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イギリスのブルーリボン外交

●勲章と外交

 政府が国民を統治して行くに当たって信賞必罰は絶対に必要である。善事をなした者には褒美を与えて、悪事をした者は処罰する。こういうことをするからこそ、国民は自然と善事をするし、悪事をしないようになる。そしてそういう国家は国民が大した努力をしなくてもちゃんと発展していく。

 勲章は国家元首が個人の功績や業績を表彰するために与える栄典の内の1つである。国民が国家元首から勲章を貰うということは、国家元首から認められたことであり、財産に替えることのない栄誉を手にしたことになる。だから勲章を貰うことは非常に嬉しいのである。

 基本的に勲章は国内向けの物である。しかしイギリス王室は勲章を外国人にも与え、勲章を外交に利用するということを思いついた。この勲章外交は想像以上に効果があり、イギリスが覇権を握っていた頃は世界が穏やかだったのは、この勲章外交によって不要な戦争を回避していたからである。

 2つの世界大戦によって覇権はアメリカ合衆国へ移動したが、アメリカ合衆国はその圧倒的な軍事力を頼りにしてしまい、イギリスから勲章外交など学ばなかった。このためアメリカ合衆国の覇権では常に戦争が付き纏い、平和になることがないのである。

 今回紹介する本はこの本!

 君塚直隆著『女王陛下のブルーリボン ~ガーター勲章とイギリス外交~」(NTT出版)

  女王陛下のブルーリボン

 著者は立教大学文学部卒で上智大学の大学院卒なので、文章がイマイチ。立教大学や上智大学だとこの程度になってしまう。資料が第一級なのに、それを巧く読み砕いていない。無駄な文章が多いので、スラスラと読んで行くことができない。

 また題名が間違っている。読めば解るが、イギリスの女王たちだけがガーター勲章の歴史を作ったのではなく、他の男王たちもそれに加わったのである。題名は『イギリス王室のブルーリボン』でいいのではないか? 題名と内容が違っているようでは良書として認めることができない。

●イギリス史の誤解

 ガーター勲章は1348年に制定された物で、フランスとの百年戦争を戦うためにガーター騎士団を創設にしたことに始まる。ガーター勲章はこのガーター騎士団の勲章で、まずは騎士団員たちに与えられ、そして王族にも与えられていった。

 ガーター勲章は制定しから半世紀後に既に外国の君主に与えられるようになった。とはいってもこの勲章の価値は低く、それほど注目されなかった。ガーター勲章の価値が一気に跳ね上がるのは、イギリスがナポレオン戦争に勝利してからのことであって、これ以降、ガーター勲章は外交の道具として非常に重要な意味を持つようになってくるのだ。

 実を言うと、イギリス人自身すらイギリス史に対して誤解している。このため外国人はイギリス人以上にイギリス史を誤解している。イギリスはアルマダの海戦でスペインを打ち破るのが、すぐさま覇権を獲得したのではない。覇権を獲得したのは実はオランダなのである。

 このオランダをイギリスは叩いて行くのだが、英蘭戦争では圧倒的な勝利をなかなか得ることができず、英蘭戦争はなんと3回に亘って行われ、やっと勝利することができた。しかもその間に、イギリスは国内でピューリタン革命が発生したり、名誉革命が起こったりと、内政的には混乱が続いた。

 イギリスが近代的な政治体制を整えてからは、フランスとの戦いに明け暮れるようになった。当時のイギリスとフランスは国力が拮抗しており、北アメリカ大陸で半世紀以上に亘って戦争することになったのである。イギリスはこの長い戦いに勝利するのだが、戦費を賄うために植民地で重税を課したら反乱が起こり、それでアメリカ合衆国が独立してしまったのである。

 この独立戦争がフランスの飛び火し、フランス革命が勃発し、革命の大混乱を制するためにナポレオンが帝政を開始し、それで瞬く間にヨーロッパ大陸を征服してしまった。ナポレオンはロシア遠征で失敗すると落ち目になり、イギリスがワーテルローの戦いで打ち破ると、エルバ島へと追放され、ヨーロッパの動乱は終結した。

 イギリスが覇権を完全に獲得したのは、ナポレオン戦争に勝利してからなのであって、このことを解っていないと、なぜ世界各国の君主たちがガーター勲章を欲しがったのか、その理由が解らなくなってしまうのだ。

●ガーター勲章による友好国の確保

 ガーター勲章は外国人には国家元首にしか贈与しないので、ガーター勲章を貰った外国の君主はイギリスに対して友好的になる。しかもイギリスから最高勲章を授与されれば、こちら側も最高勲章を授与しなければならず、それはイギリスも友好的になることを意味し、それでイギルスとその外国は友好関係を確立してしまうのである。

 このガーター勲章の威力は凄い。別に戦争や外交を用いなくても、ガーター勲章を送りさえすれば、イギリスは友好国を確保できるのであって、その分、余計な戦争を回避することができ、国力の充実を図ることができるのである。幾ら覇権国家といっても、戦争ばかりやっていては国力が疲弊してしまうので、いずれは国家が滅亡してしまうことになるのである。

 イギリスにとって最大の敵はロシアなのだが、ロシアは陸軍が強いために、陸戦に持ち込まれるとイギリスとしてはつらい。負ける可能性が出て来るので、もしも戦争でロシアに負けた場合、それを引き金に帝国全体が崩壊してしまうということもありえる。

 イギリスの覇権が長く続き、しかも大繁栄することができたのは、イギリスがロシアとの直接対決をできる限り控えたからなのである。戦争を全くしなかったのではない。戦争は確かにした。しかしそれを最小限度に抑えたからこそ、イギリスは莫大な利益を手にしたのである。

