●ブスに限ってシャネルを着る
俺は仕事をする際になんでも着ていいと思うのだが、それでも身分相応の服装をすべきだと思っている。社長がボロを纏っているようでは、その社長の信用が疑われるし、その会社に対して良い評判が立つことはない。地位が上がれば、服装には気を使い、せめて不評を買わないようにしなければならない。
男性の場合、この点、紳士服を着るので、特注品にしてしまえばこの問題を片づけることができる。特注品の紳士服だと、仕立てがいいので、そのファッションがどういうものであっても、すぐにその良さが解るのである。既製品だとどう着ようが着せられているので、それで見た目が悪くなってしまうのである。
困るのは女性が社長になった時だと思う。若く美しく見せるために、若い女性たちが着ているような服装をしてしまうと、「なんだあれは?」と思われてしまう。となると高級ブランドの服を着ることになるのだが、ところが高級ブランドの服に限って、突出してお洒落な服というものないのである。
俺がビジネスをしていく中で気付いたのは、「ブスに限ってシャネルを着る」ということだ。そもそもシャネルの服はお洒落ではない。その女社長が美人であるなら、そんな服は着ないのだが、それなのにブスな女社長に限ってシャネルを着るのである。
俺は自分が気に入った女性には必ずその服を褒めることにしている。美人は「綺麗ですね」という言葉に慣れているものだし、ブスに容姿のことを言おう物なら必ず反撃されてしまう。だから服装を褒めることは無難だなので、その後、会話が弾むということになる。
そういうことをやっている俺がつくづく思うのは、「俺が女性だったら、シャネルの服は絶対に着ない」ということだ。シャネルの商品で評価すべき物はまず香水であり、次にジュエリー程度だと思う。シャネルのことは良く知らないのだが、男性としてシャネルの商品を使用しない者としては、前々からそういう感想を持っていた。
●残酷な幼少時代
シャネル社の創業者はココ・シャネルなのだが、彼女は伝説的な女性ゆえに様々な所で語られている。伝記も多数出版されているのだが、決定版という物がなかった。しかし今回、シャネルの伝記で決定版といえる物を手に入れたので、それを紹介しておく。
リサ・チェイニー著『シャネル、革命の秘密』(ディスカバー21)
![シャネル革命の秘密[リサ・チェイニー]](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4739/9784799314739.jpg?_ex=200x200&s=2&r=1)
ココ・シャネルの人生は最初から不幸だった。シャネルの父親はペテン師であり、放浪癖があった。このため妻子を置いてどこかに行ってしまい、母親は貧困の中で子供たちを育てるしかなかった。無理を重ね過ぎたのか、母親はなんと31歳の若さでしんでしまう。
父親は妻が死んだために、11歳のシャネルを捨てて、修道院に預けた。旅立とうとする父親にシャネルは、
「ここから私を連れ出して! 私を連れてって!」
と泣き叫んだが、父親は娘の頼みを聞かず、そのまま旅立ってしまった。
シャネルの人生で絶対に忘れてはならないのは、自分の父親から全く愛されなかったことだ。貧乏は悲惨なものだが、それでも両親が自分のことをきちんと愛してくれれば、貧乏は苦痛ではない。それどころか貧乏ゆえに家族が団結しているので、思っている以上に楽しいものだ。
しかしシャネルは貧乏であり、しかも愛がなかった。そのシャネルは縒りによって愛を唱える宗教であるキリスト教の修道院で6年ほど中で過ごし、彼女自身に言わせると、
「家も愛もなく、父も母もなく、悲惨だった」
ということになってしまった。
「シャネルのファッションセンスの原点は修道院にあり」といっても過言ではない。修道女として生きていても、全く愛を貰うことができず、そのくせ修道女の服装をしていることで、沸々と自分の服を着たいという欲望が出て来たのである。
●シャネルは高級娼婦だった
