禁じる菜食主義者であっても、植物の命を奪っていることには変わりないのだ。

 だから自分にとって必要最低限の動植物だけを食い、感謝しながら頂くべきなのである。食べ物を残したりするようなことをすべきではないのだ。主婦であるなら食品の管理をきちんと行い、特に冷蔵庫の中の食べ物を腐らせないようにすべきなのである。

 人間はただでさえ罪深いのだから、動物をペットとして飼うことはすべきではないのだ。ペットを飼えばその動物の自由を奪う以上、更に罪深いことをやっているのである。大体、ペットを飼わなければ、その分、費用が浮くので、家計は大いに潤うことになるのだ。

 ところがこの世には動物をペットとして飼う連中は非常に多い。確かにペットを連れて散歩したり、ペットと戯れることで癒されるのだから、心身の健康に寄与しているというわけなのである。ということはペットはなんでも飼えばいいというのではなく、飽くまでもなんらかの効用がなければならないのだ。

 ペットを飼っている人たちには「犬派」と「猫派」に分かれるのだが、会社経営で成功している人たちには圧倒的に犬派が多い。これに対して作家には圧倒的に猫派が多いのだ。なんでそうなってしまうのか良く解らないが、会社経営は組織戦なので、犬のように組織を重んじる動物の方がいいわけだし、作家のような仕事は、自宅での作業だし、気まぐれの性格の有利なので、猫のように家に懐き、自由気儘の行動をした動物の方がいいのだ。

 作家が猫をペットを飼っているというのなら、まず「当たり」と見ていい。猫好きの作家は当たる確率が非常に高いのだ。文章が格段に巧いし、物語構成もしっかりとしているのだ。このため小説だろうが随筆だろうが絵本だろうが、「猫物」というジャンルが存在するのである。

●『ねぇだっこして』の粗筋

 今回紹介するのはこの絵本!

 竹下文子原作・田中清代作画『ねぇだっこして』(金の星社)

   ねえだっこして

 この絵本の主人公は「猫」である。その家の主人の妻に赤ちゃんが生まれたので、飼い猫は今までのように膝の上に行くことができず、「私、この頃、詰まんない」と嘆き、自分が可愛がっても貰えない責任を赤ちゃんに擦り付ける。

 母親は朝も昼も夜も赤ちゃんの世話をしまくり、赤ちゃんも寝て起きて、泣いてオッパイ飲んでの繰り返し。赤ちゃんは自分では何もできないけど、猫の方は自分で何でもできると自慢する。でも、そうはいっても、猫も赤ちゃんの香りが大好きなのである。

 そんな折、猫は赤ちゃんに尻尾を引っ張られてしまい、母親のことを諦めて、外に出て行く。外は明るいし、気持ちいいい、猫はもう大きいから、草の上でも屋根の上でも眠れるのである。わざわざ母親に執着する必要性はないのだ。

 そうはいっても猫は母親に抱っこされることを願う。なぜなら母親の膝の上は世界一素敵な場所だから、どうしてもたまには抱っこして欲しいのである。赤ちゃんがいる以上、頻繁にではなくていいから、たまには抱っこして欲しいのである。

 猫が主人公で、猫の視点で書かれているために、猫好きにとっては堪らない絵本になっているのだ。物語は淡々と流れて行くか、しっかりと起承転結が出来ており、母親と赤ちゃんを見つめる猫の切ない気持ちがしっかりと描かれているのだ。

●問題点

 ところがこの絵本、問題点が多々ある。

①文章が少なすぎる

 この絵本は文章が少なすぎるのだ。読者としてはこの量では「足りない!」と思ってしまうのである。母親が子供に読み聞かせる場合、頁を速くめくって行くことはできないのだ。或る程度の文章の長さを必要とするのである。

 しかも文章が少なかったために、作画担当に重たい負担を課すことになったのである。文章できちんと説明がなされていないから、作画担当があれこれ考えなければならなくなったのである。作画の田中清代は多摩美術大学の卒業なので、その能力を大いに活かせなかったのは結構マイナス点になってしまうのだ。

②同じ言い回しの文章がある

 同じような言い回しの文章があるのも評価を落としてしまうのだ。絵本の場合、文章量が少ないために、言葉を巧く選んで出さないと、物語をダイナミックに展開していくことができない。原作者はただ単に文章を書けばいいというのではなく、書き終わった後に音読してみるべきなのである。音読すれば文章の異常さに気づけるものなのである。

