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『みだれ髪』と一汁一菜地獄 

●『みだれ髪』の裏側

 文学を理解しようとする時、作家たちの文学を読んでいるだけでは不充分である。その作家たちがどのような生活を送っているのかも知らないと、その文学作品をきちんと理解することはできないのだ。文芸評論が面白くないのは、作品しか読んで来ないからなのである。

 与謝野晶子は与謝野鉄幹と「激愛」と言ってもいいくらいに凄まじい恋愛をし、その恋愛を『みだれ髪』という歌集によって昇華させた。『みだれ髪』を読む限り、与謝野晶子は与謝野鉄幹にベタ惚れで、要は与謝野鉄幹のセックステクニックにメロメロになってしまったということなのである。

 しかし少なくとも、与謝野鉄幹と与謝野晶子の食事に関する相性はまるで合わないものであった。与謝野鉄幹は僧侶上がりなので、食事は「一汁一菜」である。それに対して与謝野晶子は和菓子屋の娘なので、食事は豪華ではないにしても、オカズは幾つか出る平凡な食事であったのである。

 与謝野晶子は結婚後、実家でやっていたようにオカズを複数出そうとすると、与謝野鉄幹に

「贅沢過ぎる!」

と激怒され、泣く泣くオカズを一品にするしかなかったという。しかもオカズ自体、非常に質素で、お魚を1匹丸ごと出すのではなく、お魚を半分にして2回に亘って食べられるようにするのである。これには与謝野晶子も悲鳴を上げて、

「もう実家に帰りたい!」

と嘆いたという。

 若かりし頃の与謝野鉄幹はイケメンにして頭脳明晰であり、浪漫派の筆頭として名を馳せていたのだが、その原動力はこの一汁一菜にあったのである。少食であればこそ顔が精悍な顔つきになり、頭の回転も良かったのである。与謝野晶子はそれに惚れたのであって、文句を言える立場ではなかったのである。

●結婚後の与謝野夫婦の変化

 ところが与謝野夫婦は結婚後、両者の運命がまるで違ったものになってしまう。

 まず与謝野鉄幹が自然主義の台頭を受けて、失速してしまうのである。その失速もその後二度と回復せず、与謝野鉄幹は歌人として詩人として役に立たなくなってしまうのである。尤も自然主義の台頭は他の作家たちにも及び、幸田露伴ですら作家失業に追い込んだくらいだから、与謝野鉄幹に能力に問題があったということではないのだ。

 問題は与謝野鉄幹が自然主義に対抗できるだけの活躍をできなかったということなのである。与謝野鉄幹は一汁一菜のために変化に対応できるパワーを発揮できなかったのである。幸田露伴は意外と食通で、肉や魚を結構食っていたのである。このため作家としてはダメになっても、学者として活躍するようになり、学者としてきちんと成果を収めているのである。

 一汁一菜は与謝野鉄幹を地獄に追いやったのに対して、与謝野晶子は一汁一菜のために作家として好調になってしまうのである。与謝野晶子は女性ゆえに食事の変化に巧く対応でき、少ない食事だったからこそ、逆に頭が良く回転するようになったのである。

 それが一発で解るのが、与謝野晶子の容貌なのである。与謝野晶子は和菓子屋の娘ゆえに、幼い頃から和菓子を食ってきたために、慢性的なビタミン不足やミネラル不足に悩んでいたのである。若い時の与謝野晶子は「妖怪」と言っていいくらいに容貌怪奇なのである。

 それが一汁一菜のために徐々に健康になっていったのである。十一人も子供を産んだために十数年間に亘って妊娠しまくりの生活を送ってきたということもあるが、この時期に何かしらの病気をしたということがないのだ。というか少食であればこそ性欲が盛んになり、それで妊娠を連発しまくったのである。

 与謝野晶子が最後の出産をすると、与謝野晶子は明らかに美人になり始めるのである。しかもその時期こそ平塚らいてうと論争したり、『源氏物語』の現代語訳に手を出したりと、普通の女性作家たちでは出来ないような仕事にまで着手しているのである。少食であればこそ、様々な仕事ができたのである。

●明暗を分けた和菓子

 与謝野晶子は一汁一菜に耐えたとしても、彼女自身、実家の風習を与謝野家に取り入れている。この和菓子こそ、与謝野夫婦の明暗を分けてしまったのである。結論から言うと、与謝野鉄幹は和菓子のためにいい仕事ができなくなってしまい、逆に与謝野晶子の方は和菓子のためにいい仕事ができるようになったのである。

 作家という仕事は頭脳労働である。このため脳が激しく疲労することになる。和菓子には砂糖や小豆が使われているので、脳に栄養を与えることになる。しかしその反面、砂糖のために栄養バランスが崩れ、脳の疲労は取れても、脳の機能が低下してしまうということになってしまうのである。

 だからこそ和菓子は抹茶とセットで出されるべきであり、和菓子だけを食ってはならないのである。抹茶とセットであるなら、抹茶のビタミンが和菓子のビタミン不足を補ってくれ、その弊害を最小限に抑えることができるようになるのである。

 与謝野家では与謝野晶子が和菓子を作り、「三時のオヤツ」で家族全員が食べるようになったのである。与謝野晶子は実家が和菓子屋ゆえに和菓子に食い慣れているために、和菓子を食うことで脳の疲労を取り除いたことであろう。和菓子があればこそ、作家として活躍し続けることができたのである。

 しかし与謝野鉄幹は違うのである。

 僧侶だったゆえに和菓子に食い慣れていなかったのである。このため和菓子を食うようになってから頭脳明晰は消えてしまい、感情の起伏の激しい男性になってしまったのである。和菓子のために栄養バランスが崩れ、自分の感情を冷静に保つことができなかったのである。

●徹夜と喫煙が寿命を縮めた

 与謝野晶子にとって結婚当初、一汁一菜は地獄であった筈である。ところがこの一汁一菜のために彼女は健康になってしまい、それで作家として大成していってしまったのである。それなのに与謝野晶子の寿命はそんなに長くない。亨年65歳である。

 これには理由がある。与謝野晶子は「一夜百首会」を開き、徹夜で短歌作りをしたことが度々あったのである。徹夜は体力を激しく消耗するので、徹夜を繰り返していると体が弱ってしまい、それで寿命を縮めてしまうのである。少食のために健康になったからといって、そこに過信があったのである。

 更には喫煙である。与謝野晶子も若い頃には喫煙をしなかったのだが、結婚後に与謝野鉄幹に勧められて喫煙するようになってしまった。しかもかなりのヘビースモーカーだったらしく、夫から「健康のためにタバコの本数を減らせ」と言われるほど、大量にタバコを吸っていたのである。

 タバコは百害あって一利なしの飲み物なのである。喫煙によってビタミンが失われるし、血管を細めてしまうし、体温を下げてしまうのだ。事実、与謝野晶子は脳溢血で倒れているので、まさに喫煙の害が直撃したといっていいのである。

 少食の人たちは大抵が長寿である。多飯食らいの人たちほど早死にしている。食事を大量に食ってしまえば、内臓を疲労させるので、食事過剰は寿命を縮めてしまうものなのである。もしも少食の与謝野晶子が徹夜をせず、喫煙をしなかったら、相当に長生きをした筈なのである。

 それにしても夫婦の食事というのは不思議である。与謝野鉄幹は良かれと思って一汁一菜をやっていたのに、それがために失速し、与謝野晶子は一汁一菜を地獄と思っていたのに、それがために健康になり、子沢山になり、加速していったのである。

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