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音読みの謎

●「呉音」「漢音」「唐音」
 音読みとは日本語に於ける漢字の字音の読み方である。日本語には日本独特の発音法があるので、中国人が発音しても、それをそっくりそのまま真似る事ができなかった。どうしても日本風の発音になってしまう。日本人が漢字を大量輸入したのは三回あって、「古墳時代」「奈良時代と平安時代」「鎌倉時代」の3つである。
 
 古墳時代に行われた音読みを「呉音」という。主に三国時代の「呉」から学んだからこそ、こういう言われ方をする。但し、呉だけでなく、その後の「西晋」「東晋」「宋」「斉」「梁」からも受け入れた。大和朝廷にしてみれば、外交交渉をするためにどうしても必要だったからこそ、漢字の大量輸入が起ったのである。
 
 奈良時代と平安時代に行われた音読みを「漢音」という。主に「隋王朝」や「唐王朝」の時の発音なのだから、「隋音」とか「唐音」といえばいい物を、漢王朝の時の発音ではないかと勘違いされてしまう漢音になっている。古代日本人は華北の人たちを「漢」(から)と呼び、華南の人たち「呉」(くれ)と呼んだので、それで漢音になってしまったのだ。
 
 鎌倉時代に行われた音読みを「唐音」という。これは本当に誤解を招く。主に「宋王朝」の時の発音なので、だったら「宋音」にすべきなのである。しかし唐王朝が崩壊する過程で、どうも日本に大量の亡命者たちが来たみたいで、その者たちは唐王朝の時の発音を行なっていたので、それで唐音になってしまった。
 
 例えば「京」という漢字は、呉音では「キョウ」、漢音では「ケイ」、唐音では「キン」であり、「平安京」(ヘイアンキョウ)では呉音を、「京阪」(ケイハン)では漢音を、「北京」(ペキン)では唐音で処理している。同じ漢字を使うのだから、発音を統一すればいい物をなぜだが3つも発音が存在しているのだ。
 
●抵抗したのは誰か?
 古代日本では壬申の乱が起り、これによって律令制度を本格的に確立していく事になる。この時期に漢音を一気に普及するので、この時に呉音を廃棄すべきだったのである。実際に朝廷は平安京遷都の直前に「漢音を持って正しい音読みとする」という勅令を出している。しかし抵抗した者たちが居たからこそ、呉音が生き残ってしまったのである。
 
 じゃ、一体誰が抵抗したのかといえば、まずは「僧侶」たちであり、仏教関係の用語には呉音が大量に残っている。例えば「成仏」(ジョウブツ)は呉音の発音であり、漢音なら「セイブツ」となる。但し「仏」は呉音だと「ブチ」なので、呉音で正確に言えば「ジョウブチ」で、「ジョウブツ」は多少なりとも妥協した結果という事ができる。
 
 第二の抵抗勢力は「医者」たちであって、医療関係にも呉音が大量に残っている。例えば「静脈」(ジョウミャク)は呉音の発音であり、漢音なら「セイバク」となる。「脈」は漢音だと「バク」なので、「心臓がバクバクする」という事で、多少存在している程度である。朝廷は医療には介入できなかったみたいで、医療関係には呉音がしっかりと残ってしまった。
 
 第三の抵抗勢力は「官僚」たち自身であり、法律関係にも呉音が残っている。平安京自体が呉音を用いている以上、官僚たちは天皇から勅令が下っても、そう簡単に漢音に移行する事ができなかった。尤も漢音を普及させる役目を負うのは官僚たちなので、官僚たちが呉音を残してしまえば、確実に残る事になる。
 
 中国は専制君主制を取るので、始皇帝の例を見ても解るように、発音を統一しようとすれば、本当に統一してしまう。それだけ政治権力が圧倒的に強大であるのだ。しかし日本は専制君主制を取らないので、どうしても朝廷の力が弱く、政治権力の及ばない箇所が出て来てしまうのである。
 
