子供が親から離れて行く時に読ませる絵本
●子供の変化に戸惑う母親たち
母親が育児や子育てをしていれば、或る時期に子供が急激な変化を成し遂げ、それに対して母親が戸惑ってしまう時がある。子供の成長は速いものなのであって、母親のようにゆっくりと成長していくわけではないのだ。そこの所を理解していないと、育児や子育てで深刻なトラブルが発生してしまうのだ。
年齢的に言うと、
5歳
13歳
19歳
の三ヵ所である。人間の脳は5歳から6歳の間に脳の臨界点を迎えるので、実を言うとこの時期の子供の脳のシナプス量は母親の脳のシナプス量よりも多いのだ。このため4歳までなら本当に幼児でいたのに、5歳を超えると幼児であるのに、大人びた事を言ってのけるのである。
13歳になると男の子なら男性ホルモンが、女の子なら女性ホルモンが増え始めるので、どうしても己の性別を強調するようになる。この時期はもう子供ではなくなってしまう時期なのだが、母親の方としては13年間も子供の姿を見て来たので、その変化に付いていけないのだ。
19歳は男女ともに成長のピークである。この時期は体力が最も高いレベルになっているので、母親ですらもう適わないのだ。この時期までに家から追い出して、自立していくチャンスを与えないと、その子は自立する機会を失ってしまうのだ。
母親は我が子を育てていくためには、我が子を従属させなければならない。自立というのは19歳以前には絶対に起こらないのが人間なのである。それを踏まえて育てるべきであって、或る程度成長してきたのなら、或る部分は手放していくということをやるべきなのである。そうしないと子供の成長による変化に対応できなくなってしまうのだ。
●12の贈り物プラス1?
今回紹介する本はこの本!
シャーリーン・コスタンゾ著『12の贈り物』(ポプラ社)
シャーリーンには2人の子供がいるのだが、子供を育てて行く過程で道徳の大切さを知り、この本を書き、子供たちに道徳の大切さを教えていたのである。そして我が子が巣立って行く時に、
「更に多くの子供たちへ、愛と希望のメッセージを伝えたい!」
と思い立ち、この本を自費出版したのである。その自費出版の本が18ヵ月の間になんと30万人もの人たちに行き渡り、遂にはアメリカの出版社が動いて、この本が出版社から出版されて、異例のベストセラーになったのである。
シャーリーンが考えた12個の徳目というのは、
「力」
「美しさ」
「勇気」
「信じる心」
「希望」
「喜び」
「才能」
「想像力」
「敬う心」
「知恵」
「愛」
「誠実」
である。俺がこの本を読んで思ったのは、ベンジャミン・フランクリンの「13徳目」である。アメリカ合衆国には儒教の影響というものがないために、どうしても道徳を自分の力で作り上げなければならないのである。こういうのは道徳とは言わないのだが、普遍的な道徳ではなく、個別的な倫理という物を思いついてしまうのである。
シャーリーンはセント・ボナベンチュア大学で哲学を学んだのだが、当然にベンジャミン・フランクリンのことを知っているし、それを踏まえて自分の12の徳目を考えた筈だ。となると、徳目は12個ではなく、13個になる。案の定、この『12の贈り物』は題名とは違って、もう1個徳目が出て来る。
それはなんと、
「自分自身」!
いかにもアメリカらしいオチなのだが、これでは道徳にならない。道徳というのは「人の踏み行うべき正しい道」なのであって、道徳自体には自分自身を入れてはならないのだ。実に変な道徳なのだが、このヘンテコさが余り表立たないのは、この本は母親が子供に読み聞かせた物だからであろう。
ついでに指摘しておくと、アメリカ合衆国の書籍の中には、原題が内容と違うという本がかなりある。これは『オズの魔法使い』の影響だと思う。『オズの魔法使い』はアメリカ合衆国の子供なら誰でも読む本なのだが、この本は題名と内容が違うのだ。読めば解るが、オズは魔法使いではなく、ペテン師なのである。子供の頃に悪書を読んでしまうと、大人になってからこういう悪影響が出て来るのである。
●最も大事なのは自分自身?
