小室直樹の世界
●第一回全日本良書大賞決定!
俺は今まで様々な本を書評してきたのだが、この度、「優れた良書であり、日本国民に有益な本であり、長らく読み続ける事の必要性がある本」に対して「全日本良書大賞」を贈ることに決めた。今の所、賞金はないですが、名誉なら与えることができます。勝手に贈呈しますので、受け取っておいて下さい。
それでは栄えある第一回全日本良書大賞は、
橋爪大三郎編著『小室直樹の世界』(ミネルヴァ書房)
に決定しました!
なんと言っても小室直樹博士の功績が余りにも巨大すぎる。しかも小室ゼミの門下生たちには逸材が揃っている。中にはダメな奴もいるが。小室直樹博士のエッセンスと、弟子たちの師匠への熱い思いが巧く結実したことを高く評価した上での受賞である。
この本が有難いのは「著作目録」が付いていることである。現時点で『小室直樹全集』なる物は発行されていないので、この著作目録がないと小室直樹博士の著作物を集める際には非常に困ることになる。それと「年譜」である。非常に丁寧に書かれていると同時に、書き過ぎていない所がいい
全504頁というのも丁度いい厚さである。もしも600頁だったら頁数が多過ぎたかもしれない。実質は395頁なので、集中力を維持して読める範囲内であろうと思う。師匠のことを思う余りに余計なことをベラベラと述べると、逆に読者たちは引いてしまうものなのである。
定価2500円なのだが、この値段だと安すぎるくらいである。1万円で売ってもいいくらいである。今の出版状況だと、もう千円台でいい本というのはもう殆どないといっていい。どうしても2千円以上するので、そのことを読書家たちは解って欲しいと思う。
●滅茶苦茶の人生を送ってきた小室直樹
小室直樹博士の人生で驚かされるのは、その滅茶苦茶な人生である。小室直樹博士は一人っ子で、父親は5歳の時に死亡したので、母子家庭で育った。家は貧しかったので、典型的な欠食児童で、学校で昼食の時間になるとどこかに消えるということをやっていた。
13歳で敗戦を迎えているので、小学校教育に関しては戦前の素晴らしい教育を受けたことになる。占領中はアメリカ軍が日本の教育を徹底的に破壊したので、その後、教育とは名ばかりの洗脳が始まるのである。このためガクンと日本の知的レベル,は下がってしまうのである。
遊びや喧嘩に明け暮れる毎日だったが、中学3年生に数学の教師から呼び出されて説教を受け、癪に障った小室直樹少年は必死になって勉強して、試験で高得点を出すようになった。これ以降、勉強熱心になり、京都大学に進学し、その後、アメリカに留学することになる。
小室直樹博士は「本物の愛国者」である。大学生の時には社会主義に洗脳されなかった。当時、京都大学では社会主義が大流行していたことを考えると、これは凄いことなのである。学生の時に社会主義に洗脳されてしまうと、終生その洗脳から抜け出すことができなくなるのである。
それと特筆すべきは39歳から年に1度「断食」をやっているということである。断食をすれば健康になれるだけでなく、知能を大いに高めることができる。それで44歳から本を出版し始めると、非常に質の高い本を書いて行くことができるようになったのである。
●社会科学とは何か?
小室直樹博士は「社会科学者」である。日本に於いて社会科学を初めて確立させたと言っていい。それまでは日本は西ヨーロッパ諸国から社会科学を輸入していたのだが、やっと日本独自で社会科学を行うことができるようになったのである。
①社会には法則がある
社会には法則という物が存在する。その社会法則を解明していくのが社会科学である。我々人間がすべきことはその社会法則に絶対服従すべきだけである。社会法則から人間は疎外され続けているのであって、如何なることがあってもその疎外を克服できない。
だから自分の願望やら主義主張を押し通しても、それは絶対に実現しない。それどころかそのような行動は全て無意味な物になってしまう。だから社会科学が必要なのであって、社会の背後に潜む社会法則を発見することで、より良い社会を築いて行くのである。
常識では解らない事を解明していくのが科学である。だから科学を学んだ者が、「そんなの常識!」とか言ったりするのは、科学を全く理解していないと言っていいのだ。社会科学はその副産物としてどうしても「大学を出たバカ」を発生させてしまうので、その扱いには注意が必要なのである。
②社会は必ず変動していく
社会は一定ではない。社会は必ず変動していく。仏教的に言うなら「諸行無常」ということである。社会は変動して行くからこそ生き続けるのであって、静止した社会を求めたり、過去の栄光に縋ろうとすれば、途端に不幸が生み出されて行くことになるのである。