シャネルは修道院を出ると、仕事をすることになるのだが、どうもこの辺りのことが不明になっている。というのは、要はこの時期、「シャネルは高級娼婦だった」ということなのであり、シャネルの名誉を重んじて、そういうことを正確に記述してこないのである。
高級娼婦は普通の娼婦たちとは違う。売春がメインで娼婦になっているのではなく、誰かの愛人になることをメインにして娼婦の仕事をやっている。シャネルが幸運だったのは、二人の優れた男性に巡り会えたことであり、彼等の愛人になることで、運命が開けて行くのである。
まず1人目はエティエンヌ・バルサンであり、彼が文学に詳しかったために、シャネルは読書をして文学に詳しくなっていった。それだけでなく彼が乗馬をするために、シャネルも乗馬を嗜むようになり、それで健康な肉体を手にすることができたのである。彼はシャネルに帽子屋を持たせ、これがシャネルのファッション界への出発点となる。
但し、この男性との交際中、シャネルは妊娠してしまい、彼の要請によって堕胎手術を行った。しかしこの堕胎手術が悪かったらしく、これ以降、シャネルは子供を産めない体になってしまった。このことはシャネルにとって終生の負い目となる。
2人目の男性はイギリス人男性のアーサー・カペルであり、彼はポロの選手だった。アーサー・カペルとの恋は最初戯れとして始まったのだが、その後、双方が本気になってしまい、結婚寸前にまで進んでしまった。しかしアーサーは結婚直前に他の女性と結婚してしまい、そして結婚後に交通事故で死んでしまった。
アーサー・カペルこそ、シャネルをシャネルたらしめた男性なのであって、シャネルはこの男性から新しい時代のエレンガンスを学んだ。それだけでなく、彼は父親代わりであり、兄の代わりでもあった。孤児になってしまったシャネルにとっては、なくてはならない存在だったのである。
シャネルがアーサー・カペルと付き合っていた頃、ファッション界に進出し、第一次世界大戦に於いて大儲けすることになる。時代はドレスよりも、仕事ができる服を求めるようになり、シャネルのような新人デザイナーが一躍ブレイクすることができたのである。ファッションの革命を起こすのは、普通のデザイナーより、高級娼婦の方がいい。高級娼婦は仕事で新しいファッションを常に必要とするから、だったら自分で作った方がいいということになる。
●仕事に生きた女
シャネルは高級娼婦として愛人をやっていたのだが、愛人だけで収まるタチではなかった。シャネルは思春期を修道女として生きてきたために、何も労働せず、愛人として生きるのは苦痛だったようである。普通の女性なら愛人に収まってしまうのに、シャネルが盛んに働きまくったのは、修道院で教え込まれたことがしっかりと生きてしまったのであろう。
シャネルは仕事に生きた女といっていいのだが、シャネル以前のフランスはファッションセンスが実にダサかったのであり、それに対して革命を引き起こすことでスターダムへと伸し上がって行った。シャネルは自分が仕事をしている以上、仕事をし易い服を作って行ったのであり、それが女性の社会進出が起こり始めると、売れに売れたのである。
シャネルは帽子からファッションへ、そして香水へと仕事を広げて行くのだが、香水こそシャネルのセンスと能力とが思う存分に開花したものであった。シャネルはただ単に香水を作ったのではなく、服装の道具として香水を用意したのであり、それがヒットしたのである。
シャネルが香水を売り始めた頃が彼女の人生の絶頂期であり、これ以降、運勢は下降しまくることになる。その最大の理由は、シャネルがlこの頃から同性愛に走ってしまったことなのである。同性愛に走ってからのシャネルは運勢が下降しっ放しであった。
シャネルはアーサー・カペルとの破局と、そして彼の交通事故死が余程ショックだったのだが、これ以降、恋愛らしい恋愛を1つもしていない。恋愛よりもセックスを求めてしまったのであり、自分の愛する男性が死ぬ運命にあるとなれば、セックスの相手は女性と成らざるを得ないということになる。
●シャネルに対して勝手に運命鑑定
