近代文学とはなんぞや?
●近代文学はそれ以前の文学とは決定的に異なる
マルティン・ルターによって始まった宗教改革は腐敗したキリスト教を正す運動であっただけでなく、聖書至上主義に走り、聖書以外の全ての物を否定するというとんでもない文化革命であった。プロテスタント化した国々ではそれまで持っていた文化が全て消滅してしまった。
不思議なことと聞こえるかもしれないが、ローマカトリック教会はキリスト教を宣教していくに当たって現地の宗教を破壊し、文化も破壊したが、キリスト教化してしまえば、現地の破壊された文化を収集し。保存するということをやった。このため宗教改革が始まっても、暫くの間は文化的には常にカトリックの方が優勢だった。
プロテスタンティズムでも改革派となると文学を読むことをも禁止した。「小説を読む閑があるなら聖書を読め」ということになった。こうなると、聖書だけが正しく、他の全ての物は間違っているということになる。改革派は呪術の完全否定を引き起こし、徹底したリアリズムを持つことになる。
このリアリズムが外界に向いている間は、経済や科学を発展させていく原動力となる。しかしこのリアリズムがキリスト教の方に向かってしまうと、キリスト教は処女懐胎だの死者復活だの、荒唐無稽な話が多々あるために、キリスト教を否定することになってしまうのである。
勘違いしてはならないのは、キリスト教を無闇に否定したのではない。キリスト教を信仰していたからこそ、その信仰を否定するという逆説的現象が発生したということなのである。この特異現象に深く関与したのがフリーメーソン団であり、その秘密結社に加入した者たちが自分たちの思想を表現するために新たな文学を作り出したのである。
近代文学は絶対に宗教文学ではない。それどころかキリスト教を否定する物がしっかりと組み込まれている。普通の読解力ではこれを理解できないので、それでキリスト教否定と解らず、単なる文学作品として読んでしまう連中が大量に出て来てしまうのである。
●なぜイギリスで近代文学が誕生したのか?
宗教改革の結果、近代文学を産み出すという現象が最初に起こったのはイギリスであった。イギリスは国教制を取り、ルター派ほど狂信的にならず、カルヴァン派ほど厳格にならず、ローマカトリック教会がやっていたことを巧く継承したために、宗教改革の成果がしっかりと国民に及んでいった。
日本は神仏習合の国家であるために、国教という物を樹立したことがなかった。このため国教制がどのような物なのかということを理解できた人は殆どいない。国教を採用してしまうと、確かにその宗教が全国的に普及するのだが、本気でその宗教を信仰するのは国民の内、20%から30%程度であって、他の人たちは信仰を失ってしまうのである。
尤も信仰を失っても、国教会が持つ宗教儀式だけは人生儀礼として使用して来るので、それで何か咎められることはなくなる。そのため国教を採用した国家では国内に自由があるようになってしまい、それで文化が急速に発達してくることになる。
しかしシェイクスピアは男色家だっために、同性愛を否定するキリスト教に対してはどうしても反対せざるをえなかった。イギリスでは長らく男色家であることがばれると仕事できなくなるので、男色家であることを隠して仕事をしなければならなかった。それでもピューリターン革命が起こると彼は引退し、一切の活動していない。ピューリタンたちは同性愛を躍起になって否定したので、最早、劇作家として活躍できる余地はなかったのである。
近代文学はシェイクスピアこそが出発点だと考えられている。シェイクスピアの作品で特徴的なのは、キリスト教を賛美するような物は何1つ書いていないということである。しかも熟読していくと、キリスト教を否定している物が多々見受けられるのである。こういう物はそれ以前にはないのである。
●写実主義とロマン主義
フランスは元々文学の盛んな国ではあったが、文学が充実していたがゆえにシェイクスピアの作品の翻訳が死後200年後になってから行われるという異常事態を招いてしまった。このためフランスでは近代文学のなんたるかを知らず、異常な発展を遂げてしまったのである。