●慣用音
 
 呉音や漢音や唐音には或る一定の法則が存在するのだが、厄介なのが「慣用音」であり、慣用音は中国語に基づく事無く、日本人が発音し易いように発音してしまった物だから、訳が解らなく成る。それなのにその発音が使い勝手からいいからこそ、日本人はなんの疑問に感じないのである。
 
 慣用音の代表例が「茶」であろう。茶は慣用音で「チャ」と発音する事になっている。しかし呉音では「タ」、漢音では「ダ」、唐音では「サ」なので、漢字本来の発音とは一切関係ない。一体いつどこで誰が「チャ」と言い始めたのかというと、恐らく平安時代後期に医者たちの業界用語であったろうと推測される。
 
  臨済宗によって抹茶が普及する前、茶は薬であった。漢音で「ダ」と言ってしまうと、何を言っているのか解らないので、それで「チャ」にしたのではないか? 臨済宗は茶を「サ」と唐音で読んでいたので、禅僧たちが「チャ」という言葉を広めていない事はたしかなのである。
 
「茶道」は「チャドウ」か「サドウ」か非常に問題であり、これは茶道の命運を左右しかない問題だと言っていい。最近の流れとしては、「サドウ」から「チャドウ」へという流れになっており、茶人たちまでが「茶道」を「チャドウ」と言い始めている。しかし茶道を「チャドウ」というのはダメなのである。
 
 姓名判断的に「茶道」を「サドウ」と読むとお洒落で華やかという事を意味するが、「チャドウ」だと大胆だけど孤独という事になってしまい、「サドウ」の方が茶道の実態とピタリと一致しているが、「チャドウ」だと全然合っていない。大体、「喫茶店」は「キッサテン」であり、だから人々は行くのである。「喫茶店」が 「キッチャテン」では誰も行かないだろう。
 
 では、なぜ「茶道」が「チャドウ」と言われるようになったのかといえば、それだけ茶道が国民に普及したからであり、普及したからこそ、茶人たちですら日本語として言い易い物にしたいのである。尤も「茶道」が「チャドウ」になってしまうと、お洒落ではなくなるし、華やかな物でもなくなってしまう。
 
●元寇が日本を変えた
 元寇以降、日本は中国から漢字を大量輸入していない。元寇の際、鎌倉幕府は兵力的には圧倒的に不利だったのに、神風が吹く事でモンゴル軍を殲滅する事が出来た。これによって戦後、「神国思想」が生まれて来る。だから中国から漢字をもう大量輸入する事がなくなってしまうのである。
 
 尤も中国で発明された品物は元寇以後も入ってきている。例えば「行灯」「卓袱台」「麻雀」とかである。これらの漢字に共通する事は、当時の中国人たちが使っていたであろう発音に比較的近い発音を日本人がしているという事であり、呉音や漢音や唐音のようの法則性のある物とは根本的な所から違っている。
 
 モンゴル軍の中国侵略で中国文化のレベルが下がり、それと同時に日本は南北朝の動乱を迎えて、幕府が統治能力をなくし、それがために商業が活発になったので、だから日本と中国の間にそんなに差がない事になってしまった。寧ろ江戸時代になると、日本の学問の方が進み、朱子学で停滞しした中国の学問を追い抜いてしまうのである。
 
 近代以降、日本は西洋の文物を大量輸入したので、英語やドイツ語を日本語に翻訳していく作業に追われた。これによって今度は日本が中国に漢字を大量輸出するようになったのである。「哲学」「恋愛」「鉄道」とかいう単語は日本人が作った物であり、これは中国でも通用するレベルにあったからこそ、そのまま使用される事になった。
 
 戦後、学生運動や労働運動が活発になったが、しかし全く巧く行かなかった。失敗した最大の理由はこの手の運動をやった人たちが中国の「簡化字」を輸入したからであると言っていい。例えば「闘争」を「斗争」と書いたりして、できるだけ画数を少なくしようとした。これの一体何が間違いなのかといえば、日本はもう中国から漢字を大量輸入しなくなったのに、時代錯誤的に相変わらず中国から漢字を大量輸入してしまった事なのである。
 