③落ちが落ちになっていない

 そしてこれが最も問題なのだが、「落ちが落ちになっていない」のだ。原作では猫がたまには抱っこしてと願う内容になっているのだ。ではどうすれば母親に抱っこして貰えるのかといえば、それは赤ちゃんがいなくなった時なのである。

 だから作画の田中清代はラストシーンで原作には出てこない父親を登場させ、その父親に赤ちゃんを持たすことで、母親の膝の上を空けさせ、そこに猫が行けるようにするのである。父親が登場するからこそ、母親は赤ちゃんを手放せることができる。この物語をきちんと終わらせるためには、父親の登場は絶対に欠かせないのだ。

④これは猫の行動ではない

 このことを指摘してしまうと元も子もなくなってしまうのだが、猫は人間の膝の上を最高の居場所だとはしないのである。猫を飼えば解ることだが、猫は椅子の上やソファの上が好きなのである。人間が布団で寝ていると、お腹の上に座ったりする。

 猫は元々、木の上で生活する動物だったのであり、少し高くて周囲を見渡せる場所が最も好きなのである。だから猫が母親の膝の上に行きたがり、母親の膝の上にいる赤ちゃんに嫉妬することは有り得ないのである。

●実は「猫は長女」?

 となるとこれは猫の話ではないということになる。では一体なんの話なのかといえば、それは「長女の話」なのである。長女は今まで可愛がられてきたが、下に赤ちゃんが生まれてしまったために、母親は赤ちゃんの方ばかり向くことになってしまったのである。

 このため長女は寂しいのである。

 だからこの絵本を長女だった母親が読めば号泣してしまうのである。まさにこれこそ自分が成長過程で経験したことだからだ。下に赤ちゃんが生まれた以上、母親を譲り渡さなくてはならない。母親をいつまでも独占することはできないのだ。

 それだけでなく第二子だった母親がこの絵本を読むと、これまた号泣してしまうのである。これこそ自分がこの世に生まれて、自分がやらなければならなかったことだからだ。先に生まれてきた姉を押しのけ、自分が母親を独占しなければならないのである。

 となればこの物語は、実際は「赤ちゃん返り」の話なのである。赤ちゃん返りはこんなっふうにはならないのだ。長女が赤ちゃん返りをしようものなら、長女は母親が赤ちゃんに育児をしているのを妨害してくる筈なのである。それなのに赤ちゃん返りになっていないのだ。

 わざわざ猫を主人公にしないで、長女を主人公にしていたら、この物語はリアルな物語になったかもしれない。長女が第二子の出産を契機に赤ちゃん返りしてしまい、その赤ちゃん返りを卒業するまでの話を書けば、面白い話になった筈なのである。

●この世で生きることは戦いなのだ!

 この絵本を読んで号泣できる人は、読解力があるし、きちんとした感受性の持ち主なのであろう。この絵本を猫の物語だと受け取っている人はまだまだなのである。この物語はまさしく自分に何らかの罪深さがなければ、なんの反応もしてこないからだ。

①順番

 この世で生きて行くためには、「順番」というものが物凄く大事だ。どの母親も第一子は特別な存在なのである。初めての赤ちゃんだから愛情を最大限注いでくるのだ。そのくせ育児に関する知識も技術も不足し、至る所で問題を起こしてしまうのだ。

 これに対して第二子は既に育児を経験した母親から生まれてくるので、母親は育児での失敗を少なくし、より効果的に母性愛を注げるようにするのである。しかも第二子は第一子を押しのけない限り、母親から守って貰えなくなるので、どうしても第一子を押しのけてしまうのである。

 母親は母性本能を持っている以上、一番下の子供に最も多くの愛情を注ぐものなのである。それに対して父親は家庭内での序列を重んじ、一番上の子供を大事に扱うものなのである。だから親は父親と母親が揃わなければならないのだ。

②可愛らしさ

 可愛らしさは子供にとって最大の武器である。可愛い子供は母親から母性愛を大量に貰うことができるからだ。通常、第一子よりも第二子の方が可愛いものだ。このため母親は第二子の方を寵愛するようになるのだ。そのため第一子は押しのけられてしまうのである。

③運不運

 子供が2人いるなら、母親は第二子が幾ら可愛くても、両者を公平に扱わなければならないのである。母親がどちらか一方だけを寵愛したのなら、残りの子供が怒り出すのは当たり前のことなのである。母親が公平でないと、子供たちは喧嘩をしまくる羽目になるのだ。