それが「写実主義」であり、物事を客観的に写実するのが本当の文学だと主張してきた。この写実主義に関与した作家の殆どがフリーメーソンであり、フランスのフリーメーソンはイギリスのそれとは違い、明らかに無神論を取り、科学を必要以上に尊重した。だから写実主義を産んだといっていい。
ドイツは近代化に遅れれたために、近代が持つ合理主義を採用しつつも、それに反発するという態度が見られた。そこでロマン主義という文学運動が起こり、個人の自我や能力を殊更に強調する文学作品を作っていった。ドイツはルター派が強いために、どうしてもこの手の唯我独尊的な主張が出て来るのである。
ドイツからアメリカ合衆国へ大量のドイツ人が移住したために、このロマン主義はアメリカ合衆国で世俗化した形で花開いた。超人的な能力を持った英雄が主人公が様々な困難を解決していき、最終的にはハッピーエンドになる。そんなことは現実的には有り得ないのだが、合理主義が強くなればなるほど、それに反発する形でロマン主義が出て来るのである。
近代文学は写実主義とロマン主義の融合だと言われる。しかしそれはヨーロッパ大陸、しかも主にフランスとドイツで起こったことであって、必ずしも正しい考え方ではない。ただ、宗教改革がヨーロッパ各国では違った動きを見せたために、結果的に文学に於いても違いが出て来てしまったのである。
●ロシア文学こそ世界最高峰の文学
写実主義とロマン主義の双方の影響を受けたのがロシア文学である。ロシアでは宗教改革がなかったために、
「中世文学の殲滅」→「近代文学の創造」
という動きが全く見られなかった。ロシアは後進国だったので、ロシア正教は文学を破壊する必要性が全くなかったのである。
ロシア帝国は専制君主制を行いつつも、帝政ロシアの大繁栄を遂げ、世界最大の領土を誇るまでになった。それだけ繁栄すれば当然に文学の需要が出て来るのであって、それでロシア文学は黄金時代を迎えることになった。しかも遅れていたがために、イギリスやフランスやドイツの文学的成果を巧く頂戴して、より発展した文学作品を作り上げたのである。
ロシアの上流階級はフランス語を日常語として使用していたのでフランスの影響が非常に強いのだが、トルストイだけがシェイクスピアの影響を受けた。但し否定的に解釈したのだが、それでもトルストイはこれによって普及の名作『戦争と平和』を書き上げている。
ロシア帝国はイギリスと同じく国教制を採用したのだが、イギリスと同様に強固な信仰を持つ信者たちが出て来る一方で、信仰を喪失してしまう人たちが出て来た。ただ、ロシア帝国がイギリスと違うのは、政治体制が専制君主制だったことであり、それが知識人たちに深刻な苦悩を与えてしまったのである。
ドストエフスキーは飽くまでもロシア正教を支持し、ロシアの知識人たちが社会主義思想に被れて暴力革命に憧れることを批判した。しかしロシア国内の階級分裂は深刻な状態であり、最早、ロシア正教の力でなんとかなるものではなかった。そのためにロシア革命が発生してしまうのだが、ソ連共産党は文学を徹底的に破壊したために、ソ連に於いては文学が完全消滅してしまった。
とはいっても、ロシア文学の価値が変わる訳ではなく、トルストイとドストエフスキーの小説が近代文学としては最高峰にあるという評価は定説と言っていいだろう。ロシアは遅れて近代化したことが文学に於いて実にいい結果を産み出したのである。
●日本の場合「近代化していくことの苦悩」
日本が近代化するのはロシアより遅れた。江戸時代は230年の長きに亘って平和を実現でき、人々は豊かな生活を営んだが、その代償は非常に高くついた。江戸時代の後半は堕落の時代であった。滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』が出ると、それを超える作品を作ろうとする者たちが1人も現れなかったのである。
しかも日本は近代化していくに当たって、「日本語の口語化」という大問題に直面し、この試行錯誤が行われた。共通語は江戸の武士たちが使っていた言葉に長州藩で使用されていた言葉を加味することで、新たな日本語を創造していった。
「なぜ夏目漱石が文豪なのか?」といえば、それは夏目漱石の小説以降から今でも読めるような小説になったからなのである。尤も夏目漱石は大した物語を作れなかったから、それで森鴎外をも文豪にすることでバランスを取った。