●日本では革命が起っていない
 中国では革命が起ると、前の王朝の文化は全て否定される。全否定されるからこそ、漢字の発音も変わってしまうのである。中国人たちは「中国四千年」と言うが、実際の中国は中華人民共和国から建国してからの日数でしかない。想像以上に浅い国家なのであり、中国人たちの誇大表現に騙されては成らないのだ。
 
 日本に革命があったのか否かは時折問題になるが、天皇制が古代より続いている以上、日本には革命などなかった。確かに明治維新や敗戦によって価値観の変動はあった。しかしそれは革命ではないのであって、もしも革命が発生していたのなら、日本だって漢字の発音の仕方はがらりと変わってしまった筈なのである。
 
 日本には革命が起っていない以上、日本人がすべき事は日本文化の継承と発展であり、その積み重ねこそが大事という事になってくる。だから国語を教える事は日本史を教える事でもある。日本史が解ると、国語の理解度も高まって行く事に成るのだ。音読みはその代表格だと言っていい。
 
 音読みに対して一言言っておくと、
「音読みは飽くまでも日本人同士で取り決めた約束事であり、絶対に正しい物ではない」
という事である。漢字の正しい読み方は中国人たちのやっている物なのであって、その漢字を輸入し、日本人が発音し易いようにしただけに過ぎない。
 
 例えば「未曽有」は「ミゾウウ」と発音しているのだが、「ミウゾウユウ」と発音するのは決して間違っている訳ではない。「有」は呉音では「ユ」であり、漢音では「ユウ」である。だから漢音で発音すれば「ミゾウユウ」の方が正しい。しかし「未曽有」は仏教用語であり、僧侶たちは「有」を「ウ」と読んだからこそ、「未曽有」は「ミゾウウ」と発音しているに過ぎないのだ。
 
※参考文献
円満字二郎著『漢和辞典に訊け!』(筑摩書房』
円満字二郎著『大人のための漢字力養成講座』(ベストセラーズ)
(この円満字二郎は凄い人かも。出版社で漢和辞典の編集をしたので、漢字の問題を実に解り易く説明してくれる)
 
 

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コメント

音読みが三種類の起源があるとは知りませんでした。
漢字は面白いですね。IT時代に必要ないとはいうものの、書道の趣味を持つ方は知的で素敵だなと思っています。子どもに習わせたいですね

主人がうつでしばらく休職することになりました。
早く治って欲しいのですが、医師には「特に奥さまがすることはありません」と、、、。何かできないのでしょうか。
そして、結局なし崩しに居住中のまま売却し出したマンションも、値付けが高かったせいか内覧も1件のみしかなく、しょぼくれてます。

働けないしローン負担もあるので早く売りたいのですが、安く売ると困るひ、引っ越しなど生活に変化があるのも主人の負担になるような気がして、正解は何処にあるのでしょうか😞🌀
愚痴ばかりすみません。

投稿: まあ | 2016年11月 7日 (月) 23時51分

まあさん、鬱への対策は、とにかく「白パン」「白米」「白砂糖」を除去していく事ですよ。
精白化でビタミンやミネラルがなくなると、鬱を発症します。

それと男性ならたまには「肉」が必要で、焼肉食べ放題にでも行くといいです。

何はともあれ、鬱を治す事を最優先しないと。
けど、鬱は焦っても治る物ではないので、その点は配慮が必要です。

投稿: タマティー | 2016年11月 8日 (火) 06時11分

お忙しいところ、ありがとうございます‼
確かに病気を治すのが一番ですね。
三人目がそろそろ欲しかったのですが、「3人は無理かも」と暗い顔で言われてます。37歳でもう産めなくなりそうで内心焦っています

