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偉大なる思想家たちはみんな変だった。

●聖職者たちから知識人たちへ
 
 正月に入ってからポール・ジョンソンの本に嵌ってしまった。事の発端は彼の『ユダヤ人の歴史』という本が、『日本経済新聞』で広告の掲載が拒否されたという事件を知ってからなのであるが、この本を読んでみると、ユダヤ人の歴史に関する物では非常に優れた物で、ユダヤの真相を知られたくない日本のキリスト教徒たちから圧力がかかったと見た。
 
 ポール・ジョンソンはイギリス人で、オックスフォード大学卒である。長年、ジャーナリストをやった後、作家に転職した。専門は現代史なのだが、俺は現代史という物を認めていない。現代の事が歴史として評価されるためには70年以上の歳月が経たなければならないのであって、それでこのポール・ジョンソンを見逃していたのである。
 
 ポール・ジョンソンの本で特に出来がいい物は、
 
『ユダヤ人の歴史』
 
『キリスト教2000年史』
 
『インテレクチュアルズ』
 
の3つであり、これらの本を書くためには相当な蔵書量がないと出来ないのだが、彼は持っているのだろう。現代史の作家として成功したからこそ、蔵書を充実させる事が出来たのである。
 
 古代ローマ帝国に於いてキリスト教が国教になってから、西ヨーロッパでは長らく聖職者たちが歴史を動かしてきた。だからまずはキリスト教を知らねばならず、キリスト教を知るためにはユダヤ教も知らねばならない。そして近代化していくと、「聖職者たちから知識人たちへ」という動きが起こり、それで知識人たちの事も知らねばならないのである。
 
 日本には国教がなかったので、日本の歴史学者たちは常に「政治史は政治史」として捉えてしまう。しかしそれは間違いなのであって、宗教史が解らないと、政治史を論ずる事は出来ないのだ。日本が西ヨーロッパと共通しているのは、日本では廃仏毀釈によって「僧侶たちから知識人たちへ」という動きが起こったのであり、それでキリスト教国ではない日本が先進国入りする事が出来てしまったのである。
 
●誤れる近代の歴史はジャン・ジャック・ルソーに始まる
 
 西ヨーロッパで聖職者から知識人へという動きが起こった以上、聖職者レベルの人たちが知識人に成れば良かったのだが、ところが実際に出て来たのは、聖職者たちよりも遥かに劣る人たちであった。新しいタイプの知識人たちはキリスト教を批判する余りに、聖職者たちが人々を指導してきたという事を忘れ、キリスト教も聖職者たちもいない世界の出現を目指したのである。
 
 当然に知識人たちは碌でもない奴らがなる事になってしまった。
 
 謝れる近代の歴史はジャン・ジャック・ルソーに始まる。ルソーは生後まもなく母親に死なれ、父親も蒸発してしまい、孤児になってしまった。この孤児を引き取ったのがヴァラン夫人であり、彼女はルソーを愛人として使った。その後、ルソーはマリア・テレーズと結婚するが、彼女との間に産んだ子供たちを全て孤児院に出してしまったという人非人である。
 
 ルソーはヴァラン夫人を母親代わりにして、テレーズを乳母として育ったのであり、
「永遠の少年」として生き続けた。ルソーは大人になっても自立していなかったという事が解らない限り、彼が一体何を言っているのか解らない事であろう。ルソーは永遠の少年であるが、それと同時に「狂える天才」であった。確かに文章自体は巧い。しかしその内容は完全におかしい。
 
 ルソーは若い頃から頭がおかしかったらしく、ルソーの初恋の相手であるソフィー・ドゥードトー夫人はルソーの事を、
 
「面白い気違いでした」
 
とはっきりと指摘している。ルソーは女性にだらしなかったので、恐らく梅毒に感染し、それで精神異常を引き起こしたのであろう。梅毒は鼻が削げ落ちたりするのだが、脳を刺激して、常人では考え付かないような事を考え出す事もあるので、それがルソーの異常極まりない思想を生み出していったのである。
 
 ルソーの思想に痺れた者たちは多数出て来るのだが、カール・マルクスもその内の1人であり、貧乏なのに経済の研究をしたのだから、どう研究したとしても、まともな結論は出て来なかった。社会主義経済とはルソーが夢見た自然状態の事であって、そんな事を近代以降にやろうとすれば、国民全員が貧乏になるのは当然であろう。
 
 ロシアの文豪レフ・トルストイもルソーの思想に痺れた者の内の1人である。トルストイはイエスとルソーに憧れたのであって、彼もまた自立していない。『戦争と平和』は自立していない男ピエールが主人公の物語であり、ナポレオンのモスクワ遠征によって占領地が無政府状態になると、逆にそれを喜んでいる始末である。
 
●なぜ知識人たちは間違うのか?
 