この本は多少内容に問題があったとしても良い本である。この本は道徳書として書かれた物なのではなく、母親が我が子のためを思って書いた本なのであり、その点が解っていれば、この本は良い本だと認定できるのである。これ以降の話は、この本が良い本だと認定した上での批判である。
この本は我が子が成長し、親の手から離れて行く時にこそ贈るべき本であろう。だから、5歳か13歳か19歳という重要な時期に贈ればいい。しかしこの本を贈り、我が子に読ませて、
「この本を読んでお前はどう思う?」
と母親が訊けば、
「最も大事なのは〈自分自身〉!」
と子供の方は答えてきてしまうのだ。この本はそう解釈せざるを得ないのだ。
シャーリーンが打ち出した12個の徳目はどれも素晴らしい。だがシャーリーンは最後に余計な物を出してしまったのであり、だからこの本を読んだ人は道徳的なことを教えられながら、道徳とは無縁の存在になってしまうのである。教え方が拙いとしか言いようがないのだ。
確かに自分の命は大事である。しかしそれを至高の存在にしてはならないのだ。人間の命というものは、自分自身を空しくさせるからこそ発展していけるのである。自分自身こそが最も大事だと思ってしまえば、成長する余地がなくなってしまい、道徳というものがなくなってしまうのである。
シャーリーンは子供を2人しか生み育てていないから、子供が巣立つまで「死の結界」が張られ続けたのである。それゆえこういう間違ったことを教えてしまうのである。母親として一人前になっていないことが、子供に大事なことを教える時に思いっきりボロを出してしまうのである。
●子供に大切なことを伝えたいなら絞り込め
親が子供に何か大事なことを伝えたい時、あれこれ言ってはならないのだ。親は子供のことを思ってあれこれ言うものなのだが、子供の方はそんなに多く言われても、覚えることも、実践することができないからだ。子供に大切なことを伝えたいのなら絞り込むしかないのだ。
俺がこの本を読み終わった時、俺ならどういうことを言うか悩んだ。俺が得た結論は、もしも大事なことが1つなら、
「理想を持った合理主義」
ということを教える。人間は理想を持たねばならないのであって、理想がないのなら何をやっても成長しない。しかし理想を持って成長していくためには合理主義というものが必要なのであって、合理性のないようなことはすべきではないのだ。
もしも大事なことが3つなら、
「愛」「厳」「夢」
の3つを教える。人間は人を愛すべきであって、神が選んだ相手なら、自分のことのように愛さなければならないのだ。それと同時に厳しさをも持つべきであって、正しく考え、正しい行動を起こし、正しい結果を出して行かなければならないのだ。そして愛や厳しさは夢があってこそ真っ当なものになるのであって、愛や厳しさだけを引っ張り出してはならないのだ。
シャーリーンの意見で感心できるのは、最も大事な物は「愛」とは言わなかったことだ。キリスト教徒なら大方、「愛こそが最も大事」と言ってしまうものなのである。だがこの世では愛で苦しんでいる人たちが無数にいるのである。愛だけを引っ張り出す危険性に気付いていないからこそ、悲劇がやまないのである。
親が我が子に大事なことを教えないと、子供の方は「お金」を最も大事なものだと思うようになってしまう。お金というものは絶対に人生の中で最も大事な物ではない。お金を最も大事だと思うと、お金を追いかけるだけの人生を送ってしまうので、自分が老人になった時、自分が本当にしたいことを何もしていなかったということになってしまうのである。
●誤訳問題
この『12の贈り物』の原典はそれはそれで良い筈である。ところが日本語版の『12の贈り物』には誤訳問題があるのだ。
原典の題名は、
『The Twelve Gifts of Birth』
である。これを直訳するなら、
