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眠らない乳幼児を眠らせる魔法の絵本:『ネムネムのじかん』

●新米ママの悩み:「なんでうちの子は寝てくれないの

 新米ママなら誰でも抱える悩みは、「なんでうちの子は寝てくれない」ということであろう。乳児の段階なら、まだ「日中に起きて夜になったら寝る」という人間として当たり前の活動ができないので、夜になってもなかなか寝てくれないという事態が発生することになる。

 新米ママが自分の子供の寝ないことにストレスを抱えてしまうと、そのストレスを子供の方は敏感に感じ取り、余計に寝なくなってしまうのである。こうなると子供が寝るまで新米ママも付き会わざるを得なくなり、凄まじいまでの延長戦を演じ合うことになるのである。

 育児中はとにかく「規則正しい生活」を心掛けるようにすることだ。育児をしていたとしても、日が明けたら起きて、テキパキと活動すべきなのである。そして夜になったら早寝するようにして、夜泣きで起こされたとしても、睡眠不足に陥らないようにしなければならないのだ。

 もう1つは育児中に「運動不足」には陥らないようにすべきであって、育児をしながら体を動かすことだ。家事をやるのは勿論のこと、日中は子供を連れて散歩に出掛けたり、公園で子供を遊ばせたりするのだ。そうやって体を動かしていれば、母子ともに適度に疲労して、夜になれば睡魔が襲ってくることになるのだ。

 気を付けるべきは、室内の照明であって、蛍光灯で白い光を出していたり、テレビを長時間見ているようであるなら、子供はその光に反応してしまい、なかなか寝ない子になってしまうのである。照明を暖かい色に変えたり、テレビの視聴時間を少なくする工夫をすれば、子供が寝ないという事態は起きにくくなるものなのである。

●題名の翻訳の出来が良ければ内容の翻訳も良い

 今回紹介する本は、眠らない乳幼児を持つ母親たちに贈る本である。

『ネムネムのじかん』(BL出版)

 文:メグ&キャサリン・パイバス

 絵:ペトラ・ブラウン

 訳:石津ちひろ

 ネムネムのじかん[メグ・パイバス]

 原題は『IT'S SNOREY TIME』であり、「SNOREY」とは「イビキの」という意味であり、これは擬音形容詞なので日本語に巧く訳す場合は「ガーガー」とか「スースー」だろう。「寝息」と訳してもいい。だから直訳なら、『イビキの時間』『ガーガーの時間』『スースーの時間』『寝息の時間』といった具合になる。

 これを子供向けに解り易くすれば『ネムネムのじかん』となる。翻訳者の石津ひちろは英語の意味をちゃんと理解した上での翻訳をやっているのであり、この日本語の題名は合格である。英語の本を翻訳する場合、英語ができればいいというのではなく、母国語である日本語もきちんとできないと、ちゃんとした訳語が出て来ないのだ。

 石津ひちろは翻訳者として出来がいいと思って彼女の経歴を調べたら、彼女はフランスに3年間留学していたというのだ。ということはフランス語も多少はできるということである。イギリス人は英語だけを喋るのではなく、学校でフランス語を習うので、フランス語も出来ないと、英語の文章を正しく理解できないものなのである。

 英語だけができる日本の翻訳者たちはこの当たり前のことが解っていないので、平気で誤訳をしたり、安易に意訳を行って必ずしも正しいとは言えない翻訳をしたりする。英語を勉強するだけでなく、フランス語も勉強してもっと語学力を上げて欲しいものだ。

 俺は様々な翻訳書を読んできてつくづく思うのは、題名の翻訳に失敗している本にいい本はないということだ。逆に言えば題名の翻訳が巧く行っている場合は、その本はいい本である可能性が非常に高いということなのである。これは翻訳書を買う時に是非とも参考として欲しい。出来の悪い翻訳書は読書をしても効果がないものなのである。

●起承転結が絶妙

 ネムネム一家はパパもママも子供たちもみんな寝ているというのに、「クリクリ」だけが眠たくないために眠らず、家の外に出てしまう。クリクリはヨチヨチ歩きなのに好奇心いっぱいで、もうこの時点で読者の心を鷲掴みにしてしまう。物語を早い段階で起承転結の起承を終わらせてしまい、転結に入ってしまうのである。

 クリクリはコウモリの真似をして木の枝にぶら下がるが下に落ちてしまう。地面にはハリネズミがいて、クリクリは今度もまたハリネズミの真似をして転がっていくのだが、池に落ちてしまう。池ではヒキガエルの背中に乗ってしまい、ヒキガエルは上にジャンプしてしまい、クリクリはそのジャンプの際に背中から落ちてしまう。

 物語の流れが物凄く巧く。絵本を上から下へ、下から上へと視点移動させ、紙面を思う存分使っているのだ。しかもまずは上から下で、次に下へ下へと行かせ、そしてジャンプで上へと行かせるのだから、これなら子供たちは大喜びである。子供の目の動きが解っていないと、こんなにも巧く書けないのだ。

