プリンセスアカデミー
●モルモン教と文学
イギリス文学とアメリカ文学は全く別個の文学なのだが、それなのに日本ではこれらをごっちゃにして「英米文学」としてしまうのだが、これは完全に間違ったことである。言語は共に英語が使用されているのだが、だからといって同じ物ではないのだ。
イギリスとアメリカ合衆国は共に英語が共通語なのだが、アメリカ合衆国で使用されている英語はイギリスで使用されている英語とは異なる。アメリカ英語という物は本来の英語からすると非常に訛っているのである。しかもモルモン教の発展によって、モルモン教の内部で使用されている言語こそがアメリカ英語の中心を占めるようになってしまった。
モルモン教では若い男性たちに2年間の伝道を義務付けているのだが、教団の命令にアメリカ合衆国全土に、そして世界各国へと派遣されることになる。当然に言語の研究には熱心であり、外国語の研究だけでなく、アメリカ英語を作り出すということをやってしまった。このため普通のアメリカ人たちは大したことないのだが、モルモン教徒となると全く別であり、非常にクリアな物の言い方をしてくることになるのだ。
今回紹介するのはこの本!
シャノン・ヘイル著『プリンセスアカデミー』(小学館)
訳 代田亜香子
シャノン・ヘイルはアメリカ合衆国生まれではあっても、メキシコやイギリスやパラグアイで暮らし、ユタ大学でイギリス文学を学び、モンタナ大学で修士号を取った。現在は結婚して2人の子供がいる。ユタ州のソルトレイクシティに在住。
この本はアメリカ合衆国でニューベリー賞次点を取った。読んでみると解るが、アメリカ人が書いたというのに読み易い。子供の頃に外国暮らしをしたこと、それに大学生の時にイギリス文学を学んだことがいい結果を齎した。英語を話すアメリカ人であっても、イギリス文学を学ばない限り、まともな文学作品を作れないものなのである。
●題名合格、内容は問題だらけ
『プリンセスアカデミー』はなんといっても題名が合格である。作者の「シャノン」は運命学的には「お姫様タイプ」なので、作者本人の性格と合った物ゆえに一気に書き上げてしまったといえる。こういう題名を思いつくということは作家としてのセンスが充分にあると見ていい。
しかし内容は問題だらけである。この小説の内容は、主人公のミリが村の娘たちと一緒にプリンセスアカデミーに行ってお妃教育を受けるのだが、最終的に王子様はミリを選ばず、幼馴染みのブリッタを選んでしまう。題名が『プリンセスアカデミー』なのだが、そういう結末ではダメなのである。
主人公のミリが14歳という設定にも無理がある。14歳では若すぎるのであって、せめて16歳にでもしておけばハッピーエンドになる物が書けたことであろう。ミリが恋愛よりも勉強に熱中してしまうのは、作者本人がそういう人生を送ってきたとはいえ、それを小説に書くのは如何なものかと思う。
ミリは父子家庭の娘である。父子家庭の場合、女性は早くに結婚していくものなのである。母親が欠けているために、運勢がなかなか安定しないのだ。作者本人は父親に愛されて育ったのだろうが、両親が揃っている家庭と父子家庭とではまるで違うということが解っていないのである。
それと小説としては絶対にやってはならない書き方をしているのも問題である。主観と客観がごっちゃになっているので、読みにく箇所が多々あるのだ。日本の出版社では絶対にそういう物を出さないので、俺としてはなんでアメリカ合衆国でこの本が出回ったのか不思議なくらいである。このことは未熟だからでは済まされないのである。
●根本的な誤り
この小説は根本的な誤りを犯している。それは、
「お妃教育はあっても、お妃学校はない」
ということであり、プリセンスアカデミー自体、存在しないものなのである。作者はこのことを理解しているらしく、小説の中で今までプリセンスアカデミーは形式的な物であったと述べ、今回から本格的に作動したとしている。
アイデアの元ネタは西ヨーロッパにある「マナー教室」であろう。西ヨーロッパでは上流階級の子弟たちは社交界にデビューする前にマナーをマナー教室で覚えさせられることになる。それで西ヨーロッパの上流階級の人たちに無作法者というのが存在しないのである。
お妃教育というのは、お妃になることが決まってから施されるものである。日本人なら天皇家がこれをやっているので解るのだが、アメリカ合衆国には君主制がないために、そのことがまるで解っていないのである。君主制を知らなければこの手の架空のお話に付き合えるのだろうが、君主制国家で生まれ育った者からしてみると、
「プリンセスアカデミーって不要なんだよ」
と切り捨てるしかないのだ。
王子様と雖も、将来、国王になる可能性がある以上、自分の好き勝手でお妃を選ぶことはできない。「お妃の条件」というものがあって、それを満たしていないと結婚は難しいのだ。
①美人であり、健康であり、そして賢いこと
②お妃の両親が王族か貴族であること
③健康な子供を産める可能性があること
ミルは3つの条件の内、2つは満たしている。しかし所詮は庶民なのであって、それではお妃にはなれないのである。庶民の上に国王がいるのではなく貴族がいるのであって、貴族の娘だからこそ王子様と結婚することができるのである。
日本では今上天皇陛下が庶民の娘をお妃に迎えてしまったので、それで天皇家は皇統断絶の危機に見舞われてしまった。貴族制度を残しておけば、庶民の娘を貴族に列し、その後、結婚すればなんの問題もなかったのに、戦争に負けてアメリカ合衆国が貴族制度を廃止してしまったために、天皇家は存亡の危機に立たされてしまったのである。
