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『恋する文豪』 ~名作の読み方~

●名作だからこそ、解説書が欲しい

 小説を読む時は行き成り読んではならない。粗筋を読んでから読むようにすべきなのである。というのは、人間の脳は何も知らない状態で小説を読んでも、それをすぐさま理解できないようになっているのだ。小説を手当たり次第読むというのは、文学に対して無知な人間がやることなのである。

 通常、人が小説を読む時、作家の情報を仕入れてから読むものだ。顔がどうとか、生年月日はどうとか、最終学歴はどうとか、そういうことを踏まえて読むからこそ、その小説を読んでもすぐに理解できるのである。

 出来ることなら粗筋を読んでから読むと、より深く理解することができる。粗筋が頭の中に入っていれば、小説を読む際に巧くナビの役割を果たしてくれるので、読書スピードが上がるのである。その小説に解説が付いているのなら、尚いいのだ。

 しかし小説も名作と称される物に関しては、その小説とは別個に解説書を買い揃え、きちんと読めるようにすべきなのである。なぜなら名作は様々な人々が読んできて、「これは本当に面白い!」と思ったからこそ、生き残ってきたのである。

 そういう作品だからこそ、自分にちゃんとした読解力がないときちんと読めないのである。

 名作というのは一般大衆のために存在するのではないのだ。読書階級に属する人々のために存在しているのである。読書の習慣を持ち、普段から本を沢山読んでいないと、名作を理解することはできないのだ。

●読解力は年齢によって異なる

 今回紹介するのはこの本!

 柴門ふみ著『恋する文豪』(角川書店)

   恋する文豪

   

 中学校や高校では国語の授業に於いて名作を読まされるものだ。これは正しい教育の仕方なのである。生徒たちの読解力が低いからといって。彼らのレベルに合わした小説を出すのではなく、かなりレベルの高い小説を読ますからこそ、生徒たちの読解力は飛躍的に上昇することになるのである。

 ただこの遣り方だと、深刻な欠点が存在してしまう。それは生徒たちが名作を誤読してしまうということだ。読解力が低いためにその小説を正しく読むことができないのだ。これは致し方ないことなのである。若い時には理解できない小説もあるということを知っておくことだ。

 例えば夏目漱石の『こころ』なんかは、高校生の必読書にして、大人になっても愛読書にしている人が多いのに、完全に誤読しているのだ。「先生」と「K」と「お嬢さん」の三角関係の話だと思い込んでいる人が殆どなのだ。しかし違うのである。これは「心理小説」と言うべきものであって、メインとなっているのは先生の心なのである。だから題名が『こころ』なのである。

 読解力をレベルアップしていくためには、本を沢山読むことと、とにかく多くの人生経験を積んでいくことだ。人生経験が足りないからこそ、どうしても読解力が足りなくなってしまうのである。何事も自分が経験してみないと解らないものなのである。

 名作であればこそ、自分が「もう青春は終わった」と思った時期に、もう一度読み返しい欲しいのだ。そうすれば、その名作が自分の等身大の物と思えるようになり、その良し悪しが解るようになるのだ。名作を名作と崇めている限り、名作をきちんと理解することはできないのである。

●優れた名作

 名作は全部が名作なのではない。名作の中でも優れや名作が存在する。それは「文章表現が優れていること」「物語構成が優れていること」が絶対条件なのである。この両方を兼ね備えれば、完璧であるのだ。

 近代日本文学史の中で文章表現が断トツに優れているのは「川端康成」である。彼は新感覚派の第一人者であったので、こえが菊池寛率いる文藝春秋社の後押しを受け、日本の文学の主流となるのである。

 しかし川端康成には致命的な欠点が存在していて、それは物語構成が巧くないということなのである。事実、彼の代表作『雪国』では国民の誰もが冒頭の部分を暗誦できるのに、その後の展開を余り知らないのだ。

 これに対して三島由紀夫は文章表現も物語構成も巧いのである。彼の遺作となった『豊穣の海』は近代日本文学史の中で最高傑作といっていいのだ。恐らく、凄すぎて多くの人たちが理解できていないだけのことなのである。

 だが三島由紀夫にも致命的な欠点があって、要は彼の「美至上主義」こそが問題なのである。芸術至上主義ではなく美至上主義である。年を取れば解ることだが、美しい物はいずれ朽ち果てていくものなのである。美は希少価値を持つからこそ、それに高い価値が与えられるだけのことであって、それを絶対視してはならないのだ。

●ダメな名作

 名作の中でもダメな名作は、男女の性差を踏まえていないのである。「男の視点」からその名作を読めばおかしいし、「女の視点」からみればこれまたおかしいのである。代表例としては太宰治や村上春樹だ。