 絵本は絶対に横書きが良い。横書きだからこそ目が自然と動いてくれるようになるのだ。縦書きだと目の動きが不自然であり、しかもどうしても教訓めいたことを言ってしまいがちなのだ。常に上から下へと目が動くので、上から目線になってしまうのである。

 ヒキカエルの背中から落ちたクリクリを母親がキャッチするのだが、これは物理的には絶対に有り得ない。子供が外でどんなに遊んだとしても、母親の胸の元に帰って来るということなのだろう。しかしそのくせまだクリクリは眠たくならない。

 そこで母親はクリクリに『秘密の絵本』を読み聞かせ、それで寝かしつけてしまう。この『秘密の絵本』がこれまたいい演出をしている。しかも母親がクリクリを見る目が、イギリス人の母親たちが我が子をいとおしく見る目とそっくりであり、この目の優しさをちゃんと見て欲しい。日本人の母親だと我が子を見る時は笑顔になってしまうので、表情が少し違うのだ。

 眠りの最大の秘密は「母性愛」ということなのである。眠たくないクリクリも母親が母性愛を込めて絵本を読んであげると、眠たくないと言いながら寝てしまうのである。非常に感動的な結末であり、読み終わった後に感動が暫く続くことになる。

●動物たちだけの物語

 俺はこの『ネムネムのじかん』を読んでつくづく思ったのだが、「動物たちだけの物語は社会が安定していないとなかなかいいのが出て来ない」ということなのである。この手の絵本を書く時は、作者は自分が動物になりきっているのであり、そういう空想を許して貰うだけの社会がそこには存在していないと、動物たちだけの児童文学作品は決して出て来ないのだ。

 イギリスは立憲君主制の国だし、階級制度が整っている。このため人々は安定した社会で暮らすことができ、動物たちだけが出て来る児童文学作品が生まれて来る余地が出て来るのである。『ピーター・ラビット』はイギリスから出て来たのは決して偶然ではないのだ。

 アメリカ合衆国なら共和制だし、社会が常に流動的になっているので、『ミッキーマウス』にしろ、『スヌーピー』にしろ、動物が主人公になれるが、その物語は動物たちだけで形成されるのではなく、どうしても人間たちが出て来てしまうのである。空想を突き詰めるだけの力がないのだ。

 『ムーミン』はフィンランド生まれなのであるが、ムーミンは動物ではなく妖精であるが、それでもやはり妖精たちだけで構成されるのでなく、人間たちが出て来てしまうのである。『ムーミン』はフィンランドがナチスドイツの側に着いた中で産まれた政治的な漫画であるのだが、そういう背景を考慮したとしても、やはり空想を突き詰めることができないのだ。

 動物たちだけの物語は本当にその動物に話が出て来るのではない。そのキャラクターたちは擬人化されており、作者が健全な人間関係を営んでいない限り、良い作品を作れないものなのである。『ネムネムのじかん』なら母親がちゃんと育児をしていないと、こんな物を作り上げることは絶対にできないのだ。

●眠りの必須アイテム

 『ネムネムのじかん』を頻繁に使っていたのなら、この絵本の効果はなくなる。この絵本は眠りの必須アイテムなのであって、子供が寝ない時にこの絵本を読んで寝かしつければいいのである。子供だって毎日同じ時間に寝てくれるわけではないのだ。

 気をつけるべきは、母親がこの絵本を読む際、子供が寝る前に母親が寝てしまうことだ。これは実際に有り得る話だから、洒落にならない。母親が先に寝てしまうと、子供は「この話の続きはどうなるの?」と喚き出し、余計に眠らなくなってしまうのだ。

 『ネムネムのじかん』はメグとキャサリンという母と娘が作った絵本であることを決して忘れてはならない。これは母性愛なくして読めない絵本なのであって、それを理解した上で母性愛をきちんと込めながら読むようにすることだ。そうすればこの絵本の暖かさが伝わって来て、何度読んでも楽しくなってしまうのである。

 良い絵本というのは子供が読んでも母親が読んでも楽しめるように出来ている。逆に言えばダメな絵本は子供たちだけを対象にしてしまい、子供騙しの絵本を作ってしまうのである。絵本は基本的に母親が読む以上、母親が読めないような本は絶対に作ってはならないのである。

 絵本は絵本の基本である起承転結ですら出来てない絵本が非常に多いので、『ネムネムのじかん』のように起承転結がしっかりと出来ているだけでなく、その起承転結が絶妙な絵本は滅多にないものだから、是非ともこの『ネムネムのじかん』を買って、大事に読み続けるようにして欲しい。子供の脳の成長のことを考えると、脳の臨界期までは出来る限り良い絵本を読まし続けた方が良いのである。

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コメント

タマティー様

子育て中なので
とても参考になります\(^^)/
絵本の読み聞かせは
言葉の発達にも
良い影響があると聞きました☆


ところで もう今年も終わりに近づいておりますが
年末は
泥棒が増えると言いますが何故なのでしょうか?
というのも
地域の回覧板で
立て続けに 空き巣被害が報告されています。

連続で何件も。

我が家の近所も数件。

我が家の立地は
けっこう高い土地で
ホームセキュリティーがついている家が多い地区です。

怪我人の報告は無いですが、白昼堂々と、午前中に留守の家を狙って
インターホンのカメラにガムテープを貼って
鍵を壊して侵入し、
家中を 荒らす手口みたいです。

泥棒に入られやすい家相も あるのでしょうか?