シャネルの人生を一言で言ってしまえば、「男性の愛人になっている時は幸運続きで、同性愛に走ってからは不幸続きだった」ということである。そこでシャネルに対して勝手に運命鑑定をやってみようと思う。運命鑑定をしてしまえば、なんでこんなことになってしまったのか、その理由が解るからだ。
Gabrielle Bonheur Chanel (ガブリエル・ボヌール・シャネル)
地格は17画であり、彼女は個性的な女性であり、父親を追い求める運命にあるというのが解る。17画だと愛人になってもおかしくない。結婚して落ち着いた生活をすることができないので、結婚など望まず、愛人として生きて行った方が良かったのである。
シャネルの愛称は「ココ」なのだが、
Coco Chanel (ココ・シャネル)
にしてしまうと、地格は4画なので、この画数だと同性愛の傾向が出て来る。4画は結婚運が非常に薄く、恋愛もまともな物をすることができない。ただ単にセックスをずるずるとやってしまい、それによって運気を衰退させていってしまうのである。
シャネルの顔で特徴的なのは、「愛人ホクロ」があることであり、本来は本名の方の運勢が出ていたのである。愛人になる以上、同性愛には不向きなのであって、同性愛をやってしまうと、ダメになっていってしまう。要は愛称が自分の本来の生き方を破壊してしまったということなのである。
シャネルはアーサー・カペルと付き合っていた頃は非常にいい顔をしているのだが、同性愛に走り始めるとなんとも締りのない顔になった。愛人なら愛人として生きて行けばいいのであって、それ以上の物を求めてはならないのである。
因みに、うちの親戚にシャネルの顔に良く似た女性がいる。彼女は妻子ある男性と付き合い、結婚することなく長らく付き合っていたが、その後、その男性と結婚することができた。子供の頃からしっかりと「愛人ホクロ」があったから、最初からそういう運命であったのであろう。
●翻訳に問題がありすぎる
原著はお洒落な本であり、実に素晴らしい本である。今までにない情報を集めて、シャネルの実像がはっきりと解るようになった。著者は「リサ・チェイニー」というのだが、イギリス人で「リサ」という名前の女性は基本的にお洒落な女性である。日本人でも「リサ」の名を持つ女性はお洒落な人が多い。まずはそのお洒落な女性が書いたということを理解して貰いたい。
しかし日本語版になると、翻訳が余りにも酷過ぎる。毎度のことながら、題名が誤訳である。日本語版では、
『シャネル、革命の秘密』
なのだが、原題は、
『CHANEL AN INTIMATE LIFE』
であり、直訳すれば、
『シャネルの詳細な人生』
となる。読めば解ることだが、原題通りにシャネルの詳細な人生が綴られているのである。確かにシャネルの革命の秘密も書かれているのだが、それがメインになっているのではない。
悪質なのは、翻訳者の中野香織が原著から日本に関係のない物を削除してしまい、それでシャネルの詳細な人生が解らなくなってしまっているという事なのである。題名の変更には翻訳者のこういう悪質な意図があったことを忘れてはならない。
この本がまともな翻訳をしていないということは、作者のプロフィールも、翻訳者のプロフィールもないことでも解る。この本をきちんと翻訳しようと思えば、英語とフランス語の両方ができないと翻訳できないのだ。となれば、外国語大学の出身者でないと無理ってことなのである。
それと、本の大きさはハードカバーなのに、本の形がハードカバーではないので、実に読みにくい。シャネルの伝記なのだから、もう少し制作費にお金をかけても良かったのではないか? この1冊さえあれば、シャネルの人生は解るのであって、永久保存できるような本にするべきなのである。
巻末を見て気になったのが、出版社のディスカバー21のマーケティンググループの人数が多過ぎ。これだけ大きければ、組織として機能しなくなるのは当然のことなのである。なんと「51人」である。人数が多くなればなるほど責任は曖昧な物になり、それで粗悪品を作ってしまうのである。