 太宰治の『斜陽』は「男の視点」から見れば主人公の男性に対して「コイツは男じゃないよ!」と思ってしまうのである。そのくせ女性たちに受けるような文言を大量に入れ込んでいるので、そのために女性たちにヒットしてしまうのである。

 村上春樹の『ノルウェイの森』になると、これがエスカレートし、冷静に考えれば、「この作者、バカじゃないのか!?」と思ってしまうくらいにアホなことを言っているのだ。例えば『ノルウェイの森』にはこんな会話が出て来る。

「どれくらい私のこと好き?」と緑が訊いた。

「世界中のジャングルの虎がみんな溶けてバターになってしまうくらい好きだ」と僕は言った。

 バカじゃないの!? こんなアホな会話をしているカップルがいるなら、俺は機関銃を乱射して、すぐさま掃討する。もしも俺が女で彼氏からこんなことを言われたのなら、すぐさま馬乗りになって殴り殺す。ところがこの世にはバカな女どもが多いからこそ、こういう小説を読んで感動してしまうのである。

 男性にはバカな妄想をしてしまうということがあるのだ。歯が浮くような会話をするより、ぶっ飛んだ行動をした方が良いのだ。その点、谷崎潤一郎の『痴人の愛』は評価できる。ナオミのような「女王様気取りのバカ女」に自分が振り回されるというのは、それはそれで面白いからだ。

 この逆パターンが宇野千代の『おはん』であり、。加納屋のような「優柔不断のダメダメ男」が女性は大好きなのである。そういう男性は男の子がそのまま大きくなったようなものであり、母性本能が思い切り刺激されてしまうのであろう。

●人気があるからといって名作とは限らない

 名作の中には発表当時爆発的な人気を得た物があるのに、その後、人気が消えてしまい、文学者たちからも評価されないという作品がある。人気があるからといって名作とは限らないのだ。逆に言えばそういう作品こそ病的な問題を抱え込んでいるのである。

 その際たるものが「キリスト教」だ。

 菊池寛の『真珠夫人』は当時大人気だったのに、通俗小説としてしか評価受けず、今では完全に見捨てられた小説だ。なんでそうなってしまったかというと、処女崇拝があるからなのである。処女というのは恋愛経験値がゼロの女性である。そういう女性がドロドロの恋愛ドラマに出て来ること自体がおかしいのだ。

 次に慶応義塾大学卒である。

 慶応卒の人たちはそもそも裕福な家庭の出が多いので、どうしても小説に於いてリアリズムを欠いてしまうのだ。石坂洋次郎の『青い山脈』なんてのは、時代が過ぎ去ってしまうと、とてもではないが読めない代物になってしまうのである。

 トドメが「同性愛」である。

 恋愛小説なのに、同性愛を隠し、男女の恋愛を展開させる小説はどう読んでも面白くない。福永武彦の『草の花』なんてのは、男女の恋愛を偽装しながら、主人公の男性が男性に恋心を抱き、女性には友情を展開するというバカげた内容になっているのだ。

 小説を読む時、人気があるからといって読まないことだ。自分が冷静になってその小説を読めば、「これは下らない小説だ」って理解することができるものなのである。世の中には悪質な小説だって存在しているのである。

 それにしても柴門ふみさんは相変わらず絵が下手だな~。漫画家なのに~。

  

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コメント

なるほど~。
こころって、そういう意味だったんですねぇ~。
タマティーさま、小説家だけじゃなくて、カルチャーセンターなどで、読書指導の講師などされてみてはどうでしょうか。
太宰はクリティカルヒットというか、読者の心をえぐるところがあるんですよね。カチカチ山でのタヌキがうさぎに、
「惚れたが悪いかっー!」って叫んだり、畜生談では、犬について、ジワジワ迫ってくるものがあります。

三島はただ美しい!
あと、泉鏡花も綺麗だと思います。

投稿: ゆきねこ | 2013年3月16日 (土) 07時06分

追伸
最近、自分で四柱推命を勉強し始めて、「格物致知」が何たるか、わかってきました。
四柱推命でかなり自分のことがわかってきました。将来、何をやるのかもメドが立ちました。
タマティーさまは、医学、歴史、宗教、芸術などいろいろと詳しいし、小説も書いて、占いもできて、たくさんの才能があり、また、実行力がずば抜けてあって、本当にすごいと思います。私にとって雲の上の人です。独自でいくらでも仕事を興すことができると思います。
私もいろいろ頑張りたいです。
将来、深大寺あたりで占い師やろうかな。ねこカフェみたいなところで、深大寺の母なんてね~(笑)

投稿: ゆきねこ | 2013年3月16日 (土) 07時23分


タマティーさん
せっかく太いお客さんついたのに
もう指名しないって言われちゃいました
なんか悪いことした?って聞いたら
悪いことはしてないけど
合わないと思ったからと
言われちゃいました
ショックですが切り替えてまた
頑張りたいと思います(ノ_・。)
はぁー凹むなあ。