『誕生時に於ける12個の贈り物』
である。
ところが日本語版の題名は、
『12の贈り物』
になっているのだ。『12の贈り物』では「誕生」という単語が抜けているのだ。この「誕生」という単語こそが最も大事なのに、翻訳者の黒井健は省いてしまっているのだ。この12の贈り物は誕生した瞬間に得られる物であり、誕生という言葉を絶対に抜いてはならないのだ。
この本の題名の正しい訳は、
『12個の誕生ギフト』
であろう。誕生ギフトを生誕ギフトにしても構わない。英語を日本語に翻訳する時、ただ英語ができればいいというだけではなく、日本語もしっかりとできなければならないのだ。日本語のことをきちんと理解していないと、翻訳の際に大事な言葉を平気で落としてしまったりするのである。
翻訳者の黒井健は題名がこの有様だから、本の中身も正しい翻訳をしていない。原文と日本語訳文がかなり違っているのだ。日本語訳の文章自体はそんなに間違っているのではないのだ。しかし「シャーリーンの心意気が全然伝わってこないのだ!」。
シャーリーンは自分の出産に感動し、その子供たちが健全に育って欲しいと思ったからこそ、この本を書いたのである。その感動が伝わって来なければ、どんなに巧い翻訳をしたとしてもダメなのである。黒井健の日本語訳が間違っているのではないのだ。これでは優等生の翻訳であり、母親が子供たちに贈るような代物ではなくなってしまうのだ。
アメリカの本を日本語訳する時、なぜだか日本の翻訳者たちが平気で誤訳してくる。日本は大東亜戦争の時にアメリカ合衆国に敗北してしまったために、こういう翻訳という場所で敗戦コンプレックスが出て来るのである。アメリカの本を日本語訳した本を読む際には注意が必要なのである。
●ポプラ社へのお願い
この『12の贈り物』は売れていない作品ではないのだ。なんと毎年2回も増刷されている本なのである。だからこそ、この本に注文をつけたいのだ。特にこの本の版元のポプラ社に対して言いたい。
「翻訳者を変えて、新しいバージョンでこの本を出して欲しい」と。
この本を翻訳していいのは、子供を産み育てている既婚女性だけである。母親だから解ることがあるのであって、それを翻訳した文章できちんと表現して欲しいのだ。出来ることなら英語の原文も載せてしまい、英語文と日本語文を読み比べることができるようにしてもいいのだ。
この本の絵も、文章を良く理解した上で描いた物ではない。この本に使われている絵はプロの絵本作家が描いているのだからダメな物ではない。しかしシャーリーンが言いたいことをきちんと表現した絵ではないということだけは確かなのである。
母親が子供を産み育てても、いずれはその我が子を手放す時がやってくる。この本はその時に使用される本なのであって、母親が購入する本の中でも貴重な部類に属する本なのである。この本を贈る母親も、この本を貰った子供も、涙を流すことは確実なのである。
『12の贈り物』はアメリカ合衆国で学校や病院や刑務所で話題になり、様々な人たちを励ました本なのである。これは当然の現象なのである。これはそれだけの価値がある本だからだ。だったら日本でこの本を翻訳して出す時、もっときちんと考えて出すべきなのである。
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コメント
ご無沙汰しております。(^_^)
確かに、親が子供に教えてあげられる時間は限られていますよね。
言葉でも伝えたいですが、同じ体験をして共有する事も必要かなと思いました。
感情ってさまざまで不思議です。
ですが、先日お世話になった従姉妹が急死したと聞き心の整理がつかずにいます。
こんな思いをするなら、仲良くしたくないとさえ思いました。
死についての感情についてタマティーさんはいかがお思いですか?