●シャネルの格言
リサ・チェイニーはイギリス人なので、シェイクスピアに倣って「シャネルの格言」という物を本の中の至る所に配置してある。これが実に小気味いいのであって、俺が気に入った物を抜き出してみた。
「きめ細かい布地はそれだけで美しいが、ドレスが贅沢であればあるほど貧弱になる」
ドレス破壊による新ファッションの創造は、シャネルがこういう考えを持っていればこそできたことなのである。今でもいい生地を使っているというのに、その服を贅沢にしてしまい、逆にその素材の良さを活かせないということをやるデザイナーは幾らでもいるものである。
「みんなは貧しさとシンプルさを混同しているのよ」
美しくなればなるほどシンプルになる。逆に言えば、醜くなればなるほど複雑になっていく。貧乏で着る服が余りない場合、シンプルにしてしまえばそれでも充分に綺麗に見えるものなのであって、貧乏な時にそういう訓練をしておかないと、豊かになった時、自分の服装をシンプルな物にしようとしてもなんか貧乏臭くなってしまうのである。
「奇抜であることは流行遅れ」
奇抜な物は所詮「奇抜な物」にしかすぎない。これは生きていれば解ることなのだが、若い時はなかなかこのことが解らない。だから奇抜な物を作り、そして自滅して行ってしまうのである。流行と言う物は、冷やかに見ておいた方が無難というものなのである。
「服を作る上での独創性が仮装や装飾に走り、舞台衣装になってしまっているという間違いを犯してしまう」
現在のファッションショーを見ればまさにその通り。自分の作った服が舞台衣装になっていれば、それは独創した訳ではないということなのである。独創は閃きから生まれるものだから、少し現場を離れて、頭を冷却化した方がいいのである。
「ゲイの男性デザイナーたちはモデルの体を使ってデザインしているのではなく、頭の中でデザインしている」
ファッション業界ではゲイ率高し。このためゲイの作ったファッションが罷り通ることになるのだが、ゲイは所詮「男性」だから、頭の中で考えてしまうことになる。大事なことは女性が着て美しくなる服を作ることなのに、それができないのである。といっても、シャネルはレズに走っているので、同性愛者同士のいがみ合いの発言だと思っておいた方がいい。
「ファッションの真の目的は、私達の外見を再定義することではなく、自分が何者かであることを語ることである」
「服装ではなく、あなたは一体何者なのか?」ということなのである。女性の場合、結婚によって服装が大きく変わるし、それに次いで仕事によっても服装が変わる。女性なのに普通の服装をしていれば、普通の人生しか送れなくなるのは当然のことなのである。
「女性を美しく見せるのは、長続きし、見てそれと解るスタイルであり、それこそが最高のファッションの基本である」
「美しさを持続させる」ということは、シャネルが老いを感じ始めてから、メインテーマになった。シャネルは男性と交際しなくなると、途端に老けこんでしまった。それを補うためにファッションをどうにかしなければならなかったのである。
「私は私なりにファッションを正直にした」
シャネルのファッションを理解するためには、この言葉が一番である、シャネルの服はシャネルにしか合わない。だから他の女性たちがシャネルの服を着ても、そんなに綺麗にはならない。シャネルの商品はファッションではなく、香水やジュエリーが良いのは、これらの商品は彼女専用に作られてはいないからなのである。
「プライドを高く持てば、傷つくこともある」
それではなんでシャネルのファッションがブスな女社長たちを惹きつけるのかといえば、それはシャネルはプライドの高い女性だったからなのである。プライドの高い女性が作ったからこそ、プライドの高い女性たちを惹き付けるのである。本当に困った人たちである。そういうことをせずに、謙虚になった方がいいというのに。
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