 なぜ知識人たちは碌でもないイデオロギーや文学作品を作っていったのであろうか? 歴史の流れが聖職者から知識人へと来ているのだが、嘗て聖職者たちがそうしたように、知識人たちだって自分たちが出来る範囲内で優れた功績を打ち立てていくべきなのに、実際には知識人たちはそれをしなかった。
 
①「宗教心の欠如」
 その最大の理由は「宗教心の欠如」である。西ヨーロッパの知識人たちはその出発点に於いてキリスト教を批判しなければならなかった。だから宗教を批判する余りに宗教心が欠如してしまい、それでおかしく成って行ってしまったのである。人間の理性で解明できる物はごく僅かなのであって、自分の理性でこの世の全てを解明できると思い上がっては成らないのだ。
 
②「理性に対する過剰なる期待」
 知識人たちは理性の力を使って学問を発展させていく事に成るのだが、自然と理性に対して過剰な期待をしてしまう事に成る。人間は理性を有するが、必ずしも理性どおりには動かないという事が解っていないと、人間に対する理解に於いて根本から間違ってしまう事に成るのだ。
 
③「価値ある人生経験の無さ」
 人間は年が老い易いが、学問は成り難い物である。知識人が学問研究に携われば、本来なら経験しなければならない人生経験を経験しない事に成ってしまう。価値ある人生経験がないのだから、そのような知識人が人間や社会や国家を論じたとしても、おかしな結論に辿り着いてしまう事に成る。
 
 ルソーにしても、マルクスにしても、トルストにしても、まともな人生経験などない。ルソーは孤児だし、長らくフリーターのような人生を送ってきた。マルクスは親友のエンゲルスにたかって生き続けて来た。トルストイは農奴制の問題点に気づきながらも、農奴たちを使って資産を爆発的に増やした。
 
 このような人たちは往々にして現実には全く存在しないユートピアを夢想するものだが、そのユートピアに騙されてはならない。そのユートピアは誰がやったとしても実現不可能なのであって、人間として経験すべき事をやっていれば、ユートピアで実現できる物は今現在でも出来てしまうものなのである。
 
●反知性主義
 
 俺がポール・ジョンソンの『インテレクチュアルズ』を読みながら思ったのは、安本あんり著『反知性主義』であった。この『反知性主義』が典型的な針小棒大の本で、アメリカ合衆国は学歴重視の国家なのに、それを敢えて否定し、反知性主義だけを事更に協調した粗悪本なのだが、アメリカ合衆国の真実を追求した物ではないが、アメリカ合衆国の或る一部分を指摘した本ではある。
 
「アメリカ合衆国には国教がなかったために、偉大なる思想家が出て来なかった」
という事は幾ら協調してもしすぎる事はない。イギリスは覇権国家だった時代に、経験論や功利主義を生み出していったが、アメリカ合衆国は覇権国家になってもそういう新しい思想を生み出していない。正確に言えば生み出す事が出来ないのだ。
 
 アメリカ合衆国は未開の地で独立してきたのだが、西ヨーロッパからの移民たちによって国民が形成されたので、独立する以前から学問という物を重んじた。ハーヴァ―ド大学はアメリカ合衆国が独立する以前からあったのであり、大卒のエリートたちこそが独立戦争を戦い、そして独立宣言を出し、アメリカ合衆国憲法を制定していったのである。
 
 アメリカ合衆国の独立はフリーメーソンたちによってなされたのだが、独立後はキリスト教が盛んになり、プロテスタント系の教団では教会に教会学校があったので、国民の向学心というのは非常に強かった。大学は全米各地にできるようになったし、その大学の教育内容も非常に優れた物であった。
 
 しかしアメリカ合衆国にはそういう学歴重視とは正反対に反知性主義と言える物が有る事もまた事実である。反知性主義は決して主流に成る事はなかったが、それでも学歴重視の社会に対して或る一定の批判を与え続けた。国民が知識人たちに「バカ」と言える勇気があればこそ、アメリカ合衆国には共産革命が起こらなかったとも言える。
 
「バカはどんなに学問をしたとしてもバカ」
なのであって、知識人だからといって信用しては成らない。特にルソーの嘘を見破れるか否かは、その知識人の頭の良し悪しを判定するためには重要な物であり、嘘を見破る事が出来なければ、知識人であっても野蛮人であると変わらない。知識人が無暗に信用されてしまう社会の方が危険なのである。
 