すみません(x_x)
投稿: ぽんちゃん | 2013年11月13日 (水) 23時15分
ぽんちゃん、人間には「寿命」ってものがあるから、死ぬ時は死ぬよ。
だから、生きている時は自分がすべきことをきちんとこなさなければならないのであって、そうやって生きていれば何か問題は発生したとしても、ちゃんと生きていけるよ。
自分がやるべきことをやっていないと、急死する羽目になるからね。所謂、「神の間引き」という奴で、どんなに健康であっても、呆気なく死んでしまうんです。
自分の身内の者が死んだ時は、しっかりと追悼した方がいい。
自分の感情が鎮まるまで、自宅で静かにしていて、派手なことはしないようにすることです。
投稿: タマティー | 2013年11月14日 (木) 07時05分
タマティーさん、ありがとうございますm(_ _)m
従姉妹は、家業と育児と大変頑張っていたのですが。
残された家族と子供達の支えになれたらと思います。
ところで、守護霊さんって自分では分かるものなのですか!?
何のために生まれて、何をして生きるのか解らないまま終わるそんなのは嫌だ。アンパンマン、深いですね。
投稿: ぽんちゃん | 2013年11月14日 (木) 14時28分
ぽんちゃんの問に答える前に、この従姉妹さんの死因について言っておきます。
多分、睡眠不足とリラックス不足だろうと思います。
睡眠時間は個人差があるので、自分がベストだと思う睡眠時間はしっかりと取っておくことです。
,後、人間の脳は21日間周期で動いているので、21日間に1回は休暇を取っておくべきなんです。
毎日忙しくしていたり、何事にも頑張っている人に限って、或る日突然に死んでしまうんです。
守護霊は自分でも解る場合があります。
霊感の強い人は解るみたいです。
ただ、守護霊の他に指導霊というのもいるので、霊感があるからといって指導霊を守護霊と勘違いする人もいますので、霊感があればいいってわけじゃないです。
多くの人たちが守護霊を理解できないのは、恐らく食事に問題があって、果物をしっかりと食べなかったり、断食しなかったりと、人間が本来しなければならない食生活をしていないからだと思います。
ぽんちゃんも前に何か仕事をやった時、いとも簡単にできてしまったのは、守護霊か指導霊にいい霊がついていて、それで出来てしまったんだと思います。
投稿: タマティー | 2013年11月14日 (木) 18時22分
タマティーさん、ありがとうございました。<(_ _)>
従姉妹は、家業そして今年から二人目の娘が大学の為に家を出てから一人だったので食べ物も適当にしていたのかなとも思います。訳あって旦那さんは、娘の方にいるので。
守護霊さま、指導霊さまは変わらないのですか?
私は、寝る前に自己流ですが感謝をしていますが何か他に行う事はありますか?
色々とすみませんm(_ _)m
投稿: ぽんちゃん | 2013年11月14日 (木) 19時09分
ぽんちゃん、それは言えるね!
一人で生活すると、食事が滅茶苦茶になるから、それで病気になって、というパターンですからね。
指導霊は変わるみたいです。
突如、才能を発揮して来る人などは指導霊が変わったってことですよ。
守護霊は基本的に自分のご先祖様がなるみたいです。
よく親戚同士が集まると、亡くなった先祖の名を挙げて、
「この子は誰それに似ている」
とか言ったりしますが、あれは守護霊は誰かを言い当てているんです。
だからタマティーがいつも言うように、
「家系図を作れ」
ということをやっていると、自分の守護霊が誰のか見つけ易くなります。
投稿: タマティー | 2013年11月15日 (金) 07時00分
タマティーさん、おはようございます(^_^)
そういえば従姉妹の事で思い出したのですが、中々熟睡出来なず三時間ごと位に起きてしまうと言っていました。
タマティーさんの仰る通り睡眠不足でした。
そして、以前に父方の親戚で集まった時に○○ちゃんは先祖の誰に似ているてと昔の写真を見たらそっくりだった事がありました。
家系図を作れとは、そういう事もあったのですね。
ルーツを知ればより感謝も出来ますね。
毎回、色々とありがとうございます。
従姉妹の事は時間がかかりますが、受け入れ頑張ります。
だんだんと寒くなって参りました、お身体御自愛下さいね(^_^)ありがとうございました。m(_ _)m
投稿: ぽんちゃん | 2013年11月15日 (金) 07時40分