気を付けなければならないのは、夏目漱石や森鴎外を文豪だと言っているのは日本人だけであって、国際的基準から見れば夏名漱石も森鴎外も文豪ではないということなのである。ではなんで日本人たちがこの2人を文豪扱いにしているのかといえば、それは、
「近代化していくことの苦悩」
を彼等の小説の中に見ているからなのである。
日本は王政復古という形で近代化して行ったために、宗教に関しては神道を取りつつ、科学や技術に関しては西洋の物を取り入れるという態度を取った。近代化を簡単に進めようとすれば、キリスト教を受け入れてしまえばいいのだが、そうすると日本らしさと言う物が完全消滅してしまう。
戦後は松本清張と司馬遼太郎が国民作家となったが、2人ともキリスト教徒ではなかったということに共通項がある。キリスト教抜きでどう近代化し、どうやってその繁栄を維持していくのか? このことが解っていないと、日本ではまともな小説すら書けない状態になっているのである。
●文学の宗教化
近代文学に於いては或る1つの特徴がある。それは「国教のある国では必ず文豪を産み出しており、その文豪の作品は現在でも名作の評価が与えられている」ということだ。なぜイギリスでシェイクスピア、ロシアではドストエフスキーとトルストイを産んだのかといえば、国教が存在していたからなのである。
国教のなかった国では、フランスだろうがドイツだろうがアメリカ合衆国だろうが、そして日本だろうが、イギリスやロシアが産んだような文豪など1人も誕生しなかったし、その国では文豪の評価が与えられていても、国際的基準では別に大した作品を書いていないのである。
国教があれば、その宗教が国民の間に広く浸透すると同時に、国民の大半がその宗教への信仰をなくしてしまう。それによって国内には自由が生まれ、そこで文学が創造され始めると、「文学の宗教化」という現象が起こり、人々はまるで宗教書を読むように小説を読み始めるのである。
国教がない国ではこの文学の宗教化が起こらない。無理矢理に起こそうとすれば宗教文学を作るしかないのだが、しかしそういう物を作っても、文学の宗教化は起こらないのだ。これではどうしても文学は娯楽になってしまい、いずれは世俗化して、低レベルな物になってしまうのである。
日本には国教がないが、かといってキリスト教を受け入れていないという特殊な状況にある。日本の文学シーンがフランスやドイツやアメリカ合衆国のそれとは異なる展開になることは当然のことなのである。面白いことをやろうと思えば、幾らでもできる絶好のポジションにいるといっていい。
だから日本の文学にはもっと期待していいのであって、取り敢えずは夏目漱石や森鴎外を文豪だと思っていることをやめて、近代文学を大局的に見るようにしなければならない。国際的基準から文豪ではない作家を文豪だと思っている限り、近代文学とは一体なんであるか解らなくなってしまうものなのである。
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コメント
タマティーさま
お久しぶりです。ご無沙汰しております。
いろいろとあって、子供が発達障害(ADHD)と診断されてしまいました。どうしよ~。
もしかしたら、薬を飲むかも知れません。(泣)
投稿: ゆきねこ | 2014年11月 4日 (火) 22時06分
ゆきねこさん、お久しぶりです。
子供はみんな注意力散漫だって!
発達障害なんてものは存在しない病気なんであって、精神科医の所には近づかないことです。
「内海聡」という人がこのことをきちんと述べておりますので、彼の本でも読んでみて下さい。
只今、タマティーは新人賞に思いっきり苦戦しておりまして、現在推敲中の物が本当に「最後の切り札」なんですが、これを提出してしまうと、もう後がないです。
そこでゆきねこさんが今までの人生の中で「この小説は本当に面白いな~」「感動した」という物があれば教えて下さい。
ゆきねこさんの勧める本は、タマティーにとっては実に納得がいくものなので・・・・・。
投稿: タマティー | 2014年11月 5日 (水) 06時42分