●人間の心を持たないイデオロギーの危険性
 
 ルソー主義によってフランス革命は起こった。マルクス主義によってロシア革命は起こった。フランス革命もロシア革命も冷静になって分析すれば、非常にバカげた事であり、自国の国民を数百万単位とか、数千万単位とかで大量虐殺してしまったのは、近代以前にはなかった物なのである。
 
 今後、来たるべき革命は「フェミニズム革命」であって、もしもどこかの国でフェミニズム革命が起これば、共産革命以上の恐ろしい事態が発生する事であろう。今度の革命では女性たちがフェミニズムに発狂して革命を引き起こして来る以上、女性たちには徹底的に用心しなければ成らないのである。
 
 イデオロfギーは人間の作りし物であるが、イデオロギーはそもそも人間の心を持たない。人間の心を持たないからこそ、一度暴走を開始してしまうと、片っ端から人々を殺していくという事をやってしまうのである。イデオロギッシュな人たちは、
 
「自分たちのイデオロギーは正しいのだが、やり方が間違っていた」
 
と言うものだが、こういう事を言っているという事はイデオロギーの危険性に全く気付いていないという事なのだ。
 
 家族制度と私有財産制度を否定するイデオロギーは誰がどうやっても絶対に巧く行かず、必ず大量虐殺を仕掛けて来る。それなのに人間の心を持たない人ほど、邪悪なるイデオロギーに呆気なく洗脳されてしまう。人間は自分が思っている以上に愚かな動物なのであって、だから宗教によって謙虚にさせて行かなければ成らないのだ。
 
 人間は如何なる事でも言えてしまう。知識人となれば普通の人たちを騙すような事を兵器で言って来る。それゆえ、
 
「本を見るな。著者を見よ」
 
という事をすべきであり、著者の人生を判断した上で、その著者の言っている事を理解して行かなければ成らないのだ。
 
 近代以降、国民は学問する事によって自ら賢くなり、「思想戦」を戦い、それに勝利しなければ成らない。思想戦に戦う意思のない者たちは邪悪なるイデオロギーに洗脳された者たちによって殺されていったとしても文句は言えないのだ。近代国家にはイデオロギーが暴走してくる危険性がある以上、思想戦を戦う事によって自らの生命と自由と財産を守って行かなければ成らないのである。
 

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コメント

タマティー様
こんにちは(*^^*)
タマティー様の記事は多種多様で本当に博学なお方で尊敬します。お目にかかれるものなら1度でもいいからお会いしてみたいです!…今回の記事は正直頭のよくない私が苦手とする内容ではありますが(難しく感じてしまい)それでも読むとなるほどなぁ…と何故か納得している私がいます。タマティー様の本が出版されたら絶対に買います!!

またまた迅速なお返事をありがとうございますm(_ _)m
34才で3人目を妊娠、出産して3人ともに酷すぎる悪阻で自分のライフスタイルや身体がいかにきちんとしていなかったかを思い知らされました。出産したばかりで4人目…はもうないなぁ〜と思いましたが(体力の限界、年齢的にも…?)
まだ大丈夫でしょうか(´・ω・`;)?
また1から身体づくりを始めて次は5年もあけられませんよね(笑)

投稿: リカ | 2016年1月30日 (土) 17時09分

リカさん、自分がもう1人欲しいなと思うのなら、産めばいいです。

出産後、赤ちゃんが欲しいって思うのは、それだけいいお産をしたって尚古ですよ。

投稿: タマティー | 2016年1月30日 (土) 17時39分

タマティー様はじめまして。チアと申します。タマティー様には大変お世話になりました。ブログに出会い出産できました。現在二児の母です。お礼が遅くなりました。本当に本当にありがとうございます。こども達が健康に過ごせる秘訣がありましたら教えてください。
いつも楽しみにしています。

投稿: チア | 2016年1月30日 (土) 21時43分

チア さん、出産おめでとうございます!

家の外で遊ばせるように心掛けていれば、子供たちは健康に育ちますよ。

投稿: タマティー | 2016年1月31日 (日) 06時53分

タマティー様おはようございます。

ちょうど教材で欧米の保育の歴史について勉強していて、ルソーはタイムリーな名前だったので生い立ちを知って驚きました。
まさか自分の子供もまともに育てられなかった人が近代の幼児教育の基礎を作っていたなんて(; ̄ェ ̄)ェー
自分が幼児期に大人からの愛情をきちんと貰えなかったから大人を否定するような思想に傾いていったのでしょうか。
興味深い記事ありがとうございます^_^

投稿: 虹ママ | 2016年2月 4日 (木) 09時17分

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