娘と二人で過ごす時、怖いです(*_*)

投稿: なこ | 2013年12月12日 (木) 08時12分

タマティーさん、こんにちは
この間、運命鑑定をして頂いたのに
申し訳ないのですが。。実は。。
彼氏と、寄りを戻しました。
しっかりと、話し合いをした上でです。

タマティーさんが、
以前に距離が近すぎると
プロポーズされなくなるとか
良くないから、一旦距離を
置いた方がいいと言ってましたが
まさにその通りでした。
1ヶ月間、会わない間に
彼氏は変わっていました。
今までは、彼氏の家に
息子を連れて行ったことが
なかったのに、連れて来なよ、
一緒に住もう。と言うようになり
彼氏の両親にも会ったことが
なかったのですが、
近々紹介してくれるみたいです。
どうやら、結婚に本気モードに
なったみたいです。
寄りを戻す時に、今まで
りあに甘えていたと謝られました。

子供が居たら、なんだか
お金が溜まりそうだねとか
俺がなんとかする!と
頼りになるようなことも
言ってくれています。

なので、彼氏を
信じてみたいと思います
タマティーさん、お騒がせ
してしまい申し訳ありません。

投稿: りあ | 2013年12月12日 (木) 14時16分

なこさん、それって窃盗団が来ているんだから、警察に通報して取り締まって貰った方がいい。

手荒な手口の場合、外国人によるもの、特に韓国人とか中国人がやるから、本当に気をつけた方がいい。
奴らは日本で荒稼ぎして、自国に帰ってしまうので、なかなか逮捕されないんです。

年末に空き巣が増えるのは、お金に困っていることと、もう1つは年末は忙しいので外出気味で、それで遣り易いということがあります。

玄関の鍵を二重ロックにするとか、掃除を心がけるとか、不用意に荷物を外に置かないとかと、そういうことをやっておいた方がいい。
不安なら催涙スプレーとかスタンガンとか持っておいた方がいいかも。
こういう件には家相ってのは余り関係ないですよ。


  

投稿: タマティー | 2013年12月12日 (木) 17時04分

りあさん、なんですと!

相手の男性はやはりオカマに走ったのか?

まあ、縒りが戻っても別に構わないけど、同棲はやめた方がいい。
同棲してしまうと、プロポーズする機会がなくなってしまい、ずるずると関係を持ち続けて、挙句の果てに破局になってしまいますからね。

彼氏の両親と会う時は、ちゃんとした格好で行くように。


  

投稿: タマティー | 2013年12月12日 (木) 17時12分

タマティー様。

ご返信ありがとうございます。

家相は関係ないのですね!

我が家は 雨戸を閉めまくり、玄関の鍵は三つしてありますが。。
壊せそうな窓は、あります。格子もないし。。
はす向かいに
キリスト教会があるので
盗む前に
十字架を見て悔い改めてくれないかなって思っていますが、
そんな
呑気な願望は無理ですね。向こうも本気ですから。
とりあえず殺虫剤がすぐ使える様にセットしてありますが
催涙スプレーは
お守りで持っていた方が良いですね(*_*)


なぜ人間が人間に怯えないといけないのか悲しくなります(*_*)

投稿: なこ | 2013年12月12日 (木) 21時23分

はじめまして。
タマティーさま、はじめてで非常に
失礼かと思いますが、ご連絡を頂けますでしょうか?
難しい様であれば、私からご連絡させて頂きますので、
連絡先を教えて頂けますでしょうか?

投稿: ヒメ | 2013年12月12日 (木) 22時49分

ヒメさん、俺はどの人たちにもこのブログ上でしかやりとりしていないので、何か用があるなら、ここにコメントして下さい。
公開できない内容であるなら、公開しませんから。

投稿: タマティー | 2013年12月13日 (金) 07時52分

タマティーさま
始めてコメントします。高齢で39歳で結婚と出産を経験しました。息子は6ヶ月です。育児の検索をしていてタマティさまのブログを見つけました。
旦那と姑と4人家族です
家族は外からみたらいいように見えても色々ありますね
タマティさまのブログで今まで疑問だったことがすごく納得いきました。結婚、出産育児で今までの人格もかやなり変化しました
これからもブログを拝見していい方向にがんばります。頑張ってください。

投稿: サナ | 2013年12月16日 (月) 11時21分

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