投稿: りあ | 2013年3月16日 (土) 20時37分

ゆきねこさん、今回のコメントは思いっきり笑わせて貰いました。

ゆきねこさんが「深大寺の母」になったら、タマティーは顧客第一号で行かせて頂きます。
質問はもう決まっております。

「あの~、とある色白の女性に小説を書くよう頼んだのですが、彼女は小説を書き上げてくるでしょうか?」

深大寺の母はこの質問に対してどのように考えるのか楽しみです。

太宰治は技術的には巧いんですよ。
しかもゆきねこさんは女性だから、太宰治の言葉には弱いと思う。
柴門ふみさんもメロメロになっていました。

ただ、太宰治には致命的な欠点があるんですよ。
だから芥川賞を貰うことができなかったんです。
来週辺り、そのことを記事にした物を出しますので、是非読んで下さい。

投稿: タマティー | 2013年3月17日 (日) 07時00分

りあさん、残念でした~。
こういう時は思いっきり凹みましょう。

そのお客さんは物凄く正直!
本当に相性ってのは有りますからね。
多分、遊び慣れている人なんじゃないかな?
客としてそんなに長い時間、店内にいるわけではないのに、そこまで見切りますからね。

自分と相性の悪いお客さんは他のキャバクラ嬢に回してしまいましょう。

投稿: タマティー | 2013年3月17日 (日) 07時01分

タマティーさま、やっぱり娘の体を守る為母乳を続けたいと思い、離乳食を極力与えないように、「慣らしていかないと」と言うお姑さんに会わせる時にも、断るようにしています。でも断っても慣らしていかないと!と無理矢理食べさせられてしまっています。なので、会わない時に離乳食を食べさせないようにしています。週3回くらいなら大丈夫ですか><?娘も喜んで食べているのでお姑さんも喜んでいて、、「喜んで食べてる」と嬉しそうに言います。。。食べさせる事を拒むのも悪役のようで、毎回落ち込むし結局食べさせられて後悔しています。pm2.5問題で、娘の体を心配して外に連れて行く事をなるべく避ける様にするべきか悩んでいます。外遊びさせるのも体の為と思って、歩き出したら公園に行くのを楽しみにしていたので、、、、

投稿: ひろこ | 2013年3月17日 (日) 23時20分

ひろこさん、既に離乳食を開始している以上、母乳をやめないことの方が大事です。
子供がオッパイを不要になれば、オッパイを見せても飲まなくなりますよ。
これは自然な形で起こります。

外に出て遊ばせよう!
但し、前回の煙霧には困りました。砂だらけですよ。

投稿: タマティー | 2013年3月18日 (月) 06時54分

深大寺ゆきねこ占いカフェの出店の際は是非とも、お越しください(笑)
小説は毎日、短時間でも書きたいところなんですけどね(汗)

太宰は川端康成に芥川賞くださいとお願いの手紙を書いたとか。
賞をとっても続かない作家はたくさんおりますし、自称、作家なんてもたくさんいますからね。

投稿: ゆきねこ | 2013年3月18日 (月) 08時54分

2歳まで続けられる様にしたいと思います。最近まだ気になる事があり、母乳の出が少なくなってきている気がします。母乳とたまの離乳食だけで大丈夫でしょうか?関東の方で、煙霧で外にも出られないくらい空も砂だらけだったみたいで困ってる方沢山居たんですね><娘を遊ばせるのも、場所を選んでもこれからどこに居てもpm2.5避けられないんですね><それよりも外で沢山楽しませて、歩く様になったら沢山遊ばせてやりたいです。

投稿: ひろこ | 2013年3月22日 (金) 09時13分

ひろこさん、離乳食を与えてしまうと、母乳の出は少なくなっていきますよ。
離乳食を与えたことで、ひろこさんの脳の方が「母乳は必要ない」と思い込んでしまうんです。
だから「やるな」って言ったのに~。

まあ、離乳食を与えて行けば、自然と母乳の出が減って行き、その内、自然な形で「卒乳」してしまいます。
これが大事で、「卒乳」だと乳癌に罹る可能性は殆どなくなります。
しかし「断乳」してしまうと、母乳育児をやってしまった人でも乳癌に罹ります。

自然の流れを大事にすることですよ。

投稿: タマティー | 2013年3月22日 (金) 17時30分

離乳食を与えていたからだったんですね><気持ちの上では2歳まで続けたいですが、最近あまり出てないので2歳まで出続けるか不安で、こんな早々に少なくなっていても自然に卒乳出来るでしょうか><

投稿: ひろこ | 2013年3月23日 (土) 07時32分

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