中国が世界を支配する時
●イギリス人なのに矢鱈と文章が巧い
俺は今まで様々な本を紹介してきたが、共産党員が書いた本というのは紹介していない。共産党員は社会主義に洗脳されているので、どんな本を書いたとしても基本的に同じだからだ。「社会主義革命の宣伝本」と考えた方が良く、絶対にまともな本ではないのだ。
しかし今回、イギリス共産党の党員である「マーティン・ジェイクス」なる者が書いた本を紹介する。その理由はイギリス人なのに矢鱈と文章が巧いからなのである。彼はマンチェスター大学を首席で卒業し、ケンブリッジ大学の大学院に進学して勉強し、博士号を取得した。
それなのにイギリス共産党に入党し、党の機関紙『Marxism Today』の編集長を14年間も務め、停滞していたこの雑誌を、政治論壇に於いて最も重要な雑誌に作り変えてしまった。共産党員である以上、『マルクス・レーニン全集』を読んでいる訳であって、それでドイツ語的な文章が書ける。しかも彼は清華大学の客員教授なので、中国語の影響を受けてより巧い文章が書けるようになった。
俺はイギリス人が書いた本を大量に読んで来たが、このマーティン・ジェイクスの文章は現代のイギリスに於いて断トツに巧いと評価した。それで愚かなイデオロギーに洗脳されることは無視して、彼が書いた本を取り上げることにした。
今回紹介する本はこの本!
マーティン・ジェイクス著『中国が世界をリードするとき』(NTT出版) 松下幸子訳
まず指摘しておきたいことは、毎度の如く、原著の題名と日本語訳の題名が全く違う。原著の題名は、
「When China Rules the World』
であって、直訳すれば、
『中国が世界を支配する時』
となる。「中国が世界を支配する」と「中国が世界をリードする」では全く意味が異なるなのであって、これは「悪意ある誤訳」を通り越して、「悪質極まりない誤訳」である。
翻訳者の松下幸子は津田塾大学卒で、北京在住の翻訳家である。彼女が日本共産党員かは解らないが、北京在住というのがどうも胡散臭い。因みに本には彼女の生年が書かれていない。女性が書いた本で生年が載っていない物にはいい本がないものだが、今回も決して例外ではない。
この本の副題は、
「~西洋世界の終焉と新国際的秩序の誕生~」
と言っているのだから、「中国がリードする」では絶対におかしいのである。中国が世界を支配することになるからこそ、作者はこの本を書いたのである。
●唯物論者が書いた本は実にバカバカしい
マーティン・ジェイクスは共産党員なので、唯物論に徹して中国の歴史と現状を的確に詳述して行く。徹底的に現実を直視しているので、曖昧な記述は一切なく、読んでいると心地よさすら感じてしまう。西洋人が中国のことを論ずる場合、必ず偏見が入って来るので、そういうことをやってしまうと、中国のことを理解することができなくなってしまうのである。
彼はなぜ西洋が離陸し、中国を突き放したのかを、マックス・ヴェーバーのように宗教には求めず、イギリスで石炭が取れたことと、西欧諸国がアメリカ大陸を植民地にしたことを挙げている。まさにその通りなのであって、俺が付け加えさせて頂くと、大航海時代によって銀が大量に流入したので、それで西ヨーロッパは恒常的なインフレ状態になり、それで経済が活性化していったのである。
しかし、この本の結論はいずれ中国が世界を支配するということになると、陳腐な結論で終わっている。それは統計から予測できることなのであって、わざわざこんな本を書くべきではない。唯物論者が書く本は実にバカバカしく、政治は経済の影響を受けつつも、必ずしも経済の要求通りに動かないということがまるで解っていないのである。
俺はこの本を読んで行く内に、共産党員たちにとっては、ソ連が崩壊した後では共産中国だけが唯一の希望の星なのであって、ソ連ではアメリカ合衆国を倒すことができなかったが、中国ならアメリカ合衆国を倒してくれるのだろうと思っていることがなんとなく解った。
西洋人たちにとっては日本の発展が驚きであり、更に中国の超大国化は驚愕させる事態なのである。なぜなら西洋が築き上げた普遍主義の終焉を意味しているので、西洋が普遍だと思っていた物は決して世界的に見て不変ではなかったのである。
●共産中国の強味は一体何か?
共産中国は現在、世界第二位の経済大国であり、既に日本を追い抜いている。しかも2025年にはアメリカ合衆国に追いつき、遂には追い越してしまうことになると予想される。アメリカ合衆国の覇権の終焉は最早十数年後に迫っているのである。
①改革解放経済
共産中国の強味はなんといっても、改革開放経済をやったことであり、社会主義国なのに、経済は資本主義という異常な状態をやっていることなのである。社会主義は国民の私有財産を没収し、計画経済を実施するので、誰がどうやっても必ず失敗する。だったら経済に関して社会主義をやめてしまえばいいのであって、そのアクロバットが中国では巧く行ったのである。
②一党独裁
尤も社会主義を捨てたのは経済だけであって、政治は未だ社会主義を捨てていない。中国共産党は人民主権に基づいて、その代表機関ということになり、他の政党を権力を分かち合おうなどという気は更々なく、一党独裁を実施することになる。
一党独裁は悪いように言われているが、一党独裁だと国家戦略が絶対にブレないのだ。しかも国内の反対勢力を完全殲滅することができる。となれば、先進国のように複数政党制を採用し、政党が変わる度に国家戦略が変わり、国内の反対勢力が政府に雪崩れ込んで来るという事態が発生しないのである。
③中国文明
共産中国は中国文明を背負った国家でもある。中国の歴史は専制君主制の歴史であるが、中国共産党はその専制政治をしっかりと継承している。中国共産党では世襲がない分、無能な者が中国共産党総書記になることがなく、皇帝の一族が皇位を継承していくよりも遥かに合理的なシステムになっているのである。
●もしも中国が覇権を取ったら?