 勿論、ガーター勲章だけで覇権を維持するのは不可能である。イギリスは日英同盟があってこそロシアに対する包囲網が完成したのに、イギリスは第一次世界大戦後にこの日英同盟を解消してしまうのである。それが第二次世界大戦で日本を敵にすることになってしまい、それで覇権国家から転がり落ち、植民地の殆どを手放すことになってしまったのである。

●ガーター勲章の恐怖

 このガーター勲章はいいこと尽くめではない。ガーター勲章は別名「専制君主殺しのガーター勲章」と言われるほど、ガーター勲章を貰った専制君主たちを死に追いやっているのだ。イギリスは立憲君主制の国なので、ガーター勲章を貰った外国の君主も自国を立憲君主制に変えないとバランスが取れないのである。

 ロシア帝国も、ドイツ帝国も、オルマントルコ帝国も、エチオピア帝国も、全て革命が発生して滅亡してしまった。大日本帝国の天皇もガーター勲章を貰っているのだが、天皇制が打倒されなかったのは天皇が専制君主ではなかったからである。未だに戦前の憲法体制を天皇主権だと勘違いしている人たちがいるのだが、その間違った考えだとガーター勲章の恐怖を理解することはできないのである。

 日本には「官位打ち」という言葉があるが、成り上がり者に大量の官位を与えてしまい、それで滅亡に追いやるという遣り方がある。イギリスには官位打ちの言葉がないので、なんでガーター勲章を貰った国で革命が発生してしまったのか解らないだろうが、身分不相応な勲章を貰うと、バランスが取れなくなり、それで滅亡してしまうのである。

 イギリスは専制君主の国家を滅亡させるためにガーター勲章を贈ったわけではない。相手は自滅してしまっただけのことなのである。だからイギリスにしてみれば、戦争をせずに敵を滅ぼすことができたので、ここでも莫大な利益を手にしたのである。

 古代では専制君主制の方が良かったのだが、近代以降は専制君主制は最早時代遅れなのであって、立憲君主制の国家の方が発展していくことになる。世界は二度の世界大戦と冷戦を経て、もう専制君主制の国家は全て消滅してしまった。早くに政治体制を変更することができなかった国家は革命の餌食に遭って国内では大量虐殺が発生してしまったのである。

●王室外交と平和の確立

 立憲君主制の国家に於いて君主こそが国家元首である。国家元首はその国の中で至高の地位にあるのであって、君主だからこそ物事が良く見えているのである。国家の独立を保つためには「戦争のための戦争」を否定し、「平和のための戦争」だけを肯定し、しかも出来るだけ戦争をしなくて済むようにさせる。こういうことを実現していくためには、首相や外交官たちによる外交だけでは不充分なのである。

 近代以降、国家はもしも戦争に負ければ必ず革命が発生し、君主制は打倒されている。しかも一度倒れてしまった君主制は二度と復活しない傾向にある。これはフランスでもドイツでもロシアでもそうだった。ということは、戦争に負けた場合、尤も悲惨な目に遭うのは君主だということになる。

 国家という物は戦争に関して矛盾した物を持っている。戦争をしない方が利益になる。それでいながら戦争する時は絶対に勝利しなければならない。だから平時に於いて富国強兵に励み、戦時になれば確実に敵国を殲滅する。そういうことをやらないと国家の独立を保てないのである。

 こういった意味で、王室外交は平和の確立に非常に効果的である。君主が外国に訪問すれば、それだけ外交関係が強化され、戦争をする確率が一気に下がるのである。首相や外交官が訪問すれば、何かしらの外交的成果を獲得しなければならず、もしもできない場合は外交関係が悪化してしまい、最終的には戦争になってしまうのである。

 君主が平和を願うのは、何も君主が平和主義者だからではない。戦争なれば国家はギャンブルを行わねばならず、戦争に負けることだってありえるのである。だから不要な戦争はしない方がいいのであって、本当にしなければならない戦争だけをやるべきなのである。

●君主は政治的に無能であってはならない

 立憲君主制では君主は政治権力を行使しないが、だからといって君主は政治的に無能であってはならない・。近代国家では、立法権は国会に、行政権では内閣に、司法権は最高裁判所に与えられるのだが、かといってこれらの機関がいつなんどき機能不全に陥るか解らないのだ。

 戦前の日本は大正デモクラシ-によって帝国議会も内閣も滅茶苦茶になり、それで軍部が政治に乗り出してきてしまい、それを昭和天皇が1人で立ち向かう羽目になったのである。政府が機能不全に陥れば戦争に勝てるわけがないし、戦争に負ければ負けたで天皇制を打倒しようとする連中が大量発生してしまうのである。

 イギリスではこういうことが起きぬよう、女王は毎週火曜日の夕方6時半からバッキンガム宮殿で首相と会談し、必要に応じては首相や閣僚を女王の執務室に呼び付けたりする。しかもイギリスには枢密院という物があって、400名もの枢密顧問官たちが話し合って、女王に政治的な助言をするようになっている。

 日本ではこういうことをやっているかといえば、そうではない。首相だからこそ、国政上重要なことは定期的に天皇と会って自ら奏上すべきなのに、そういうことをしないのだ。戦前の日本では枢密院が存在したが、連合軍の占領中に廃止されてしまい、これでは天皇は政治的な助言を受けることができなくなってしまった。

 立憲君主制の国家の場合、外交は君主と首相の連合によって行えば、恐らく成功率が非常に高い物となるのである。共和国の場合、これができないから、大統領単独による外交となってしまうが、これでは失敗率の方が高くなってしまうのであり、だから戦争をやりまくることになってしまうのである。

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