 しかしどこの家庭であっても、完璧な母親などいないものだ。そのため母親が未熟であるなら、子供たちは延々と喧嘩しまくることになるのだ。これはもう「運不運」というべきものであって、子供の力ではどうすることもできないのだ。

 この世で生きることは戦いなのである。自分が他人を押しのけても、この世で生き残っていかなければならないのだ。

 しかしそういう生き方は罪を発生させるものなのである。だからどこかでその罪を解消させなければならないのだ。それゆえ兄弟姉妹のことで揉めながら育ってきた人はこの絵本を読んで号泣すべきなのである。涙を流せば流すほど、自分の罪は消えて行くものなのである。

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コメント

タマティーさん、こんにちは♪
タマティーさんのブログを拝読させていただくことが、毎日の日課となっております、「おだんご」と申します。
(以前、コメントさせていただきましたが、投稿名を忘れしてしまったので、こちらの名前で失礼します)
今回ご紹介された絵本は、2人目が生まれる時に自分のために購入しました。「きっと次に生まれる子を可愛がってしまうだろう」と思いましたので、上の子の気持ちを忘れないように…という戒めの思いも込めて購入した絵本です。
それと、兄弟が出来ることで上の子の我慢も多くなると思い、「我慢しなくていいんだよ」ということが少しでも伝えられる
といいなぁと思っての購入でもありました。
絵本で号泣した初めての本でしたので思い出深いです(笑)

私は本を読んでも頑張って1日1冊が限界です。
タマティーさんは沢山の本をお読みなるとのことですが、速読されてお読みになるのですが?

沢山の本に触れたいと思うのですが、なかなか読み進められないので読みたい本がどんどん溜まっていきます。
焦る必要0なのですが(笑)読書欲で一人で焦っているので、何か良い方法があれば教えていただけると嬉しいです。

いつも素敵な、時に刺激的な、愛あるお言葉のつまったタマティーさんのブログをこれからも楽しみにしています♪

投稿: おだんご | 2012年9月14日 (金) 15時39分

おだんごさん、この絵本で泣きましたか?
この絵本は表面的に読むと、ただ単に猫の嫉妬の話なので、感受性が強い人じゃないと、この絵本の真意が解らないんですね。

実際は「赤ちゃん返り」が起こるので、あんなふうにはならないんですが。
第二子が生まれたら、作画担当の人が考えたように、父親の登場が必要なんですよ。

「読書の仕方」の質問は記事にして説明しますね。
その疑問を持つ人たちって多いと思うので。
多分、月曜日には出せると思います。

投稿: タマティー | 2012年9月15日 (土) 07時01分

この本、どなたかのコメントで紹介されてましたよね?
なので図書館で借りてました。

私は長女なので、ベビーカーに乗せてもらえなくなったこととか、昔の記憶を思い出しちゃって、やっぱり涙が出ました。

しかもこのあと、餌付けもしてないのに小さな捨て猫が我が家に転がり込んできて飼うことになりました。
我が家は飼うなら断然犬派だったのですが、全員すっかり猫にメロメロです。

冬に二人目がうまれたら、猫も息子もどんな反応をするのか楽しみです。

投稿: 小学30年生 | 2012年9月15日 (土) 17時55分

小学30年生さんもですか!
感受性が強いというか、それ以上に良くそんな幼い頃の記憶を持っていますよね、

因みに教えてくれたのは「明子さん」です。

そういう猫って意外と幸運を呼び込んだりしますからね。
家族構成がいずれ四人になるから、「死の結界」が張られます。
しかし猫がいるために多少緩和されるんですよ。

それにして猫って、なんで餌付けもしないのに、家に住んでしまうんだろう?

投稿: タマティー | 2012年9月15日 (土) 18時11分

ぽんちゃん、それでは運命鑑定いきますね!

まず、食事中のテレビは消しましょう。
食事中にテレビをつけていると、会話がなくなるし、それにテレビの邪気が食べ物と一緒に入って、夫婦仲が悪くなってしまうんですよ。
せめて「食後にテレビを見るようにしよう」と提案したらどうですか?