もしも中国が覇権を取ったら、日本は確実に独立を失うことになる。中国は筋金入りの反日国家なのであって、中国が覇権を取ったのなら、真っ先にやるのは日本への侵略戦争であり、日本には戦争放棄を規定した昭和憲法がある以上、侵略戦争を受けても反撃できないという異常事態の中で国家を滅亡させて行くことになる。
中国が危険だからといって、日本側が日中友好を幾らやっても、中国人たちは絶対に反日的態度を取る。中国では反日教育が行われているのであり、日本側がどう説明したとしても、決してその反日感情は消えない。日本としては日中友好など絶対にやらないという態度こそが唯一の正しい選択肢なのである。
中国の経済が発展しているので、日本もヨーロッパ連合と同じように東アジア共同体を作ればいいではないかという意見があるが、もしも東アジア共同体が実現すれば、日本は経済的にも独立性を失うことになる。市場としては中国の方が大きいのであって、日本企業が中国企業に買収されていくことになるのは必至なのである。
中国が覇権を取ったら、日本は絶望的なのであって、日本としては如何なることがあっても中国の覇権獲得を阻止しなければならない。中国は一党独裁という欠点がある以上、中国の反政府勢力を煽って革命を引き起こし、中国が覇権を取ることがないようにさせなければならない。
日本と中国は歴史的に深い繋がりを持っているが、実を言うと、遣唐使の廃止から近代化まで、日本と中国は正式な外交ルートを開いていないのである。貿易だけは活発にやっていただけのことであって、日中関係は経済関係だけが良好と考え、中国が日本に侵略戦争を仕掛けて来るなら、断固たる態度を取って、中国を殲滅していかなければならないのである。
●日本は何をすべきか?
①共産中国を解体する
「日本は今をなすべきか?」と訊かれたのなら、「共産中国を解体するしかない」と答えるしかない。日本にとって危険なのは、中国でも中国人でもなく、中国共産党なのである。この中国共産党が国民に対して反日教育を行い、日本に対して侵略戦争を着々と準備しているからこそ、危険なのである。
②ウィグルとチベットを独立させる
共産中国を解体してしまえば、ウィグルとチベットを独立させることができる。日本は独立したウィグルとチベットと同盟を組めば、中国を包囲して行くことができるので、それで中国は日本に対して攻撃を仕掛けて来ることがなくなるのである。
③首都を北京から上海に移させる
北京に中国の首都があると、どうしても朝鮮半島で何かあればすぐに反応してしまうので、中国の首都は上海に移させ、朝鮮半島で戦争が起こっても、すぐに中国軍が動かなくて済むようにしなければならない。戦争が発生する確率は朝鮮半島の方が高いのであって、朝鮮半島のために中国が介入すれば、どうやったとしても大きな戦争になってしまうものなのである。
④海軍を持たせない
中国は海外の領土を持たない以上、海軍を持たせてはならない。沿岸警備程度の軍事力を持っていいが、戦艦や空母は絶対にダメである。日本は海軍力に於いて、常に中国の軍事力を上回るようにしておかないと、西太平洋の安全を保つことができなくなってしまう。
●東アジアの行方はアメリカ合衆国が握っている
今はまだアメリカ合衆国が覇権を握っているので、東アジアの行方はアメリカ合衆国が握っている。次期覇権国家の中国をどう処理するかはアメリカ合衆国が決めることであって、日本はアメリカ合衆国の政治に翻弄され続けることになる。
気を付けるべきは、アメリカ合衆国の民主党は常に親中国派であるということだ。第二次世界大戦ではアメリカ合衆国と中国は同盟を組んで日本と戦い勝利したので、そう簡単に親中国派をやめることはない。この甘さに中国は付け込み、着々と勢力を拡大し続けているのである。
「覇権国家として然るべき行動を取らない覇権国家は覇権を維持できない」
というのは、覇権国家としての鉄則である。イギリスはこの鉄則を守り抜いたからこそ、覇権を長らく維持することができたのであって、もしかするとアメリカ合衆国はこの鉄則を守らないかもしれない。守らなければ覇権国家の座を降りることになる。
「次期覇権国家は一瞬にして覇権を獲得する」
これこそ歴史法則である。イギリスからアメリカ合衆国に覇権が移行したのは本当に一瞬であった。第二次世界大戦が始まるまで、イギリス人たちはアメリカ人たちのことを見下していたのであり、それなのに戦争が終われば覇権をアメリカ合衆国に取られてしまったのである。
「アメリカ合衆国を滅ぼす者は必ずや中国である」
中国が覇権を獲得してしまえば、基軸通貨のドルは大暴落してしまい、紙切れ同然になる。そうなればアメリカ人たちは全ての財産を失ってしまうことになる。アメリカ合衆国としてはなんとしても中国の台頭を阻止し、中国を崩壊させなければならないのである。
中国の覇権獲得は十数年後に迫って来ている以上、日本は今の内から行動を起こし、様々な手を打っておかなければならない。中国にとっての最大の敵は日本であることを絶対に忘れてはならない。日本がどう友好的に付き合っても、中国はいずれ日本に対して侵略戦争を仕掛けて来ることになるということを決して忘れてはならない。
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