社会が変動するわけだから、社会科学を駆使すれば未来を予測するのか可能である。だから小室直樹博士はソ連の崩壊を予言したりすることができたのである。社会科学者たちは何か起こった後に、「自分はこうなると最初から解っていました」と言うバカな奴が出て来るものだが、だったらその現象が起こる前に言えと言いたくなる。
社会が安定すると、優秀な人材が出て来る。それと同時に社会が乱れると、優秀な人材が出て来る。それゆえ「もう日本はダメだ~」という意見は絶対に成り立たないのである。国家がダメになれば、国民たちは必死に考え努力し始めるので、それで優秀な人材が続々と誕生して来るのである。
③社会科学とは条件付きの科学である
社会科学は自然科学と同等の科学ではない。自然科学は本当の科学であるが、社会科学はもしかしたらインチキ科学かもしれない。なぜなら「人間は必ずしも合理的に行動しないから」なのである。人間は合理的な行動を取ることもあるが、非合理的な行動も取って来るのである。
小室直樹博士自身、アメリカのパーソンズから「構造ー機能分析」を学んで、それを日本でやったのだが、後にこの考えが破綻し、事実上廃棄している。尤も行動主義科学自体、アメリカで破綻してしまったので、社会科学の先進国であったアメリカ合衆国ですらそうなのである。
社会科学者たちは「社会科学とは条件付きの科学である」という謙虚な考えを持つべきなのである。社会科学者たちがどんなに努力した所で、社会科学を自然科学のようにすることは不可能なのである。人間という生身の動物たちを学問の対象としている以上、社会科学者が謙虚さを失えば、とんでもない過ちを犯してしまうことになるのである。
●社会科学と実益
人間がどう生きるかに貢献するのは本来「宗教団体」の役割なので、人間の社会的な行動を解明しようとしていく社会科学は常に宗教団体と緊密な関係にある。西ヨーロッパ諸国で社会科学が発達してきたのは、宗教団体が大学を経営していたからという事情が存在する。
日本では宗教団体が経営する大学よりも、国公立大学の方がランクは遥かに上である。このため日本では社会科学と宗教と緊密な関係を持つことができず。それで社会科学の発展が大いに遅れてきたのである。このため「東大廃止論」は定期的に繰り返されることになる。東大がある限り、社会科学は発展しないからだ。
社会科学を宗教から切り離してしまうと、「社会科学の宗教化」という現象が必ず起こって来る。これが社会主義でありフェミニズムの正体なのである。社会科学をやるなら、「社会科学を使って社会を改造するな!」という制約があるということを絶対に忘れてはならない。社会実験をやればやるほど、社会法則から復習を受け、大損害を被ることになるのである。
社会科学は宗教ではない。宗教が「人間はどう生きるべきか?」を教えるのなら、社会科学は「人間たちが集まる社会の動きを解明していく」程度のことしかできない。社会科学は実益があってこそ存在し続けることができるのであって、実益を出せない社会科学は無価値になってしまうのである。
だから大学を経営する際、成果を出して来ない社会科学者たちがいるなら、どんどん解雇して行っていいのである。それなのに日本の大学では大学教員は事実上終身雇用にあるので、それでなんの成果も出して来ないのである。大学の経営を改革しないと、社会科学その物が死滅してしまうのである。
●学問の根底には宗教がある!
小室直樹博士の凄い所は、「学問の根底には宗教がある!」ということを見抜いていたということなのである。それで神道や仏教やキリスト教やイスラム教といった宗教を勉強し、そのエッセンスを立ち所に掴み取ってしまったのである。社会科学は絶対に無宗教では行うことができないのである。
学者たちの中には平気で「自分は無宗教です」と言うバカな人がいるのだが、無宗教では学者としての条件を満たさないのである。学問というものは宗教から派生してきたものであって、学問の力によって宗教を否定してはならない。もしも宗教を否定すれば、いずれ学問も枯渇してしまうものなのである。
この本に掲載されている副島隆彦の論文を良く読んで欲しい。小室直樹博士は「<神の予定調和>と<市場>と<疎外>は実は全く同じ物だ」と教えたというのである。副島隆彦は「この教えこそが最も大事であった」と感想を漏らしている。
西ヨーロッパでは宗教改革によってカルヴァンが「神の絶対性」を再確認し、神の絶対性の前では人間は無価値であると主張したのである。「市場」とは個々の人間の主観や願望では絶対に動かすことのできないルールが存在する商品取引空間である。だから「神の予定調和」を理解している者は経済に於ける「市場」を理解することができる。
人間は疎外されている存在である。神から疎外され、市場から疎外される。疎外とは人間の主観や願望では動かし得ない物があるということであり、人間社会には社会を貫く法則があるということである。それゆえ人間たちはこの疎外を確認すればいいのであって、如何なることがあっても「人間疎外の克服」などやってはならないのである。