夫婦の相性は悪くないのですが、会話に問題点があります。
表面上は意見が合うのですが、会話をし続けるとどうも意見が合わなくなってしまうんです。
しかもぽんちゃんは心の触れ合いを要求してくるために、この手の会話だと不満を抱いてしまうんです。

ぽんちゃんの対策としては、とにかく服装は気をつけることです。
名前に「紗」が入っているので、服装がお洒落じゃないと、運勢が悪くなります。

それとこの「サ」という音は古代日本語で「矢」という意味なので、何が自分で出来る仕事なり趣味なりを持つようにすることですよ。
ファッションデザイナーもいいし、趣味で裁縫をするのもいいです。
自分で切り札になるような物を持っていなから、イライラしてしまうのでしょう。

旦那さんは財運があるので、仕事をやれば成功することでしょう。
時期的に仕事以外の勉強をしてレベルアップしていく時期ですよ。
但し今年の11月前後に体調を崩す可能性があります。
無理をしているようなら、栄養のつく料理を出すことですよ。

投稿: タマティー | 2012年9月16日 (日) 07時32分

タマティーさん、おはようございます(^o^)
鑑定をして頂きありがとうございました。(*^_^*)
悶々としていましたが、やはりそうなんだ!(^-^)という事が認識できました。
食事中は、私もテレビを消したいです。レストランでテレビは無いでしょうとは言っているのですが…。

私は、お洒落には興味があります!(高い物ではなく)見るだけでも落ち着きますね(^-^;想像するだけでも。
前に、姉の洋服のコーディネートをした所お洒落になったと言われと言っていました。
それと、洋裁も自己流ですが好きですね(*^_^*)趣味をする事がやはり私には発散と落ち着きになります。

そして会話についてですが、心の触れ合いを求めてしまいますね(^。^;)会話時間よりも内容重視でしつこくなってしまう時もあります。

食事の内容に気をつけて、家族の健康に務めたいです(^_-)

しかし、タマティーさんに鑑定して頂き安心と再認識出来ました。いつも、本当に感謝します。そして迅速、丁寧にありがとうございました。(*^_^*)
これからも、楽しみにしています。(^-^)

最後に、友達から出産祝いに「ちょっとだけ「」

投稿: ぽんちゃん | 2012年9月16日 (日) 09時42分

ごめんなさい(;_;)/~~~また、送信してしまいました。
「ちょっとだけ」と「ちいさいあなたへ」という絵本ご存じでしか?
結構、有名な本なのでご存じかも知れませが(^。^;)
泣けました。(>_<)

それでは失礼します(^_^)vありがとうございました。

投稿: ぽんちゃん | 2012年9月16日 (日) 09時48分

タマティーさま
こんにちわ
先日のコメントから取り上げてくださり、ありがとうございます!

そしておだんごさん、小学30年生さん読んでくださりありがとうございます。(作者でもないのにすみません(笑))

タマティーさま
確かに食べること、ペットを飼うことは罪深いですね。
捨て猫2匹をアパートで飼っていますが、狭いし自由を奪っているんだなとおもいます。

それから主人の会社の社長は犬を飼っています。不思議ですねぇ。
『作家の猫』という本が、あるのですがまさに作家には猫好きが多いですね。

小学30年生さんがおっしゃるように、私も犬派だったのですが猫派になっ
てしまいました。

犬は人につき、猫は家につくといいますがやっぱり謎ですね。

絵本で号泣しタマティーさまにおすすめした割りに、結末を思い出せず先日読み返しました。

そういわれれば、文字も少ないし同じ言葉の繰り返しでしたね。
色々な角度から分析してくださるので、いつも勉強になります。ありがとうございます。

兄弟がいるとまさに戦いですね!
バドミントンの潮田さんのようにあんなに自由ではありませんが、好きなことをしても兄をうまく引き合いに出して、自分は怒られないようにする「したたかさ」はあります(笑)

『写真の量が少ない』だの、私は『動物園連れていってもらえなかった』だ
の散々悪態をついていました。

第一子には第一子の第二子には第二子の言い分があるのですね。

それから、出版社が倒産してもう絶版の『私はネコが嫌いだ。』も文章が少なく同じ言葉の繰り返しですが、持っています。絵本作家で男性は珍しいなぁと思いました。(アンパンマンのやなせたかしさん、ごんぎつねの新美さんは除く)


おすすめしてくださった温冷浴やってみました。おかげさまでくしゃみの回数が減ったような気がします。
レンコンは買い忘れてしまうので、今度はメモしてから買い物に行ってみます。

いつも長々とすみません。残暑疲れが早くよくなりますように。

投稿: 明子 | 2012年9月17日 (月) 10時46分

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受信: 2012年9月17日 (月) 18時11分

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