玄米苦手で麦飯だけ取り入れていたのですが、もう一度挑戦します。けちってた牛肉も買います。夫の家系は両親とも脳梗塞ですし、食事の好みに改善が必要ですね

投稿: まあ | 2016年11月 8日 (火) 21時04分

まあさん、両親とも脳梗塞?
年齢的に早くないか。

「酢の物」とか「昆布」とかを食べていないと、脳l梗塞を若くても発症しますからね。

玄米を食べ易くするためには、押麦を入れるのは勿論の事、豆を入れたり、油揚げやエノキや鶏肉など入れて混ぜご飯にするといいです。
玄米だけだと重いし、1回食べると1日持ってしまうので、他に何も食えなくなってしまうんですよ。
料理は妻の工夫次第でなんとでもなるので、できる限りの工夫はしといた方がいいです。

投稿: タマティー | 2016年11月 9日 (水) 05時38分

タマティー様、おはようございます。

ついこの前最後の質問といっておいて、また疑問が浮かんでしまったのでよかったらお答えください(>_<)

主人に鑑定結果を伝えてみると、互いに子沢山の運命というのに喜んでいました。
主人も理想は3人なのでそうなったらいいね、と。

しかし、主人は年齢的なものなのかセックスに積極的ではありません。
仕事柄朝がとても早いのでその分夜も早く、セックスするよりも眠気が勝ってしまうみたいです。

また、セックスしても途中で終わってしまうこともあります…

だからか、3人目を作るということ事態に乗り気ではないように感じるのです。

「欲しいし、できたらもちろん産んで欲しい。それに一生懸命育てる。」

というのですが、それ以前のセックスに対して不安があるみたいです。

「できるかなぁ。」と、ぼそっと言っていました。

そんな感じなので、例え妊娠し出産した後も体力の低下によって子供たちと遊べるのかそれもまた心配です。

これでも3人目、授かれますでしょうか?
そして主人の年齢的な体力は子育てするくらい残っているのでしょうか?

本当の本当に最後の質問にします。
よろしくお願いします。

投稿: ゆうこ | 2016年11月 9日 (水) 09時00分

タマティー様、ご無沙汰致しております。りんごママです。毎日子育てを頑張っている所です。よく、タマティー様の過去記事を読み返しています。そろそろ2人目がほしいなと思う今日この頃です。

アメリカでは、トランプ大統領が誕生しましたね!子供の未来を思うと、少し不安です。トランプ氏は過激な発言や、もともと経営者ということもあってか、損得勘定でものを言っているなという印象を受けます。タマティー様はどうお考えですか?

投稿: りんごママ | 2016年11月 9日 (水) 19時54分

50代で二人とも倒れたそうです。ヾ(.;.;゚Д゚)ノいまは大量に服薬しながら日常生活は送れているようです。

玄米アレンジ教えていただいてありがとうございました。
やつてみます。
昼から鬼の撹乱で高熱が出てしまったのですが、こどもの面倒をみれないので、母親は倒れたら駄目ですね💧。

投稿: まあ | 2016年11月 9日 (水) 21時49分

ゆうこさん、授かります。授からないと拙いです。

旦那さんにはニンニクと肉、ゴボウ、ジャガイモ、里芋を食べさせるべきでしょう。
年齢に応じて食事を変えていかないと、体力は持たないですよ。

投稿: タマティー | 2016年11月10日 (木) 07時45分

りんごママさん、急遽記事にします。

投稿: タマティー | 2016年11月10日 (木) 07時46分

ありがとうございます!

授からないと拙いとはどういう意味でしょうか?

語彙力がなくすみません(>_<)

現在我が家は経済的に決して裕福ではありませんが、やはり子供を産んでしまえばどうにかなるのでしょうか?

根菜がいいのですね!
意識して取り入れます!

投稿: ゆうこ | 2016年11月10日 (木) 13時59分

ゆうこさん、結婚した時期が天中殺のド真ん中なので、本来なら離婚する事になるのですが、名前の相性がいいから、それで持っているんです。

この夫婦の場合、本当に子供がカスガイになるから、子供の数は絶対に多くすべきで、少ないと些細な事で喧嘩し、離婚になってしまいます。

子供の数が3人に成ると、その家族は吸引力を持つようになるので、それで財産が増えて行くようになりますよ。

投稿: タマティー | 2016年11月11日 (金) 04時57分

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