俺が社会主義やフェミニズムに反対するのは、彼らや彼女たちは「人間の力で社会を変えて行くことができる」と思い込んでいるからなのである。もしも人間たちが社会を改造しようとすれば、必ず社会から報復を受け、自分たちが思っていたのとはまるで正反対の結果が出て来てしまうのである。社会とはそんなものなのであって、だからこそ人間は徹底的に保守的にならねばならないのである。
俺は間違った教義を持っている宗教にも批判的である。信仰すれば救われrる。念仏を唱えれば救われる。お金を出せば救われる。そんなことは絶対に有り得ない。人間を救済するかしかないかは神が決定することであって、人間の思考や行動によって決まるものではないのだ。
●小室直樹の二大弟子
小室直樹博士は小室ゼミで大量の弟子たちを育てたが、「橋爪大三郎」と「副島隆彦」が小室直樹博士の二大弟子であろう。小室直樹博士の功績が今後どのような評価を与えられるかは、この二大弟子の活躍如何にかかっていると言っても過言ではない。
橋爪大三郎は小室直樹博士の学者としての側面を引き継いだと言っていい。惜しむべきは「社会学者」の肩書を持ってしまい、政治学や経済学を統合していった小室直樹博士には及んでいないということだ。現在は大学教授を退職しているので、後は自分で学問を深めて行って欲しい。
副島隆彦は小室直樹博士の啓蒙家としての側面を引き継いだと言ってもいい。副島国家戦略研究所を主宰しているので、今後、彼の弟子たちが続々と登場してくることだろう。マスコミというのは常に嘘を吐き続けるものだから、マスコミに出ることなく、地道に勢力を拡大していって欲しいものだ。
この本では「橋爪大三郎の解説」と、「副島隆彦の論文」、それに「橋爪大三郎と副島隆彦の対談」が珠玉である。これらを読めば、小室直樹博士の偉業が解るし、小室直樹博士の二大弟子が如何に凄いかも解ることであろう。内容はレベルが高いので、一読で済ますのではなく、何度も読んで欲しいものだ。
この本はシンポジウムがメインなのだが、このシンポジウムは全く盛り上がっていない。その理由は司会をやった宮台真司に責任がある。宮台真司は専門用語をベラベラと並べ立てるのだが、本人が良く理解した上で話しているとはどうも思えない。
なんでこんな人がシンポジウムの司会をやっているのか疑問だったのだが、彼は小室直樹博士からかなり可愛がられたらしいのである。しかしこの程度の能力では、この宮台真司は小室直樹博士の「鬼子」である。もしも将来、小室直樹博士の業績を台無しにする出来事が起こるなら、それは宮台真司によって引き起こされることであろう。
●作家の選別
俺は様々な本を読んで来て、30代の頃は日本の作家たちの中では「渡部昇一」と「山本七平」が最も優れていると思っていた。二人ともキリスト教徒であり、渡部昇一はカトリックで、山本七平はプロテスタントである。やはり近代革命は西ヨーロッパから起こってきた以上、キリスト教を理解しないと話にならないのだ。
小室直樹博士は特定の宗教心を持っておらず、死後は無宗教形式で葬式を挙げたが、俺は彼の書物を読んで、「小室直樹博士の思考の根底には垂加神道がある」という結論を持った。垂加神道を知らなかった時はそんなこと思いつかなかったが、垂加神道を知った後は、「これは絶対に垂加神道だ」と思うようになった。
なんで小室直樹博士はもう存在しない垂加神道の影響を受けていたのかといえば、それは母親のチヨが会津藩士の娘で、しかも父親の死後は会津で育ったので、それで垂加神道の影響を受けたのである。小室直樹博士の弟子たちは「まさか!」と思うが、小室直樹博士はまるで山崎闇斎が復活してきたようなものなのである。
日本のキリスト教徒の数は人口の1%程度しかいないが、それでも知識人の間では善戦していると思う。ただキリスト教徒の知識人たちは日本人なのに神道や仏教の理解がまるでなっていないのである。そのためレベルを上げて行くことができないのである。
俺は小室直樹博士の本を読むようになってから、山本七平の評価が低下していった。山本七平は神道も仏教も理解していなかった。そう判断を下さざるを得ないのである。渡部昇一はキリスト教徒でありながらも、或る程度は神道や仏教を理解している。日本は神仏習合で来た以上、やはり神道と仏教の理解抜きにして、日本を語ることは絶対にできないのだ。
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コメント
タマティー様
覚えていてくださったんですね‼感激です(≧∇≦)
忙しかったので久しぶりにブログものぞけました。
実はまだスタートラインの練習ができてません(;゜0゜)
明日がんばりまーす‼
そしてセクシークェスチョンって‥ドキドキし過ぎる‥
投稿: 泳美孝 | 2014年4月14日 (月) 23時16分