●そして自立は不可能になった
翻訳者は、
「全編を通じて所謂ガールズパワー全開で、女の子たちの底力が伝わってきます」
と肯定的な評価を下しているのだが、ミリの運命は過酷な物であって、彼女がどうやっても自立不能ということになってしまうことになる。ミリは王子様ではなく幼馴染みのペダーを選んだのだが、ペダーではミリを自立させる力を持たないからだ。
王子様は少なくとも自分の好きな女性を探し出す能力を持ち、そして本当に救い出した。だからブリッタは自立していくことができる。しかしペダーにはそんな力がないのであって、ミリがどう待ったとしても自分を自立させてくれることはないのだ。
ミリは父子家庭ゆえに、自分の父親から愛されていないという不満を抱えている。この不満は後に父親の気持ちが解ることによって解消されていくのだが、そうなってしまえば、今度は父親にしがみつくことになってしまう。妻を亡くした父親と、女性の体に変化していく娘が家の中にいれば、どういうことになってしまうか、大体察しがつくというものなのである。
ミリは第二子である以上、父親には反抗しないとおかしいことになってしまう。姉のマーダが父親と仲がいい以上、妹のミリには居場所はないのであって、後は出ていくしかない。第二子次女にはそういう宿命があるのであって、それなのに自宅に戻ってきては話にならないのだ。
読後、俺がつくづく思ったのは、シャノン・ヘイルは他のアメリカ人の作家たちよりも断然に文章が巧いのだが、
「共和国で生まれ育った人間にはどうやったとしても君主制国家のことは理解できない」
ということであった。女性が自立していくためには王子様が必要なのであり、自分だけの力だけで自立していくことはできないものなのである。
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コメント
タマティー様
ごぶさたしております!
三人の育児なんとやってます!最近は、夜中の授乳に起こされ、朝4時前に起きても、なぜか体は元気です。夫に不思議がられます。年はとってるのに独身の頃より元気な気がします。わたしの周りには、元気で明るいママ達が多くて、友人にも感謝の日々です。これから子供が大きくなると、お金がかかる…と言われたりしますが、それはそれで頑張れそうです! またコメントさせていただきます!
投稿: なす | 2015年2月12日 (木) 04時33分
タマティー様、ご無沙汰しております!
大丈夫ですか? 何かあったのでしょうか?
ブログが更新されてないので心配になりコメントさせていただきました(・・;)
投稿: 美素 | 2015年2月12日 (木) 21時38分
タマティーさま
ご無沙汰しております。
タマティーさまにみんみん人形の販売をすすめられた(笑)みんみんです★今年もよろしくお願いします。
地震、こわいですね。
去年春から今まで見たことがなかったような虫が歩いていたり、蛾の幼虫と蛾が大量発生したり。地域は違いますが、お互い気をつけたいですね。
ところで‥タマティーさまにお聞きしたいことがあります。引っ越し、新築を検討しているのですが‥
その年の方位の吉凶がありますよね。気をつけて吉方位に引っ越しするべきでしょうか?神社で配っている冊子の吉凶方位と風水本に載っている吉凶方位が同じなので、気にしています。風水はあまり気にしていないのですが、神社で厄年のご祈祷などはきっちりする方なので気になっております。神社の方位違いのお守りがあれば大丈夫でしょうか?タマティーさまは引っ越しの吉凶方位について、どうお考えになられますか?
執筆、ご苦労さまです
内容が違うところへの書き込み、申し訳ありません。よろしくお願いします
みんみん
投稿: みんみん | 2015年2月12日 (木) 22時22分
美素さん、地震の衝撃波のために、現在、パソコンが故障中でして、それで問題が大量発生してしまいました。
3台あったパソコンが全てやられてしまい、そのために記事の公開頻度が週に1回のペースになってしまいました。
震度は2だったんですが、本当に直下であったために、衝撃波が凄かったんです。
投稿: タマティー | 2015年2月13日 (金) 08時14分
みんみんさん、夫婦で家を購入する時、家の所有者の方の方位だけを気にすればいいです。
だから、基本的に旦那さんの方位です。
もっとちゃんと調べた方がいいです。
別に急ぐ用件ではないので。
投稿: タマティー | 2015年2月13日 (金) 08時15分
タマティーさま
早い返信、ありがとうございます
旦那の方位は気にした方がいいのですね。じっくり探してみますありがとうございます★
ブログ、楽しみにしています★みんみん
投稿: みんみん | 2015年2月14日 (土) 11時20分
こんにちは。
以前は色々ありがとうございました。
お陰様で、下の子がもうそろそろ三才でやっと余裕も持て、楽しく育児家事できております♪
今回の話題で、姉妹のうち、親と仲がいい姉がいたら妹は家を出るべき、とか、自立させてくれる男について書かれていますが、そこの辺り詳しく記事にしていただけないでしょうか。
タマティーさんの常識、といいますか、普通こうだろう!みたいな部分をぜひ教えて頂きたいです。
自立させてくれる男の条件と、大人になった兄弟姉妹と親と家との関係について知りたいです。
投稿: メロン | 2015年2月14日 (土) 17時46分